看護師の「もしも」の時に頼れる!個人加入できる賠償責任保険3選(2016/07/28)
公開日:
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最終更新日:2016/08/24
お役立ち
看護師の“万が一”を守ってくれる看護職賠償責任保険。看護師も1人の人間であり、いつでも完璧な看護を提供できるわけではありません。疲れている時には、ヒヤリハットやインシデントを起こし、時にはそれが医療事故へと発展してしまうこともあるでしょう。
近年では、看護師が直接的に訴えるケースが増えており、看護職賠償責任保険の重要性はますます高まっています。自身の身を守るためにも、保険加入を強くお勧めいたします。
目次
1、賠償責任保険とは
賠償責任保険とは、看護師がインシデントや医療事故を起こし、患者・家族からそのことについて訴えられた際に、損害賠償責任を負担してくれる保険のことです。ほぼすべての病院では、医療法人保険などに加入していますが、これだけでは看護師個人の賠償事故がカバーされないケースがあり、なにかしらの事故を起こした場合には、患者・家族から(または病院から)多額の賠償金を請求されることがあります。
通常、看護師は医師の監督下に置かれる立場であるため、病院内での医療事故に対しては、患者・家族は病院または医師に損害賠償を求めるケースが圧倒的に多いものの、看護師が医療事故を起こした場合には、看護師1人に対して損害賠償を求めるケースも増えてきています。
現状では、個人で賠償責任保険に加入する看護師はまだ少ないものの、いわゆる「なにかあった時の保険」として、昨今では個人加入する動きが加速しています。インシデントも医療事故も絶対に起こさないという自身をお持ちであれば、加入する必要は全くありません。
しかしながら、医療においては何が起こるか分からず、そもそも人材不足から看護師は多忙を極めているため、ほとんどの方はヒヤリハットを経験しているものです。
また、近年では看護師が行える医療行為が増えたこともあり、看護師は医師の監督下としてではなく、医師から独立した人材へと立場を改める動きがみられており、一昔前よりも看護師の責任は重くなっています。ゆえに、自己防衛のためにも「なにかあった時の保険」として、個人で加入する人が増えているのです。
2、なぜ賠償責任保険が必要なのか
上述のように、看護師も1人の人間であり、ヒヤリハットを起こしてしまうものです。ヒヤリハットで済めばまだ良いものの、これがインシデント、医療事故へと繋がっていき、万が一、賠償責任を問われた場合には、病院がすべてをサポートしてくれるとは限りません。
個人で損害責任保険に加入すると、以下のようなメリットがありますので、自分の身を守るためにも、また病院がサポートできないケースに備えるためにも、加入する意義は多いにあります。特に、個人の過失が明白となる場合(訪問看護師など)には、損害責任保険への加入は必須と言えます。
賠償金を補償してくれる
加入する保険会社によって保証額は異なりますが、日本看護協会の場合では、「対人賠償」において1事故あたり5000万円を補償してくれます。また、患者・家族の所有物を破損してしまった場合に補償される「対物賠償」や、名誉毀損・秘密漏洩などの賠償費用が補償される「人格権侵害」など、さまざまな賠償責任に対して負担してくれます。
補償内容 | 補償限度額 |
対人賠償 | 5000万円
(保険期間中は1億5000万まで) |
対物賠償 | 50万円 |
初期対応費用 | 250万円 |
うち見舞品購入費用 | 10万円 |
人格権侵害 | 50万円
(保険期間中は100万円まで) |
※日本看護協会の場合
事故発生時に相談に乗ってくれる
次に、何かしらの医療事故を起こした際に、保険会社が相談に乗ってくれ、精神的な負担が減るというメリットもあります。実際に事故が起きた場合、自分は何をすればいいのか、反対に何をしてはいけないのか、分からなくて戸惑ってしまうものです。
一般的には、保険会社は事故発生時の対応だけでなく、事故発生前における業務に関する安全上の不安についてもサポートしていますので、事故発生時に慌てることなく対処することができます。
賠償責任についてサポートしてくれる
患者・家族から訴えられた場合、その損害賠償責任が正当なのか不当なのかをしっかりと調査してくれます。もちろん、病院などの医療施設自体も調査を行いますが、保険会社はより綿密に調査し、判断してくれますので、不当に訴えられた場合には、非常に心強い味方になるでしょう。
年あたりの掛け金が安い
加入する保険会社によって掛け金は異なりますが、おおむね5000円台と費用負担が少ないのが特徴です。日本看護協会に加入していれば、同会の保険の掛け金は2650円。2000円~5000円台の掛け金で、5000万円程度の対人賠償が補償されるのは、非常に大きなメリットと言えるでしょう。
3、補償金が支払われる・支払われないケース
各保険会社の保険は、すべてのケースに対して支払われるわけではなく、該当するケースにのみ支払われます。
対象となる業務 |
1.保険師助産師看護師法の規定に基づき、保健師・助産師・看護師・准看護師が行う業務
(※災害保険などにおける看護業務を含む) (※有資格者が業務上のスキルアップを目的として参加する研修・臨床実習等を含む) 2.助産師・看護師が行う保険教育業務・健康教育業務 3.准看護師が医師又は看護師の指示を受けて行う保健教育業務・健康教育業務 4.1、2、3に対する管理監督業務 5.対象となるすべての業務に対して、報酬の有無は問わない |
保険金が支払われない主なケース |
1.保健師助産師看護師法の規定に違反して行った看護業務に起因する賠償責任
2.故意に起こした事故による賠償責任 3.業務の結果を保証することにより加重された賠償責任 4.被保険者と他人との間に損害賠償に関する特別の約定がある場合において、その約定によって加重された賠償責任 5.海外での看護行為 6.美容を唯一の目的とする医療行為等に関連する業務に起因する賠償責任 7.被保険者と同居する親族に対する賠償責任 8.被保険者の使用人が、被保険者の業務に従事中に被った身体の障害に起因する賠償責任 9.戦争(宣戦の有無を問いません)、変乱、暴動、そうじょう、労働争議に起因する賠償責任 10.地震、噴火、洪水、津波等の天災に起因する賠償責任 11.被保険者が業務を行う施設もしくは設備(業務遂行中に直接使用しているものを除きます)または自動車、航空機、昇降機、車両(原動力がもっぱら人力であるものを除きます)、船舶もしくは動物の所有、使用もしくは管理に起因する賠償責任 12.対物賠償の場合で他人の財物を紛失した場合 など |
※日本看護協会の場合
4、保険適応となる事例
保険適応となるのは、“過失”によるものです。故意に医療事故を起こした場合には、賠償金は一切支払われず、行政処分の対象となります。
対人賠償 | ・ 医師の指示とは誤った薬剤を投与してしまい、患者に身体疾患が発生。患者から賠償金を請求された。
・ 移動介助の際に、患者を転倒させケガを負わせてしまい、患者から賠償金を請求された。 |
対物賠償 | ・ 看護業務中に、うっかり患者のメガネを踏みつけてしまい破損。患者から直接、メガネの賠償金を請求された。 |
人格権侵害 | ・ 患者へ説明中の発言で不適切な用語を使用してしまい、名誉を傷つけられたとして、患者から賠償金を請求された。 |
このように、一般的には「対人賠償」「対物賠償」「人格権侵害」における賠償金を補償してくれます。対物賠償においては、“紛失”時には賠償されませんが、該当しない場合であっても、見舞金としていくらかの補償金が患者・家族に対して支払われますので、故意でなければ、ほぼすべてにおいて補償の対象となります。
また、損害賠償に関する争訟においても、訴訟費用や弁護士報酬、仲裁、和解もしくは調停に要した費用も負担してくれます。それゆえ、損害賠償を請求されるほとんどの事例において、加入者の負担となる費用は発生しません。
5、事故発生から保険適用までの流れ
申し込みをする代理店、利用する保険会社によって少し異なりますが、おおむね、以下のような流れで進んでいきます。
①医療事故の疑いがある | 専門的な知識と経験を持つ看護職が相談に対応 |
②医療過誤と確定 | 事故発生直後から解決に至るまでの全プロセスにおいて、相談に対応、支援 |
③被害者が賠償請求を起こした | さらに、個別の相談事案においては本保険制度の顧問弁護士とも連携し支援 |
④事故審査委員会開催 | 委員は、弁護士、看護の有識者、日本看護協会の代表、保険会社などで構成 |
⑤賠償請求の内容や金額が妥当かをチェック | 被害者の損害の程度や賠償金額を審査 |
⑥賠償金のお支払い | 日本国内で、保健師、助産師、看護師、准看護師が行う業務によって、他人の身体や財物に損害を与えたり、 人格権を侵害したため、法律上負担しなければならない損害賠償責任を補償 |
※日本看護協会の場合
看護師が加入できる保険会社(後述)はどれも、看護賠償責任保険だけでなく、自動車保険や傷害保険など、さまざまな商品を取り扱っており、医療に特化しているわけではありません。それゆえ、「事故審査委員会」が開催され、看護師にどのような責任があるかなどの審査が行われます。
6、看護師が加入できる保険会社
看護師が加入できる保険会社は、主に「東京海上日動」、「損保ジャパン」、「三井住友海上」の3つです。「日本看護協会」の会員の方は、同会の保険に加入することができます。なお、日本看護協会では損保ジャパンの保険を取り扱っています。
それぞれで掛け金や補償金、補償内容などが異なりますので、それぞれをみて、どこの保険会社に加入すべきかを検討してみてください。
対人補償 | 対物補償 | 人格権侵害 | 初期対応費用 | 掛け金(年間) | |
日本看護協会 | 5000万円
(保険期間中は1億5000万円) |
50万円 | 50万円 | 250万円
(うち見舞金は10万円) |
2650円 |
東京海上日動 | 1億円
(保険期間中は3億) |
1億円 | 1億円
(保険期間中は3億円) |
500万円
(うち見舞金は10万円) |
5640円 |
損保ジャパン | 5000万円
(保険期間中は1億5000万円) |
20万円 | 100万円
(保険期間中は500万円) |
300万円
(うち見舞金は3万円) |
5210円 |
三井住友海上 | ― | ― | ― | ― | ― |
※掛け金、保証金、補償内容は変更される可能性があり、また代理店によって異なる場合があります。
三井住友海上に直接確認したところ、掛け金、保証金、補償内容についての詳細は聞けず、代理店によるということでした。また、個人での加入はできず、団体(病院など)での加入が基本とのことでした。
6-1、日本看護協会
日本看護協会は、損保ジャパンの代理店として保険の取り扱いを行っており、加入できる保険の中で掛け金が最も安いのが特徴です。
ただし、これは日本看護協会の会員限定のサービスですので、会員でない看護師の方は加入することができません。
代理店であるため、事故発生時には日本看護協会を介さず、保険会社に直接報告する必要がありますが、日本看護協会から加入すると、同会の看護の有識者から事故発生時の対処や精神的フォローなど、さまざまなサポートが受けられますので、会員の方は同会からの加入が第一選択となるでしょう。
なお、日本看護協会の報告によると、会員の25%が同会から加入しているようです。また、保険加入のために同会に入会する看護師も少なくないようです。
6-2、東京海上日動火災保険株式会社
東京海上日動は、補償金が最も高いのが特徴です。対人賠償では上限が1億円と他の保険と比べて2倍、対物補償ではなんと他を圧倒する1億円もの補償をカバーしています。
看護師という職業上、インシデントや医療事故が懸念されますが、保険の利用で特に多いのが患者・家族の私物を破損させてしまうケースです。
日本看護協会では上限50万円、損保ジャパンでは上限20万円しか支払われないため、1億円というのはかなり大きなメリットと言えるのはないでしょうか。
掛け金は5640円と最も高いものの、その分高額な補償金が設定されていますので、万が一の事態において、補償金がオーバーしてしまうのではないかと心配な方は、東京海上日動の保険を利用するとよいでしょう。
6-3、損害保険ジャパン日本興亜株式会社
損保ジャパンの補償で特筆するものはありませんが、日本看護協会をはじめ、各県の医療機関が取り扱っているため、実績が多く安心感があります。また、取り扱い代理店が多く、加入しやすいというメリットもあります。
医療機関などを通して加入する場合には、対物賠償が20万円しかなく、少し心細い印象はありますが、日本看護協会の会員でない人で、安心して保険会社を利用したいという場合には、損保ジャパンが第一選択となるのではないでしょうか。
まとめ
保険会社によって、また代理店によって、補償内容やサービスが異なるため、日本看護協会に入会している方は「日本看護協会」、高額な補償金を希望される方は「東京海上日動」、安心できる保険会社を利用したいという方は「損保ジャパン」というように、自身の状況や希望に応じて選択するとよいでしょう。
インシデントや医療事故を起こさないのが一番ですが、看護師は人材不足が顕著であるため、時には“ミス”を起こしてしまうのです。実際、看護師のほとんどがヒヤリハットを経験しています。
昨今では、看護師が患者・家族から直接的に訴えられるケースが増えてきていますので、自身の身を守るためにも、この機会に賠償責任保険への加入を検討してみてはいかがでしょうか。
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