コダーイの保育|ハンガリーの作曲者、保育おもちゃと本の紹介(2017/02/14)
音楽を使った保育といえば、リトミックを思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。リトミック研究センター(1によると、リトミックとは『音楽を使って、身体的・感覚的・知覚的に優れた子どもたちの育成』を図るものです。ですが、音楽の効果を発揮できるのはリトミックだけではありません。コダーイ・ゾルターンが考案した教育方法は、「コダーイシステム」「コダーイメソッド」、さらに最近では「コダーイ・アプローチ」などと呼ばれています。名前自体は広く知られているものではありませんが、取り入れている保育園・幼稚園は多くあります。コダーイが考案した保育について学ぶことで、より保育の幅を広げることができるでしょう。
1、コダーイの考案した保育とは
コダーイシステムについて、『自国の母国語で歌うわらべうたを音楽教育の基本に置き、遊びながら歌の音程やリズムを整え、音楽を理解し表現する力を育てる』という説明がされています。(引用:保育士過去問ここだけ丸暗記 2014年 技術評論社発行)では、また、日本コダーイ協会(2によると、コダーイの考え方の根幹は大きく3つに分けられます。
■音楽はすべての人のもの
つまり音楽は一部の特別な人たちに向けられたものではなく、すべての人に向けられたものだ、という考え方です。
■音楽の真髄に近づくもっとも良い手段は、誰もが持っている楽器、喉をつかうこと
コダーイはピアノの伴奏などを特に必要とせず、肉声のみで歌うこと、そして他者の声を聞くことをとても大切にしたのです。
■音楽的母語であるわらべうたや民謡から音楽教育を始めなければならない
これがコダーイシステムの中心となっているともいえます。わらべうたは、母国語を心地よいリズムにのせて楽しむものであり、すべての人が自らの喉を使って生み出すことができます。言い換えると、民族音楽であるわらべうたは母語教育にもなるため、子どもの音楽教育の基礎としてふさわしいとコダーイは考えたのです。コダーイシステムを保育に取り入れようと考えたとき、以上の3点を基盤とする必要があります。
コダーイは、他にハンドサインも活用していました。これは手の動きで「ド」「レ」「ミ」といった音を表現する手法で、イギリスのカウエンが考案したものをコダーイが改良したようです。合唱の基礎練習などでも活用されています。こちらはわらべうたに比べ、すぐ保育に取り入れるのは難しいかもしれませんが、コダーイの考え方をより学ぶためには知っておくと良いでしょう。
2、コダーイ保育を基にしたおもちゃの例
フレーベルが考案した恩物のように、コダーイシステムにも特定のおもちゃがあるかというと、そんなことはありません。けれど、コダーイシステムを基にしたおもちゃはあちこちで考案されています。
ここで紹介するのは、わらべうたかるたです。これはコダーイシステムの中心となるわらべうたを、保育の中でも取り入れやすいかるたにしたものです。
出典:子どもの本とおもちゃ
こちらは版画を村田美菜子さんが、採譜を中井英実さんが行っているもので、実際にこの教材を取り入れて保育を行っている保育園がいくつもあります。わらべうたの魅力を存分に味わうことのできる、良い教材です。
ここには「てるてるぼうず」「おしょうがつ」などの有名なわらべうたから、「れんげつもか」「ずくぼんじょ」などといった耳慣れないわらべうたまで30曲ほどが収録されています。保育者自身が聞いたことのないものもあるかもしれませんが、短く繰り返しが多いフレーズなので、すぐに覚えることができるはずです。ぜひ子どもたちと一緒に、保育者自身もわらべうたを楽しんでください。
2-1、わらべうたを使った遊び
石を打ってリズムをとりながら歌う「いしのなかのかじやさん」、有名な「かごめかごめ」「はないちもんめ」なども年長さんクラスでは取り入れやすいのではないでしょうか。日本わらべうた協会(3のサイトでも様々な遊びが紹介されています。リズムに合わせてボールを付き、歌詞に合わせて足の下にボールをくぐらせる「あんたがたどこさ」、2人で手をつなぎ、歌詞に合わせて体の向きを変える「なべなべそこぬけ」などは、子どものときにやったことがある、という保育者も多いのではないでしょうか。
わらべうたは何度も繰り返して触れることで、より言葉やメロディー、リズムの一体感が味わえます。保育者も一緒に楽しんで歌いましょう。
3、コダーイをより学ぶための保育本
わらべうたを取り入れた保育本はいくつもありますが、その中からいくつかピックアップしてみます。
■いっしょにあそぼうわらべうた
出典: コダーイ芸術教育研究所『いっしょにあそぼう わらべうた』(1998年 発行)
楽譜と歌詞、遊び方が一緒に載っているので、保育の場ですぐに活用しやすいのがポイントです。短いフレーズを繰り返すものがほとんどなので、保育者はもちろん、子どもたちも取り組みやすいでしょう。年齢別のシリーズがあるので、自分の担当クラスに合ったものを選んでください。
■幼稚園・保育園のわらべうたあそび
出典:『幼稚園・保育園のわらべうたあそび』シリーズ(畑玲子さん・知念直美さん・大倉三代子さんの共著)
こちらは『春・夏』バージョン、『秋・冬』バージョンとわらべうたが季節ごとに収録されています。こちらも楽譜と歌詞、遊び方が一緒に載っているので、すぐに取り入れることができるはずです。全部で30曲が収録されているので、週に1〜2度、1曲ずつ取り入れていくのも良いですね。ただ、1度取り入れておしまいにするのではなく、何度も行うことで言葉・メロディー・リズムの一体感が得られていくことを忘れないでください。
また、教育方法そのものをより学びたいという場合は、以下を読んでみてください。
■コダーイ・システムとは何か ハンガリー音楽教育の理論と実践
出典:コダーイ・システムとは何か ハンガリー音楽教育の理論と実践(1975年 全音楽譜出版社発行)
少し読みにくいかもしれませんが、コダーイの考え方をよく知ることができる1冊です。こちらを読んでおくと、より効果的にコダーイメソッドを実践できるでしょう。
まとめ
コダーイシステムの特徴は、日本の伝統的なわらべうたを用いた保育です。「わらべうたを保育に取り入れる」というとハードルが高そうに聞こえますが、おもちゃや遊びを通すことで取り入れやすくなるはずです。わらべうたはその国固有の言葉とメロディーが一体になった音楽です。音楽感性の基礎を培う大事な幼児期なので、年齢に合わせた遊びの中で、様々なわらべうたに触れさせてあげましょう。保育者自身も日本語の美しさなど、わらべうたの魅力に改めて気づくことができるかもしれません。
参考文献
(1) リトミック研究センター
(2) 日本コダーイ協会
(3) 日本わらべうた協会
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