シュタイナー教育|東京の保育園に取り入れて児童の個性を伸ばそう(2017/02/13)
保育士として働いていると、様々な保育方法や保育観・理念に出会います。今回は最近よく聞くようになった、シュタイナー教育について紹介したいと思います。シュタイナー教育の発祥から理念、現在の日本の保育園におけるシュタイナー教育の実践や、働く上でのメリットとデメリットも紹介します。
目次
1、シュタイナー教育の定義と保育への取り入れ方
ルドルフ・シュタイナーが唱えた総合芸術としての教育方法であり、シュタイナー教育の提唱者は、オーストリア出身の思想家、ルドルフ・シュタイナー(1861-1925)です。彼が水頭症の少年の家庭教師を務めた経験や独自の思想や人間洞察から、学校で通常行われている、科目ごとの知識を詰め込み、知性を重んじる教育は、必要な教育の一部分でしかないと考えました。そこで彼は知識だけでなく、感情や意思に働きかける、総合芸術としての教育を構想したのです。
1-1、シュタイナーが構想した教育思想について
シュタイナーの教育思想では、人間の魂から身体までを次の4層に分けています。
・意識の座・・・自我
・感情と印象の座・・・アストラル体 ・生命の座・・・エーテル体 ・物質から成る・・・肉体 |
この4層のうち、生まれた時には肉体のみ有しており、他の3層はそれぞれ、7歳でエーテル体(生命)、14歳でアストラル体(感情と印象)、21歳で自我が自立されると言われています。
その年齢の発達に相応しい教育課題を達成していくことが、シュタイナー教育の中核となるものなのです。
1-2、具体的な保育実践内容について
■早期の知的教育の否定
まず、肉体を作ることを重視する時期なので、生活リズムを安定させたり、美しいものを見て美しい心を育てたり、美味しいものを食べて美味しいと感じる味覚を育てたり、周囲の大人から自然と学んで育つ事を大切にします。
■テレビ・ゲームは非推奨
幼い子どもには刺激が強すぎるので、厳格なシュタイナー教育ではデジタルメディアは禁止されています。できるだけ静かで落ち着いた環境で、室内の色合いも安心できる淡いピンク色が基調となっています。
■芸術活動を通して学ぶ
幼いうちは特に、すべての活動に詩を唱えたり、歌を歌ったり、踊りを踊ったりすることが取り入れられています。また、小学生になっても教科書は使わず、イメージを膨らませながら色あざやかにノートをとったりします。
■自然素材のものにこだわる
玩具はプラスチック素材のものや派手なキャラクターものは設定せず、木製のものやシルク、綿や羊毛で作られた玩具や人形を設定します。また、人形は口が描かれてないものを選びます。これは、口があると感情がすでに表現されてしまっているため、子どもの想像力を育てることができないとされているためです。
また、食事も有機栽培の野菜や、無添加のものを使用するなどのこだわりがあります。
こちらのサイトに自然素材の玩具などが多く掲載されていますので参考にしてください。
参考元:Pinterest
2、今なお世界に広がり続けているシュタイナー教育
シュタイナー教育の広がり方の特徴としては、まるっきり固定された教育スタイルを移植するのではなく、その国や文化に柔軟に適応させながら根ざしていくスタイルというのがあります。変化の大きい社会情勢にも呼応しながら、確実に広がりを見せているのです。
2-1、日本におけるシュタイナー教育の広まり
日本でのシュタイナー教育の受容はアジア圏で最も早く、1980年代でした。東京都新宿区に、東京シュタイナーシューレが日本初のシュタイナー校として開校しました。初めはフリースクールとして、教育の多様性を訴える中、自治体などの協力もあり学校法人を取得し、少しずつ日本でもシュタイナー教育が認知されるようになってきたのです。学校法人として正式に認められている学校は、日本にはまだ2校しかありません。
2-2、東京の保育業界におけるシュタイナー教育
学校としてはまだまだ数に少ないシュタイナー教育実践校ですが、保育園、幼稚園は首都圏を中心に数多く設置されています。しかし、園によってどのようなシュタイナー教育を行っているかはまちまちです。実際にシュタイナー教育について学び、現地の教員資格を持つ職員がおり、厳格にシュタイナー教育を行っているところでは、食事も菜食主義で遊びもキャラクターものなんて一つもなかったり、テレビやゲームも禁止なので、もちろん家庭にもそれを求めることになります。保育の一部にシュタイナー教育を取り入れている場合は、芸術活動に重きを置いていたり、設定している玩具にこだわっていることが多いようです。一言にシュタイナー教育といっても、日本ではシュタイナー教育をバランスよく取り入れているケースが多いようです。
2-3、シュタイナー教育を実践する上で考えるべきこと
自分自身がシュタイナー教育に深く興味を持ち、実践したいと強く願うのであれば、挑戦してみることに価値があると思います。しかし、シュタイナー教育は日本中にある保育園・幼稚園とは異なる点やこだわっている点がとても多いです。そのため、保育士自身も強いこだわりがないと、シュタイナー教育を実践するのはとてもストレスになってしまいます。自分自身の保育観を見つめ直してみましょう。もしあなたが、早期の知的教育に疑問を持っていたり、できるだけ天然素材のものに触れさせてあげたい!と思っている場合はシュタイナー教育に向いていると言えます。天然素材のものは高価なので、普通の保育園や幼稚園ではそこまでたくさん揃えられないのが現状ですが、シュタイナー教育実践園でしたら、そういったことに重きを置いているので楽しんで玩具を選ぶことができるでしょう。
一口にシュタイナー教育を実践しています!と言っても、内容や方針などは様々なので、まずは見学させてもらうなどして、その様子をよく知るようにしましょう。
また、転職せずとも、日々の保育に出来る範囲でシュタイナー教育を取り入れることはできます。そういったことから始めてみて、自分に合っているかどうか見極めることが良いですね。
■ 東京におけるシュタイナー教育実践園
シュタイナーこども園 おひさまの庭(東京都八王子)
シュタイナーこども園(東京都広尾・高輪)
まとめ
世界中で「もう一つの教育」として注目されるシュタイナー教育。日本ではまだまだ実践例は少ないのですが、自由にのびのびと子どもを育てるという思想は、いずれもっと日本でも広まっていくでしょう。シュタイナー教育に限らず、「新しいから」「なんとなく良さそうだから」ではなく、自分自身がどんな保育をしていきたいかをいつも考え、自信を持って子どもたちに向き合っていけるような保育士でありましょう。
参考文献
シュタイナー教育における「再受肉」論 : 二つの「個性」概念に着目して(河野桃子)
一般社団法人 日本シュタイナー幼児教育協会
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