避難訓練のねらい|保育園における避難訓練の「おかしも」の話(2017/03/13)
保育園、小学校、中学校と、保育士でなくても誰もが必ず経験している避難訓練ですが、改めて避難訓練について学ぶこと機会ってあまりないですよね。そこで避難訓練のねらいや、取り組む上で留意したい点などについてまとめてみました。
目次
1、避難訓練とはそもそも何のために行うのか
避難訓練とは、万が一災害や事件などが起きた際に、安全に逃げるための訓練のことを言います。消防法では、デパートやある一定の規模の企業などに、年2回の避難訓練の実施を義務付けていますが、保育園では、児童福祉法で月に一度以上の実施と定められています。また、保育園で行われるもので、唯一「訓練」という言葉が使われています。いざという時のために安全に逃げる術を、保育士はしっかりと子どもに教えて訓練しなければならないのです。
2、避難訓練のねらいについて考えよう
ねらいは大きく分けて三つあります。
一つ目は、子どもたちに向けたもので、災害や事件が発生した際に、安全な場所に逃げられるよう、保育士の指示に正しく従えるように訓練することです。地震が起きたら「机の下に隠れる」「先生のそばに集まる」火事が起きたら「ハンカチで口と鼻を隠す」などとすぐに答えられるようにしたいですね。
二つ目は、保育士に向けたものです。いざという時に、子どもたちを守る責任が保育士にはあります。動揺せずに正しい指示を出せるように、自分自身もしっかりと訓練をしておかなければなりません。子どもたち以上に、保育士自身の訓練が重要だと言えるでしょう。
三つ目は、園長などの責任者に向けたものです。実際の避難でも先頭に立ち、全員が安全に避難できたか素早く確認したり、必要な連絡や通報をしたり、保護者の連絡先などをまとめた必要書類を持ち出す訓練をします。また、施設内の安全管理はどうなのか、避難経路はこれで良いのか、各クラスの避難状況はどうなのかなど、客観的に見る必要があります。
ただ単純に、子どもたちがお喋りをしないで逃げられれば良いというわけではないのが理解できたかと思います。
2-1、避難訓練の「おかしも」
標語のように覚えてしまっている人も多いでしょうが、一度確認してみましょう。
お・・・押さない
か・・・駈けない し・・・喋らない も・・・戻らない |
避難の際に最も大切なことが以上の4点です。子どもたちにも覚えやすいですよね。避難訓練の振り返りの際に、子どもたちと一緒に確認すると良いでしょう。避難訓練のことをわかりやすく描いた紙芝居などもあるので、そういったものを活用するのも良いでしょう。
3、保育士が絶対に確認しなければならない避難訓練のポイント
子どもの命を守るのが保育士の役目です。避難訓練の前にはそれぞれの役割について確認しておきましょう。
■子どもの所在を確認する
子どもを集めたらすぐに名簿を持ち、きちんと顔を見ながら全員いるか確認します。いつどこで避難を要する事態が発生するかわかりません。何かあった時にすぐに子どもを集められるようにしましょう。日頃から「廊下には出ない」「トイレに行く時は先生に言う」などルールを作っておくと良いでしょう。
■園庭に避難する際、最初に出る人と最後に出る人を決めておく
最初の保育士は、子どもたちに集まる場所をわかりやすく伝え、最後の保育士はトイレや廊下、各保育室に子どもが残っていないかチェックします。
■他のクラスを助ける
乳児クラスは素早く避難が出来ません。抱っこで運んだり、ベビーカーに乗せなくてはなりませんので、自分のクラスの安全が確認でき、なおかつ手が空いたら助けに行きましょう。
4、いろいろな想定をした避難訓練の実施
一口に避難訓練と言っても、何から避難するのかで内容が大きく変わります。地震や火事などが真っ先に思いつきますが、他にも不審者が建物内に侵入してきた際の訓練や、近年では竜巻の被害も各地で出ていることから、竜巻対応の訓練も行う場合があります。それぞれの避難訓練に関して細かく確認していきたいと思います。
■地震想定の避難訓練
地震が発生したら、まず真っ先に机の下に隠れたり、落下物のない部屋の中央に集まります。子どもたちはお喋りをせず、揺れが収まり、次の指示が出るまで待機です。保育士は避難経路確保のために、窓やドアを開け、電気やエアコンなどを切ります。もちろん調乳室などで火を使っている場合は火を止めガスの元栓を締める必要があります。
■火災想定の避難訓練
火災が起きた場合は、放送や非常ベルで知らされることが多いでしょう。慌てて外や廊下に飛び出すのではなく、落ち着いて出火元がどこなのか聞きましょう。知らずに出火元に近づいてしまう場合があります。出火元の場所によって避難経路が変わってきますので、とても重要です。避難の際はハンカチや手で口と鼻を覆い、体勢を低くし、煙を吸い込まないようにしましょう。保育士は、火が広がらないように窓は閉め、電気やエアコンを切ります。
■不審者対応の避難訓練
不審人物が園の周辺や、建物の中に入ってきてしまった場合の避難ですが、不審者を刺激しないように逃げる必要があるため、とても難しいです。多くの園では合言葉が決まっており、放送で流すことで不審者の侵入を知らせます。不審者の所在地も合言葉に含めると良いですよね。筆者の園では、不審者が正面玄関から侵入した場合は「正面玄関からさくら組へ行きましょう」という合言葉でした。さくら組というのは架空のクラス名です。逃げる場所は、鍵がかかり、カーテンなどで中が見えなくなる部屋が望ましいです。侵入者に子どもが見つからないようにするために、子どもたちにもおしゃべりは絶対にしてはいけないことを真剣に伝え、赤ちゃんには不安になって泣いてしまわないよう、いつも通りに優しく振る舞ったり、避難訓練自体に慣れさせるようにしましょう。保育士は何よりも落ち着いて、携帯電話を持って避難し、警察に通報します。園長は不審者の対応をしなければならないので、通報できていない場合があります。通報が重なってしまっても非常事態なので気にしなくて良いです。また、たとえ鍵がかかっていても重たい棚などでドアをふさぐなど、子どもたちを絶対に守れるようにします。
■竜巻を想定した訓練
季節によって、日本でも竜巻の被害が出ることがあります。竜巻の警報が出たら、第一に窓から離れましょう。廊下などの壁にぴったりと体を付けて座り込み、竜巻が過ぎ去るのを待ちます。保育士は、毛布など体を覆うものを子どもたちにかぶせます。ガラス片などが飛んでくる可能性があるからです。
以上が筆者の経験したことのある避難訓練です。どんな場合でも落ち着いて行動することが最重要です。日頃から放送にしっかりと耳を傾ける習慣をつけ、避難訓練の前後にどうやったら良いかを子どもたちに話しておくと良いでしょう。また、毎月同じような訓練を行うのではなく、消火器での消火のデモンストレーションを行ったり、告知なしで行ったり、午睡中の避難訓練や、夕方の延長保育の避難訓練など、どんな状況でも対応できるような避難訓練をすることが必要です。
まとめ
避難訓練は子どもたちのために実施していると思いがちですが、実は子どもを守る保育士自身のためでもあるのです。保育士自身が真剣に取り組まないと、子どもたちも付いてきてはくれません。訓練だから~と気を抜かず、もしもの時であると思いながら、月に一度の避難訓練に取り組んでください。