進化する学童保育|新しい働き方と専門資格、公立と民間の違い(2017/03/02)
2015年4月から「子ども・子育て支援新制度」が実施されています。幼稚園・保育園と比較すると脚光を浴びる事が少なかった学童保育ですが、この制度によりこれまで無法地帯であったものが大きく変わろうとしている事をご存じでしょうか。今回はこの制度の内容をご紹介しつつ、学童保育での働き方、仕事内容、公立と民間の違い等を詳しく掘り下げていきたいと思います。
目次
1、学童保育とは
学童保育とは学童クラブ、学童保育所、放課後児童クラブ等、設置する団体や自治体によって名称が異なります。共通しているのは対象が小学生であるという事。主に放課後や夏休み等の長期休暇において保護者が仕事をしている等の理由から保護者が帰宅するまでの間、指導員が保育を行う施設を指します。
1-1、学童保育が必要な理由
学童保育の利用者数は調査を開始した1998年から現在まで年々増加しており、2015年には初めて100万人を突破しています。2016年も引き続き増加傾向にあります。全国学童保育連絡協議会・資料(引用元:全国学童保育連絡協議会)を見てもお判りの通り、保育園ほど問題視はされてはいないものの、待機児童数も把握できているだけで1万5839人いる事わかりました。
ただし、正確に把握しきれていない事から、実際にはもっと多いと言えるでしょう。学童保育利用者数の増加や待機児童の増加の背景にあるのが「女性の社会進出」や「共働き家庭の増加」、「核家族化」。自宅に一人で留守番をさせると何かと不安がつきものですので、学童保育で安全に過ごしてほしいという保護者の希望から、今後も増加の一途をたどる事が予想されています。
1-2、学童保育の対象年齢は
2015年4月より児童福祉法が改定され、それまでの「小学校に就学しているおおむね10歳未満の児童であって、保護者が就労等によって昼間家庭にいないもの」から、「小学校に就学しているものであって、その保護者が労働等によって昼間家庭にいないもの」と変更になりました。
これまでも4年生以上を受け入れていた民間の学童保育はありましたが、自治体の運営している学童保育の中にはこれまでの「おおむね10歳未満」という法律があった事と、財政上の理由、低学年児童を優先的に入所させる等の理由から、4年生以上の受け入れを断っていた自治体も存在していました。しかし、法律が改定された事で、4年生以上であっても学童保育利用を希望していれば、積極的に利用する事が出来るよう、国の方でも積極的に動き始めています。
2、学童保育で働く上で必要な資格は
学童保育では「小学校教員免許」「幼稚園教諭」「保育士」の資格を持つ指導員が求められていますが、必須資格ではないため、実際の学童保育には「無資格」の指導員も多く存在していました。
しかし2015年4月の「子ども・子育て支援新制度」により、指導員を専門職とする「放課後児童支援員」という新しい資格が作られました。この資格を取得するには高卒以上で現場経験が2年以上ある、保育士資格、小学校教員、社会福祉士資格を持っている人等が「放課後児童支援員」の研修を受講する必要があります。これまで特別な資格が必要ではなかった学童保育ですが、今後はより一層学童保育の拡充や質の向上を図るため、一つの学童保育に2人以上の「放課後児童支援員」を配置する事が義務づけられました。
2-1、学童保育の運営、自治体と民間の違い
一言で学童保育と言っても「自治体が運営しているか」「民間の企業等が運営しているか」によってその内容は異なるようです。
実際に働く上でも就業時間等が異なりますので、二つの違いを比較してみましょう。
■自治体が運営する学童保育
自治体の学童保育を利用するには保護者が働いている事が条件の一つにあげられます。預かり時間は下校後から18時までがほとんどです。料金は自治体によって異なりますが、おやつ代込みで一か月約4000円~7000円程度です。
小学校や児童館に併設されているところが多いので、放課後に校庭等広いところで思い切り遊ぶ事が出来ます。デメリットとして預かり時間が短い事があげられますが、民間と比較すると利用料金が安いので、自治体運営の学童保育に預ける事を希望する人は多いです。
■民間の学童保育
親の就労の有無は関係なく、民間の学童保育であればほとんどの施設が20時まで預かり可能。施設によっては22時までのところや、お泊りまで可能なところもあります。
早朝の保育や夕食の提供を行ってくれるところもあるので、看護師等、勤務時間が不規則な保護者に人気です。ただし、デメリットとして利用料金が高い事が問題となっています。施設によって異なりますが、入会金は3万円、利用料金も一か月5万以上かかるところも存在しているようです。
3、学童保育の仕事内容と給料について
学童保育という仕事は実際に働いてみなくてはイメージしづらいかも知れません。基本的には子どもが下校後から保育がスタートしますが、子どもが学校へ行っている間に行事の準備等を行う事が多いです。具体的な仕事内容と気になるお給料についてご紹介したいと思います。
3-1、仕事内容
仕事内容は保育士とさほど変わりありませんが、保育園のように手取り足取りお世話をするわけではなく、基本的には下校してから保護者がお迎えに来るまで、安全に楽しく過ごすことが出来るよう見守るスタイルです。その学童保育にもよりますが、子どもと一緒に遊んだり、宿題を見てあげたりする事もあります。子ども同士のケンカの仲裁や、悩み事などの相談をうける事もありますし、行事の時等には大きな声でリーダーシップをとる事が必要な場合もあります。
このような理由から、学童保育の指導員はその状況に応じて、先生として全体をまとめたり、一緒に遊んでくれるお兄さん・お姉さん、親身になって相談に乗ってくれる親のような存在にならなくてはいけないという事が言えるのではないでしょうか。
3-2、雇用体制と給料
多くの学童保育指導員は非正規職員です。退職金や社会保険もなく、学童保育で働く半数以上は年収150万円以下となっています。勤続年数が増えても賃金が上がらないという問題もある事から、安心して働く事が出来ず、3年ほどで転職してしまう指導員が多いという課題を抱えています。現在では少しずつ学童保育の重要性が認められ、法が整備されはじめているところですが、一刻も早い指導員の待遇改善が求められています。
4、「預かる」だけじゃない、進化する学童保育
最近では学童保育の内容も進化を続けています。従来の学童保育では子どもを預かるという事がメインでしたが、民間の学童保育では「預かる」プラスαのサービスを追加しているところが多くなっているようです。具体的には習い事を学童保育と一体化したようなサービスです。
例をあげますと、英会話やスイミングスクール、音楽教育等があり、運営する団体によってその種類も項目も様々です。習い事に通わせたいけど、仕事があって送迎は出来ない、学童保育にも預けたい。そんな保護者の願いを叶えるべく、「預けながら習わせる事が出来る学童保育」は仕事をしている保護者にとっては特に魅力的なサービスと言えるでしょう。
まとめ
学童保育の拡充や質の向上を図るため、政府が学童保育の法的整備に着手し始めたのはほんの2年前です。待機児童問題や、指導員の雇用体制等、まだまだ今後の課題は山積みです。新しい資格を設置した事で指導員の専門性やスキルが向上し、保護者がより安心して預けられ、子ども達が放課後を有意義に過ごせる環境が一刻も早く整ってくれる事を切に願います。
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