縦割り保育|意味とねらい、縦割り保育で楽しめる遊びやゲーム(2017/04/28)
最近よく聞く縦割り保育ですが、なぜ行われているのか、どんなねらいがあるのかご存じでしょうか。また、縦割り保育を生かした遊びやゲームもご紹介していきたいと思いますので参考にしてみてください。
目次
1、縦割り保育とは
通常、保育園や幼稚園は同じ年齢の子どもを一つのクラスにして、クラスごとに様々な活動をしつつ一日を過ごします。これに対し、異なる年齢同士ペアを組ませて一緒に活動するようにしている保育方法が縦割り保育となります。
1-1、縦割り保育の定義
異年齢の子ども達との交流を縦割り保育と呼ぶのであれば、自由遊びの時間など、ホールや園庭で異年齢の子ども達を遊ばせているという場合も縦割り保育と呼べるのでしょうか。
答えはノーです。こちらの資料の2ページ目にも記載してある通り、異年齢の子どもが関わる場を提供しただけでは縦割り保育は成立しないと言われています。1)また、縦割り保育の類義語として「異年齢保育」、「異年齢児保育」、「混合保育」がありますが、「異年齢保育」は異年齢で行う保育全般をさし、「縦割り保育」は教育的効果を期待して積極的に異年齢保育を取り入れている保育、一方「混合保育」は子どもの人数や保育士の人数の問題から、やむを得ず異年齢で保育しているといった保育形態をさしています。
1-2、少子化の現代における縦割り保育の役割
出典元:出生数及び合計特殊出生率の推移(国土交通白書|2013)
こちらのグラフを見ると、第2次ベビーブームの後、出生数はゆるやかに下がり続けている事がわかります。兄弟がいない一人っ子も増えていたり、近所でも子どもが少なかったりする事から、家庭での異年齢交流の機会はひと昔前と比較すると圧倒的に減少しているように感じます。しかし、ご存じの通り保育園では赤ちゃんから年長児までがいますので、少子化の現在においてもなお、異年齢交流の機会を提供できる貴重な存在なのです。また、縦割り保育という形で積極的に異年齢交流を取り入れる事で大きな効果が期待できます。
2、縦割り保育にはどんな意味がある?そのねらいは?
国立教育政策研究所生徒指導研究センター資料の3ページにも記載してある通り2)、「人と関わる事の楽しさ」はこれまでは家庭の中での兄弟同士の交流や近隣の子ども達との交流によって育まれてきました。しかし先述した通り少子化の影響に加え、親戚付き合い、近所付き合いの希薄化等の影響から、異年齢交流は少なくなり、遊びを通じて自然に身に付くはずの社会性を身に着ける事は困難な状況にあります。年上・年下といった異年齢での交流の場を設け、人と関わる事の楽しさ、素晴らしさを知る事が縦割り保育を行う理由であるように思います。それでは、縦割り保育が年長児、年少児それぞれに与える影響についてそれぞれ見てみましょう。
2-1、年長児に与える影響
自分の出来る事を年下の子どもに教えたり、危険から年下の子どもを守ったりする事で、自尊心や満足感、社会性を高める事が出来ると言われています。それに加え、自分がわかっている事をわかりやすく年下の子どもに言葉で伝えなくてはいけないため、知性も発達しやすいと言えます。また保護者や保育士から「しっかりお世話をしている事」を誉められる事で自分の自信につながりやすいでしょう。
2-2、年少児に与える影響
年少児においては年上の子どもの遊び方は刺激的なものでしょう。いつもよりもレベルアップした遊びは子どもの成長にとっても大きなプラスに働きます。年上の子どもは年少児にとってあこがれの存在になりやすく、あれこれとお世話をしてくれる事に感謝をするようになります。また、自分が成長し年長児となった際も、過去の経験から「年下の子どもには優しくする」という意識が根付いていますので、自然の流れで年下の子どもに優しく出来る事でしょう。
3、縦割り保育のデメリット
縦割り保育にはデメリットも存在しています。まず年長児と年少児では行動ペースが異なります。もたもたしている年少児に年長児がイライラしてしまい、厳しい対応をしてしまう事も当然ある事でしょう。これでは縦割り保育で得られるはずの「年上の子どもへの憧れ」は育まれず、嫌な印象だけが残ってしまいます。こうしたことが原因で、年長児の発達保障という問題も取り上げられているようです。このため、縦割り保育を積極的に行っている園でも、同年齢保育と並行しつつ実施しているところが多くあります。
3-1、縦割り保育を行う上で保育者が気を付ける事
縦割り保育を行う上で気を付けたいポイントは保育士が年長児に過度な期待をしすぎない事です。年少児のお世話を押し付けられていると感じてしまうと双方にとって縦割り保育は苦痛な時間になってしまう可能性も潜んでいます。また、困った事があったら保育士に助けを求めるようにと伝えて、年長児の負担を軽くしてあげましょう。
年少児への伝え方がわからない子どもも多いので、具体的にどのような言葉で伝えたらいいか保育士が見本を見せてあげると良いでしょう。
4、縦割り保育で楽しめる遊び
縦割り保育での遊びは誰かと競い合うものよりも、ほのぼのと触れ合うものの方が年少児も楽しく参加でき、年長児もストレスなく遊ぶ事が出来るように思います。そこで縦割り保育でも楽しめる、おすすめの遊びを二つご紹介しますので参考にしてみてください。
4-1、縦割り保育にも大活躍の伝承遊び
子ども達から子ども達へ伝承され続けてきた遊びは、かつて異年齢での遊びが当たり前であった事もあり、縦割り保育でも抵抗なく取り入れる事が出来ます。たまにはこういった昔ながらの遊びを取り入れてみるのも良いかも知れませんね。
ここでは「あぶくたった」をご紹介したいと思います。「あぶくたった」は鬼を一人決め、歌やセリフでやりとりする民謡です。年上の子が年下の子をリードしやすく、かつ年下の子もついていきやすいので良好な関係が築けるでしょう。
出典元: 絵本ナビ(さいとうしのぶ|ひさかたチャイルド)
4-2、猛獣狩りに行こうよ
簡単に説明すると、リーダーを一人決め、リーダーが言うセリフを他の子どもが復唱します。セリフは以下の通りです。
「猛獣狩りに行こうよ」→「猛獣狩りに行こうよ」
「猛獣なんて怖くない」→「猛獣なんて怖くない」 「槍だって持ってるし」→「槍だって持ってるし」 「鉄砲だって持ってるもん」→「鉄砲だって持ってるもん」 「あっ!」→「あっ!」 「あっ!」→「あっ!」 「(動物の名前を言う)」→動物の名前の文字数に合わせた人数で集まってその場に座ります。 例えば、リーダーが「コアラ」と言えば、3人一組、「ライオン」と言えば4人一組となって座ります。 |
5、縦割り保育で楽しめるゲーム
縦割り保育で積極的に子ども達の交流を促したいのであれば、「色鬼」はいかがでしょうか。一般的な色鬼のルールは以下の通りです。
①鬼を一人決める
②鬼が色の名前を言う ③近くにあるものの中から鬼の言った色を探しだし、それに触る ④色を見つけられなかった場合や色を触るまでに鬼にタッチされてしまった場合は鬼になる |
これを年少児と年長児2人一組して、手をつないでゲームに参加してもらいます。
鬼から逃げる際にはどこに色があるか、協力する事が出来ますし、鬼になった場合、どんな色が良いか相談する機会が出来ます。ゲームを通して連帯感が生まれやすく自然と仲良くなる事が出来るでしょう。
まとめ
縦割り保育は子どもにとってメリットはたくさんあるのですが、取り入れ方や保育士の過度な期待や押し付けがあると、逆効果になってしまう恐れがあります。遊びやゲームで無理なく取り入れ、最初は少しずつ、慣れてきたら徐々に交流の時間を長くする等の工夫が必要かも知れませんね。
参考文献
1)異年齢保育の教育的意義と保育者の援助に関する研究(管田 貴子|2008/10)
2)出生数及び合計特殊出生率の推移(国立教育政策研究所生徒指導研究センター|2011/06)
3)「子どもの社会性が育つ、異年齢の交流活動」(国立教育政策研究所|2011/06)
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