保育課程の作成|年間計画・指導計画・保育計画のねらいとシラバス(2017/03/17)
保育園での生活を指導していく中で、重要となってくるのが保育の計画だと思います。保育計画をしっかり定めることが保育園での保育内容の質を高めていくことへと繋がっていくので、重要なテーマとして考えていかなくてはいけません。保育課程とは何かを改めてまとめていくと共に、保育の計画は何が求められるかなどについても項目ごとに触れていきます。保育課程を作成していく時に、是非お役立て下さい。
目次
1、保育課程とは
保育課程とはそれぞれの保育園の方針や目標に基づき、子どもの成長過程を踏まえながら作成する保育内容の見通しをまとめたもののことです。
これまでは「保育計画」と呼ばれてきたものなのですが、2007年に改定された改定保育所保育指針 Q&A50 (引用:厚生労働省)によると、「保育計画」を「保育課程」と改め、保育所の保育の基本的な計画として、他の計画の上位にあることを明確にし、以て保育実践の組織性及び計画性をより一層高め、保育所の創意工夫による保育の質の向上に繋がることが期待されています。
2、保育課程の作成
保育所保育指針(引用:厚生労働省)には、それぞれの年齢に応じた対応の仕方や、健康、人間関係、環境、言葉、表現の5領域についてもまとめられているので、それらを参考に保育過程を作成し、長期及び短期の指導計画を作っていく流れになります。保育所保育指針によると、子どもが現在を最も良く生き、望ましい未来をつくり出す力の基礎を培うという保育原理を実現するために5領域に分けることによって、具体的なねらいを立てやすくしているのです。
出典:教育課程・保育課程論|光生館2011
こうした保育所保育指針の改訂について分かりやすく解説しながら、保育課程の考え方や編成の仕方、特色を踏まえた実例をまとめたものが光生館から出版されているので、理解を深める為に参考にしてみるといいかもしれません。
2-1、保育課程の様式
保育所における指導計画作成に関する実態調査によると、保育課程などの「保育の計画」を立てるのが苦手であったり、計画を活かせない保育士は6割程にも及ぶと言います。保育をしていく上で保育課程は9割もの保育士が必要だとアンケートで答えていながら、6割の保育士が保育課程の作成に悩んでいるという実態は注目すべきところだと思います。
その悩みの内容を紐解いてみると、計画のマンネリ感を感じていたり、発達が違う子たちへの個別内容などに悩みを抱える声も多い中、そもそも保育課程の書き方自体に戸惑いを感じているという声もありました。そういった悩みを解消していくべく「指針改定に伴う保育課程の編成方法」、「指導計画の様式検討」、「質の向上につながる保育の計画」等の研修を保育士の質の向上や疑問解消に向けて定期的に開催しています。
3、保育課程のねらい
保育の基本は、子どもの主体性を尊重し健全な心身の発達が行われていくよう、保育士が計画性のある保育をしていくことだと言えます。保育課程とは、その保育園の目指すべき全体像を表すもので、保育園の保育理念、基本的な方針、目標に基づいた子どもたちの発達の促し方をまとめたものなので、保育をしていく上で欠かせないものであり、また同じ保育園で働く職員同士が共通認識を持ち、保育の質の向上や専門性の向上へと繋げていけるのが保育課程を作成するねらいとなります。
3-1、保育課程の年間計画
年間計画は、これからの1年間どのような保育をしていきたいかという大枠となります。保育園の保育理念や地域の環境、子どもの人数構成から子どもの実態を捉えねらいを計画していくもので、季節ごとの行事なども計画し、日々の保育とのバランスを確保します。行事によって日々の保育が流されていくことのないよう留意しながら、豊かな感性が育つような保育の計画を立てていくことが大切です。
3-2、保育課程の指導計画
保育所保育指針の第11章「保育の計画作成上の留意事項」を参考にすると、保育課程が全体的な保育の計画であることに対し、指導計画とは具体的な保育の計画のことを指します。まず保育課程を立て、そこに基づいて子どもの状況を考慮し、乳幼児期にふさわしい生活の中で、一人一人の子どもに必要な体験が得られる保育が展開されるように指導計画を立てていきます。指導計画は、年間指導計画・月案の長期計画、週案・日案の短期計画に分けられます。全体的な見通しを立てるのが長期的計画で、具体的な子どもの生活に即したものが短期的計画となります。
3-3、保育課程と保育計画
これまでまとめてきたように、保育課程は保育所保育指針の改訂に伴い保育計画から名称が変わり定められたものとなります。保育課程と名称を変えたことにより、他の計画との差別化を図り、子どもの成長・発達を長期的視野で継続的に捉え、発達過程に応じた保育のねらいや内容、及び保育の環境を体系的に構成することによっての保育の質の向上が求められてくるのです。
4、保育課程~シラバス~
保育課程のシラバスを立てていく中で、参考になりそうな保育書をこれから挙げていきます。保育課程を立てる中で迷ったら参考にして下さい。
出典:独自性を活かした保育課程に基づく指導計画―その実践・評価|ミネルヴァ書房 2010/8
保育所保育指針の改訂に伴い保育課程をどう解釈するのか、また保育課程に基づく指導計画の作成の仕方をまとめ、保育現場の実践に役立てる一冊となっています。
出典:保育課程論 ─保育の基盤の理解と実習への活用|萌文書林 2013/5
保育課程・指導計画とは何かを分かりやすくまとめた一冊です。指導計画の事例がたくさん載っているので参考にしやすいと思います。
出典:新保育所保育指針サポートブック ―保育過程から指導計画作成まで|世界文化社 2008/11/18
PriPriの別冊として出版されています。保育所保育指針の改訂に伴い、保育者が作成していく書類の事例を詳細に解説した一冊です。DVDでフォーマットも収録されているので、書類を作成する際にすぐに使用することが出来、とても便利です。
出典:保育課程・教育課程総論|ミネルヴァ書店 2010/10
子どもたちの充実した生活や活動を支える保育課程や教育課程の意義を理解して、指導計画の作成の仕方や記録、評価の方法などを具体的に学んでいける一冊となっています。具体的な指導計画の例が豊富に載っているので活用しやすいです。
5、保育課程の編成
厚生労働省がまとめた改定保育所保育指針 Q&A50 を参考にすると、保育課程の編成で重要なのは、児童福祉法や子どもの権利条約などの保育の関係法令等に基づいた保育所の保育理念、保育目標、保育方針などが提示され、0歳から6歳までの子どもの発達過程を見通し、それぞれの時期にふさわしい保育のねらいと内容を一貫性を持って組織することとされます。保育所での生活がその後の子どもの生活や学びにつながっていく連続性が求められます。
まとめ
保育をする上で欠かすことの出来ない保育課程についてまとめてきました。
厚生労働省は、保育計画から保育課程へと改訂したことにより、これまでより一層、保育を計画的に進め、その内容が保育園で終わるのでなく、その先の小学校へ進学していった際に繋がるような一貫性・連続性を期待しています。
それを受け、保育課程を作成する際は、それぞれの年齢の成長発達に見合った内容で、5領域に応じた計画を立てていく必要があると言えます。
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