リズム遊びと保育園|体操や楽譜を使った太鼓活動、運動会のお勧め曲(2017/03/09)
保育所保育指針における『第3章・保育の内容』の『(2)教育に関わるねらい及び内容』という項目の中で、『保育士等と一緒に歌ったり、手遊びをしたり、リズムに合わせて体を動かしたりして遊ぶ』(オ表現(イ)内容②)、あるいは『音楽に親しみ、歌を歌ったり、簡単なリズム楽器を使ったりする楽しさを味わう』(オ表現(イ)内容⑧)という文言が出てきます。保育園でのリズム遊びは、自分なりの表現を楽しむきっかけにつながるのです。そこでどのようにリズム遊びを取り入れたら良いのか、また、その成果をどのように保護者に伝えていったら良いのかを見ていきましょう。
目次
1、保育園で行われるリズム遊びとは
1−1、リズム遊びの意味
リズム遊びの中でも有名なのが、さくら・さくらんぼ保育園の創立者である斎藤公子氏が考案したものです。上杉陽子(1)によると、このリズム遊びは『就学前の乳幼児期0〜6歳までの運動は単に体を強くするという目的のみではなく脳の発達のため、つまり知的発達のために大変重要である』という考えに基づいています。ピアノの伴奏に合わせ、体の発達に合った無理のない範囲で跳んだり転がったり、という動きを行います。
1−2、リズム遊びの例
年齢によって適したリズム遊びは違います。斎藤氏の提唱したものを参考にいくつか挙げてみます。
■土台のリズム
直立二足歩行を可能にしていくため、あるいは全身を支えるためには、足指で地面を蹴る力や背骨のしなやかさが大切になります。リズム遊びの基礎とも言える土台のリズムには、赤ちゃんが生まれてから二本足で歩くまでの過程の動きが取り入れられています。乳幼児期にこの動きを行うことで、転びにくい、バランスのとれた体が作られていきます。代表的なものは『金魚の動き』『どんぐり』など、体を揺らしたり寝返りをうったりするものです。
■仲間とのリズム
乳幼児期は一人ひとりが行うリズム遊びでしたが、3歳頃の友だちとの関わりが出来る時期になると、リズム遊びの幅も広がります。体の重心線も安定してくるので、『手押し車』『四拍子で歩く』といった動きが出来るようになります。
■年長のリズム
歩行を獲得し、手先から足先まで自由に動かせるようになってからは、走ったり跳んだりすることで、さらに力をつけていきます。『荒馬』や『かもしか跳び』など、舞踊の要素を取り入れた動きも入ってきます。リズム遊びは、子どもたちの様子を見ながら毎日継続して行っていくことが大切です。体の発達に合わせた動きで、楽しみながら体作りをさせてあげてください。こちらも参考になりますよ。
出典:絵で見る 斎藤公子のリズムあそび(2016年 かもがわ出版発行)
2、保育園でのリズム遊びに使える楽譜
いざリズム遊びを取り入れようと思ったときに、参考になる楽譜を2つ紹介します。
■改訂版さくら・さくらんぼのリズムとうた
斎藤氏の創立したさくらんぼ保育園の実践記録です。リズム遊びの解説と187曲もの楽譜が収録されています。発行されたのは10年以上前ですが、今でもあちこちの保育園で活用されています。楽譜だけでなく、リズム遊びの実践の仕方、そしてさくら・さくらんぼの保育が生まれた流れについても説明がされており、とても充実した内容です。
出典:改訂版さくら・さくらんぼのリズムとうた(1994年 群羊社発行)
■映像で見る子どもたちは未来
斎藤氏のリズム遊びに対する考え方について説明されている他、43曲の楽譜がついています。こちらの楽譜には伴奏が付いているので、すぐに練習して取り入れることができます。ただ、伴奏はあくまでも実践例として掲載されているため、保育者の力量に合わせて改変するのも良いでしょう。また、斎藤氏の最後となる卒園式の様子もDVDで見ることができます。リズム遊びだけでなく、保育者としての姿も参考にすることができる1冊です。
出典:映像で見る子どもたちは未来 第3期(2011年 かもがわ出版発行)
3、太鼓を使ったリズム遊び
体を動かすだけでなく、楽器を使ったリズム遊びも面白いです。太鼓は保育にも取り入れやすく、遊びのバリエーションも多いので、子どもたちも楽しんでくれるでしょう。ここでは太鼓を使ったリズム遊びを2つ紹介します。
■太鼓の音でリズムステップ
例えば「タンタンタンタン(4分音符)」なら歩く、「タタタタタタタタ(8分音符)」なら走る、「タン・タン(2分音符)」ならゆっくり歩く、などとルールを決めて、太鼓のリズムに合わせて体を動かす遊びです。
出典:ほいくらいふ
慣れてきたら、「りんご」「バナナ」などの言葉に合わせ、決まったリズムを叩いてみるのもよいでしょう。「りんご」であれば「り」と「ご」の音に合わせて「タン・タ」と叩くなど、あらかじめ決めておきましょう。人数分の太鼓が用意できるときに行うと良いですが、太鼓がなければ膝打ちでも同じように楽しむことができますよ。始めは特に指示を出さず、自由に叩いてみるだけでも子どもたちは楽しんでくれるでしょう。また、太鼓はリズムや強弱、速度の違いなどがはっきり分かります。自分で叩くことで音を全身で感じることができ、音楽への関心も高まるはずです。
4、保育園の運動会でリズム表現
運動会は、子どもたちの成長の様子を保護者の方に直接見てもらえる大切な機会の1つです。日頃の保育の中で取り組んできたリズム遊びの成果を発揮して、保護者の方にあっと驚いてもらいましょう。
4−1、運動会のリズム表現でオススメの曲
ここでは保育園の運動会でリズム表現によく使われる曲を3種類紹介します。
■ミッキーマウスマーチ
多くの子どもにとってなじみのある曲です。テンポがちょうど良く、とても動きやすいでしょう。どの年齢であっても比較的取り組みやすいのではないでしょうか。
■J-POP
街中でもよく耳に入る曲は、子どもたちにもなじみがあり、やってみたいなと思ってもらうことができます。毎年流行の曲は変わっていきますが、アニメの曲、国民的アイドルグループの曲は、毎年あちこちの保育園で使われています。曲選びの際はテンポが速すぎないように気をつけてください。
■エビカニクス
1度聞いたら頭から離れないような、特徴的な歌詞とメロディーの曲です。振り付けが動画サイトにもあがっており、見本があるので保育者も指導がしやすいでしょう。心地よいテンポと楽しげな雰囲気で、盛り上がること間違いなしです。衣装もエビやカニをモチーフにするなどの工夫をしてあげると、見た目も華やかになります。
曲を選んだら、練習時間以外にも繰り返し子どもたちに聴かせ、その曲に慣れさせてあげると良いですね。子どもたちが楽しみながら練習できるような曲を見つけてください。
4−2、運動会ならではのリズム表現
普段のリズム遊びの様子をそのまま披露しても良いのですが、運動会でのリズム表現といえば、やはりダンスが多いです。4−1に挙げた曲は、主にダンスで取り入れやすいでしょう。また、遠藤・花木(2)が創作した『あした 天気にな〜れ』という作品のように、ダンスの要素も取り入れつつ、テーマのある表現活動として行うのも良いですね。
いずれにせよ、運動会の練習には普段のリズム遊びとは違ったアプローチが必要です。運動会では全体で1つの形を作るため、的確な指示で全体をまとめることが求められます。短く分かりやすい言葉で、出来れば子どもが目で見て分かるような指示を心がけてください。子どもたちにとっては『先生の真似をする』というのが特に伝わりやすい方法なので、保育者が見本を見せたり、動きを言葉にしながら一緒に踊ったりするのも効果的ですよ。
5、保育園でのリズム体操
運動会のような特別な舞台でなくても、普段の保育の中でリズム体操を取り入れることもできます。リズム遊びと上手く組み合わせて、子どもたちの心身の発達を促してあげましょう。保育園でよく使われている体操を2つ紹介します。
■バナナくん体操
体全体を使ったダイナミックな体操です。ただ、繰り返しの振り付けが多いため、覚えるのはあまり難しくありません。明るくて楽しげな曲なので、子どもたちにも人気があります。
(引用元:バナナくん体操)
■ペンギンのプール体操
『アケヨル』というCDに収録されている曲です。文字通りペンギンのような可愛い振り付けが特徴です。こちらも繰り返しの振り付けが多いので、難易度はあまり高くないでしょう。テンポはあまり速くないですし、大きな動きも少ないので、子どもたちもすぐに慣れることができると思います。
まとめ
保育園時代は運動機能の基礎が作られていく時期なので、日常的に体を動かす機会を与えてあげると良いですね。また、リズム活動は、出来るだけ毎日繰り返して行うことでより効果が生まれます。ここに挙げたような動きや曲を参考にしつつ、年齢に合わせた取り組みをしていってください。
参考文献
斎藤公子の障害児保育観/上杉陽子
運動会における表現遊びの実践/遠藤晶・花木沙織
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