フィンガーペインティングの保育のねらい|造形遊びを通して学ぶ(2017/02/21)
フィンガーペインティングとは、『できた絵を重要視するのではなく自由に感触を楽しんだり、指で絵の具をなすりつける行為そのものを楽しむ造形遊びのひとつ。子どもの心が開放される』(引用元:福祉教科書 保育士完全合格テキスト 下 2017年版 2016年 翔泳社発行)というものです。紙を2つ折りにして絵の具をのせるデカルコマニー(合わせ絵)、水に専用の絵の具をたらしてかきまぜて模様をつくり、それを紙にうつしとるマーブリング(流し絵)なども楽しいのですが、フィンガーペインティングは直接自分の指を使うという特徴があるため、より子どもの感性を刺激することができます。
目次
1、フィンガーペインティングを取り入れた保育
保育で造形遊びをするときには、版画や紙、粘土など様々な素材が使われます。中でも絵の具はたくさんの色を使うので、子どもたちも楽しんでくれる素材の1つです。絵の具を使った表現技法はたくさんあります。
1−1、保育前の準備
絵の具を使った活動なので、いろいろと事前準備が必要となってきます。
■用意するもの
まずは絵の具を用意します。フィンガーペインティング用の絵の具を購入しても良いですし、のりまたは小麦粉を水と合わせ、そこに絵の具を入れて作ることもできます。小麦粉:水=1:4、のり:水=1:6がちょうど良いです。出来た絵の具は紙コップや紙皿などに入れておきましょう。そして紙ですが、直接描く場合は大きめの画用紙や模造紙を、写し取りなどの活動も取り入れたい場合はコート紙も合わせて準備すると良いですね。子どもたちの様子によっては、布や障子紙など、面白い手触りの素材も準備してあげるとさらに盛り上がります。あとは汚れ対策として、下に敷く新聞紙やブルーシート、汚れても良い服、ぞうきんなどを準備すれば大丈夫です。
■絵本を使った導入
フィンガーペインティングの効果をより引き出すためには、いきなり絵の具を渡して始めるのではなく、事前に絵本などを使った導入をしておくと効果的です。以下のような絵本を参考に、色が混ざるということの面白さを伝えてあげると良いでしょう。
出典:あおくんときいろちゃん(レオ・レオニ1967年 至光社発行)
出典:いろいろいろのほん(谷川俊太郎訳2014年 ポプラ社発行)
■保育の進め方
導入が完了し、場所と素材の準備が整ったら、いよいよフィンガーペインティングを始めましょう。はじめは絵の具そのものの感触を楽しんでみます。もしかすると泥遊びに慣れていない子など、なかなか絵の具に触れない子もいるかもしれません。そういう場合は割り箸などを使って触れてみる、軍手を使って触ってみるなどの工夫をしても良いですね。
絵の具の手触りを楽しんだ後は、色を混ぜたり、紙に指でスタンプを押したり、手形を作ったり…と思い思いに楽しませてあげましょう。年齢によっては写し取りをしたり、しおりの作成をしたりとさらに発展した活動に取り組むこともできます。
また、紙だけでなく自分の顔や体に絵の具をつける「ボディーペインティング」も良いですね。事前に水着になったり服を脱いだりという準備が必要ですし、室内では少し難しいですが、全身で絵の具の感触を味わうことができます。ただ、フィンガーペインティングよりも嫌がる子が出てくると思われるので、保育者が無理強いしたり、嫌がる子に対して別の子が絵の具をつけてしまったり、ということがないように注意する必要が出てきます。
一通り活動を楽しんだ後は、片づけをして手を洗って終了です。体についた絵の具は基本的に石けんで落とせるはずです。事前に保育者が試しておくとより安心ですね。
■注意点
小麦粉を使用する場合、アレルギーの子どもに気をつけましょう。また、1・2歳児の場合は、絵の具を口に入れないように注意して見ておく必要もあります。そして子どもたちが自分で色の楽しさに気づく機会を奪わないために、保育者が誘導しすぎないように気をつけてください。
2、保育にフィンガーペインティングを取り入れるねらい
2−1、造形遊びの意義
高橋敏之1)によると、『就学前造形教育は、幼児教育の中核の一つであり人間育成に必要不可欠なもの』とされています。つまり、保育所における造形遊びは、成長していくために積極的に行っていくべきなのです。また、学習開発研究所2)の実践講座によると、造形遊びにおいては、大きく2つの活動主題を掲げることができます。
■材料や技法との出会いや行為そのものを楽しむ
材料の特徴や特性に気づくことや、発達段階に応じた材料や用具の使い方をすること、あるいは手の巧緻性や美的感性を育てることが保育目標となります。フィンガーペインティングはまさにこのテーマにぴったりの活動です。
■イメージを持って表現することを楽しむ
想像する楽しさを味わい、その子らしい発想や想像力を発揮すること、または他者と思いを共有する喜びを味わうことが目標です。「夏休みの思い出を絵に描いてみよう!」という活動はこのテーマに沿っています。
2−2、フィンガーペインティングのねらい
それでは、フィンガーペインティングを行う際はどんなねらいを持てば良いのでしょうか。実際に実践している保育園・幼稚園では『絵の具の感触をあじわい、色が混ざり変わっていく面白さを感じる』、『気持ちを解放し、柔軟に自己表現できる』(引用元:ひがし幼稚園)、『様々なものに興味をもって関わり、遊びを楽しむ』(引用元:きづき保育園)といったねらいのもとで活動を行っているようです。
絵の具に直接触れ、ダイナミックな活動ができるフィンガーペインティングだからこそ、絵の具の感触を知った上で、心を開放して自分なりの表現をすること、そしてその活動を存分に楽しむことが求められるのです。
2−3、年齢に応じたフィンガーペインティングの取り入れ方
どの年齢でも楽しむことができるフィンガーペインティングですが、発達段階に合わせて活動の内容も工夫してあげられると良いですね。
■1・2歳児
指先の機能が発達してくる時期であるため、触れるという体験が大きな効果につながります。言葉を吸収する時期でもあるので、「ギザギザ」「グルグル」など、形に合わせて言葉がけをしてあげるのも良いですね。準備ができるのであれば、シートに絵の具を出して、足で踏んでみても面白い活動になるでしょう。
■3・4・5歳児
イメージが広がる時期なので、自分でテーマを決めて表現することができるようになってきます。出来上がった作品をみんなで鑑賞し合ったり、協力して作品を作ることもできるでしょう。また、画用紙でこいのぼりやスイカ、雪だるまなどを作っておき、仕上げにフィンガーペインティングで飾り付けをしても面白いですね。友だちの顔や服に絵の具をつけるなど、トラブルが起こらないように注意して様子を見守ってください。
なかなか出来ない体験であるため、十分な効果を引き出せるような計画を立てることが大切です。
まとめ
フィンガーペインティングでは、他の絵の具を使った活動とは違って「触覚」を存分に刺激することができます。また、絵を仕上げることだけが目的ではなく、行為そのものを楽しめるかどうかがポイントとなる活動です。準備は大変ですが、たくさんの気づきと笑顔の生まれるフィンガーペインティング、ぜひ取り組んでみてください。
参考文献
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