ベッドメイキングの看護技術|手順・注意点と看護のポイント(2017/01/27)
入院患者にとってベッド上は、食事、睡眠、排泄、診療、治療の場でもあり、生活空間そのものです。患者は一日の大半をベッド上で過ごすことになります。安全で快適な環境は患者にとって非常に重要で、ベッドメイキングは患者の生活環境を整えるための必須項目です。
ここでは、ベッドメイキングの目的や注意点、具体的手順とポイントについて説明します。看護学生で初めて習得する看護技術「ベッドメイキング」についてあらためて復習してみましょう。
1、ベッドメイキングの目的
ベッドメイキングには、①安全、安楽な環境づくり②生活環境を清潔に保つという目的があります。
ナイチンゲールの「看護覚書」の中で、「看護とは、新鮮な空気、陽光、暖かさ、清潔、清寂さを適切に選択し管理すること」と定義されているように、衛生的な環境を患者に提供することは、看護の基本となります。
①安全、安楽な環境づくり
患者が安心して入院生活を送れるよう、また、安全に診療を受けることができるよう環境を整備することが大切です。さらに、心身の苦痛を最小限にとどめ、安楽な状態を保つことができるような環境づくりが必要となります。
②生活環境を清潔に保つ
清潔な環境は、患者に爽快感を与えるだけでなく、感染や褥創の予防にもつながります。患者の生活空間を清潔に保ち、気持ちの良い療養生活を送れるよう援助することが大切です。
2、ベッドメイキングの注意点
ベッドメイキングを実施するに当たり、患者の理解や協力が必要となります。事前に患者への説明を行い、ベッドメイキングの必要性を理解してもらうことが大切です。患者の同意を得られない場合は無理して行わず、タイミングをみながら声かけを行うように心がけましょう。また、以下の点に注意し、患者に快適な環境を提供できるよう援助しましょう。
■患者の状態に合わせた環境づくり
患者の状態を把握し、患者に合った方法でベッドメイキングを行います。マットの硬さや種類なども、可能な限り患者の好みや状態に合わせて、適切なものを選択しましょう。物品の配置やベッドの高さなども個々の患者に合わせて設定し、使いやすさや安全への配慮が必要となります。
■安全で効率的な操作
効率的に作業ができるよう、事前に必要な物品を準備してから行いましょう。始める前に、ベッドをストッパーで固定し、作業しやすい高さに調節します。ベッドメイキングは、実施者の腰に負担をかけてしまう場合があるため、ベッドの高さや作業する姿勢に注意する必要があります。
■換気と感染対策
ベッドメイキングにより塵や埃が舞い上がるため、換気を行いながら実施するようにしましょう。
離床可能な患者は別の場所に移動してもらい、移動が困難な場合は、ベッドごとにカーテンを閉めて実施するなどの工夫が必要です。また、汚れたシーツから病原菌に感染する可能性もあるため、空気清浄とマスク、手袋の着用など感染への対策が必要となります。
■物品の清潔な取り扱い
シーツは床に触れないように注意して取り扱いましょう。シーツのしわやたるみは褥創の原因となることがあります。しわを伸ばし外観を美しく整えるとともに、シーツのズレやよれを防ぐために角の始末をしっかりと行うことが大切です。
3、ベッドメイキングの手順
ベッドメイキングの方法は患者の状態によって異なりますが、ここでは基本的なベッドメイキングの手順について説明します。ベッドメイキングを実施する際には、患者に必要性を説明し、理解してもらったうえで実施するようにします。換気を忘れずに行いましょう。
1)必要物品
枕、枕カバー、スプレッド、毛布、上シーツ、横シーツ、防水シーツ、下シーツ、マットレスパッド |
2)実施手順
①必要物品を準備、点検し、リネン類は使用する順番に重ねておきます。 ②ベッドを作業しやすい高さに調節し、ストッパーをかけます。 ③交換するシーツは埃などが飛び散るのを防ぐため、四隅から中央に向かって丸めていき、中央でまとめて外します。枕は椅子やワゴンの上に移動しておきます。 ④マトレスの上にマットレスパッドを敷きます。 ⑤下シーツをマットレスの中心に合わせて置き、枕もとのマットレスを十分に覆う分を残して足元へ伸ばします。 ⑥枕元のマットレスを下シーツで包み、角を三角に処理します。三角に処理することで、シーツが崩れにくくなります。シーツのしわを伸ばし、足元も同様に三角に処理します。 ⑦側面に垂れているシーツはマットレスの下に入れ込みます。 ⑧患者の臀部や創部など汚れる可能性のある位置に合わせ、防水シートを敷きます。 ⑨横シーツを中心の線に合わせて敷き、防水シートを覆います。側面の垂れた部分は、マットレスの下に入れ込みましょう。反対側も同じように行います。 ⑩上シーツの裏を表側にし、頭側をマットレスの端に合わせます。中央の折り目を合わせて反対側に広げます。 ⑪足の圧迫を避けるため、患者の足の位置に10~15㎝のタックを作ります。 ⑫タックを崩さないよう、足元の角は四角に処理し、側面の垂れているシーツは、足元側の3分の1程度をマットレスの下に入れ込み、残りは垂らしたままにします。 ⑬毛布の上端をマットレスから15㎝ほど下げて広げ、足元は上シーツと同様に四角に処理します。側面は足元側の3分の1程度をマットレスの下に入れ込み、残りは垂らしたままにしておきます。 ⑭上シーツの上端を毛布の上に折り返します。 ⑮スプレッドの上端をマットレスの上端に合わせ伸ばします。足元に三角の角を作り、側面はそのまま下げておきます。 ⑯枕にカバーをかけ、カバーの口元が病室の入り口と反対側になるように置きます。 ⑰しわやたるみ、汚れがないか、外観が美しく整っているかを確認します。 ⑱必要時、ベッドの襟元を開けオープンベッドにし、患者がすぐに使える状態にしておきます。床頭台や椅子を移動した場合は元の位置に戻し、窓を閉めて終了します。 |
4、ベッドメイキングのポイント
ベッドメイキングを実施する際は、ボディメカニクスを活用しましょう。ボディメカニクスとは骨格や筋肉などの力学的相互関係を取り入れた技術のことで、①基底面積を広くする②重心を低くする③大きい筋群を使用する④重心を移動しやすい姿勢⑤患者を動かす場合は、対象に近づき小さくまとめるなどがポイントとなります。実施者が無理のない姿勢で、効率よく作業できるよう工夫しましょう。二人で実施する場合は、お互いに声をかけ合うなど協力しながら行います。
リネン類は清潔に取り扱い、しわやたるみがなく、崩れにくいベッドを作りましょう。
患者が臥床したまま行う場合は、患者に適宜声かけをし、無理のないよう状態を観察しながら行うことが大切です。
まとめ
普段とは異なる環境で療養生活を送っている患者は、それだけで不安やストレスを感じている場合があります。患者が少しでも快適な生活を送れるような環境を提供することは、とても大切なことです。ベッドメイキングは、清潔で居心地の良い環境を提供するだけでなく、感染や褥創の予防にもつながります。また、清潔な環境は患者に安眠や闘病意欲を与え、患者の疾病の回復に影響を与える可能性もあります。また、患者の状態を観察する機会にもなり、それによって患者の状態を把握する機会にもなります。
患者が安心して療養生活を送ることができるよう、崩れにくく快適性の高い環境を提供するための技術を習得しましょう。
東京都在住、正看護師。自身が幼少期にアトピー体質だったこともあり、看護学生の頃から皮膚科への就職を熱願。看護学校を経て、看護師国家資格取得後に都内の皮膚科クリニックへ就職。ネット上に間違った情報が散見することに疑問を感じ、現在は同クリニックで働きながら、正しい情報を広めるべく、ライターとしても活動している。
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