一斉保育のメリット・デメリット|設定保育との違いと計画の具体例(2017/03/22)
保育士が設定した同じカリキュラムを、子どもたちみんなで実行する保育形態を一斉保育といいます。一見、押し付けている、子どもの自由を奪っている、などの印象をもたれがちですが、子どもの成長や発達を目的とした計画のうえで保育が行われています。一斉保育は、実際にどのように進められているのでしょう。また、どのようなメリット・デメリットがあるのかをここで確認してみましょう。
目次
1、一斉保育とは
一斉保育とは、保育士が子どもに対しての明確な指導目標をもって一斉に行う保育のことです。製作や音遊び、体操など、その内容は様々ですが、同じ目的に向かって一緒に活動することに意義をもつ保育方法ともいえるでしょう。子どもたちのルールの理解、協調性などにもつながる取り組みです。ただし、対象となる子どもたちの成長段階や発達状況は子どもの数だけ違ってきます。ですから、保育士は一斉保育を進めながらも、それを理解したうえで一人ひとりへの援助や働きかけをしていく必要性があります。
1-1、一斉保育のメリット、デメリット
一斉保育は、子どもに対して保育士がそのとき必要と感じた課題を設定していきます。ですから、活動の目標が明確で、子どもたちへの指導がしやすいことがメリットといえます。また、みんなで同じ活動をすることで、子どもたちの個々の成長や発達状況を見るきっかけにもなります。さらに、クラスやグループで一斉に活動することで、子どもたちの中に協調性が生まれることも期待できます。子どもたちにとって、「みんなで一緒に何かをする」ことは、とても重要な経験の一つなのです。
対してデメリットとしてよく指摘されることは、子どもの自主性、自発的な意思を発揮する機会が少なくなるということ。保育士が決めた活動内容ばかりをこなす子どもは、自由な発想に欠けてしまうのではないかということです。ただし、一斉保育だからといって子どもに自由がないとは一概に言い切れません。子どもの意思を尊重できるかどうかは、保育士の働きかけでも大きく変わってくるのです。しかし、一斉保育を進めていくうえで困難なのが子どもの成長の違い。自身で積極的に取り組むことができる子がいれば、反対に保育士のサポートがなくては活動についてくることができない子もいます。その見極めをしっかり行い、一人ひとりに適切な援助を行っていくことはとても大変なことです。
1-2、一斉保育の活動具体例
では、実際の保育現場でどのように一斉保育がとり入れられているのかを見てみましょう。たとえば、子どもの「運動能力の発達」を目的とした場合、かけっこやボール投げ、鬼ごっこなどのゲームや縄跳びなどをグループに分けるなどして一斉に行います。子ども一人ひとりが身体をしっかりと動かせているか、手足を使えているかなどの運動能力を見ながら、活動を進めていき、次の活動につなげていくのです。また、子どもの「協調性」を目的とした場合は、パラバルーンや合唱などの活動を行い、一人ひとりが参加することの意義や協力することの大切さなどを伝えていきます。このように、一斉保育をすることで見いだせる子どもの成長が保育現場にはたくさんあるのです。
2、一斉保育の意味
「一斉保育=教育」と捉えられることがありますが、それは少し意味が違っています。たしかに、自由な遊びを主とする「自由保育」と比較すると保育士が主導となり活動を進めていくことは学校での教育と同じように感じられます。しかし、あくまで子どもを主体とし、遊びを活動の基礎におくことには変わりません。子どもへの適切な保育活動を進めていくためには、保育士の一斉保育に対する正しい意味の理解が重要になります。
2-1、「一斉保育だけ」の保育の難しさ
一斉保育に一定の必要性はあるものの、子どもそれぞれの個性や意思がある中で一日の保育全てが完全な一斉保育で進められることは、なかなか難しいものです。また反対に、全てが完全な自由保育で進めることも、困難といえるでしょう。ですから、実際の園では一斉保育と自由保育を混合させた保育形態をとっているケースがほとんどのようです。たとえば、登園した子どもから自由遊び(自由保育)の時間を過ごし、朝の会のあとは製作活動(一斉保育)、といったように、一日の中でも一斉保育と自由保育を織り交ぜて保育が行われます。そのことで、どちらのメリットもとり入れることができ、かつ保育も切り替えやすく効率的に進められます。いずれにしても、保育士が一斉保育、自由保育に「意味」をもって子どもを見守ることが大切です。
2-2、保育にかかわる「保育士」の質
どの保育形態であっても、保育士の質が問われることに変わりはありません。一斉保育の意味を理解できていない保育士は、個々の子どもの発達や活動状況に十分に目が向けられず、ただ計画を実行するだけの保育になってしまいます。また、自由保育であっても、子どもたちをただ自由に遊ばせているだけという無責任な保育になってしまう可能性があります。保育士には、どの保育にも意味をもち、どのような子どもへの対応が求められるのかを見極める力が問われるのです。
3、一斉保育と設定保育の違い
一斉保育は、目標のカリキュラムを軸として保育を行うことを指します。同じような意味で「設定保育」という言葉もよく耳にしますね。これらの意味に違いはあるのでしょうか。
3-1、一斉保育と設定保育は「同じもの」
一斉保育と設定保育は、一般的にほぼ同じ意味合いで使われていることが多いです。どちらも目標や目的をもって子どもと活動していくといった保育方法を指します。ただ、一斉保育に比べ、設定保育はより計画性のあるものであるといえそうです。これらと同じような言葉で、「計画保育」という言葉もあります。
3-2、事前の「計画」が大切
一斉保育も設定保育も、共通なポイントとしてあらかじめ「計画」を立てることが重要になります。しかし、保育指導計画や月案、日々の保育計画を立てる作業は、保育士の仕事の中でいちばん頭を抱えるものでもあるようです。活動のマンネリを避けたい、子どもの発達に適切な活動の見極めが困難、園の方針との兼ね合いなど、考えるべきことがとても多いことが、その要因の一つといえます。
計画に行き詰まってしまったときは、まず新年度のはじめに立てる「年間計画」を見返し、今の子どもの成長と比較してみましょう。もちろん年間の計画はとても大まかなものなので、子どもがその通りに成長していくことは難しいことです。しかし、計画を立てる基準として、「クラスで音楽への取り組みが欠けている」「子どものハサミの使い方がまだ完全ではない」など、客観的に子どもの成長や保育内容を見つめなおすきっかけとなります。
年間計画を見返したら、その目標を月案や日案に細かく落とし込んでいきましょう。そうすることで、より計画がしやすくなっていきます。ただ、保育に臨機応変は付き物です。園の行事や個々の子どもの特性を優先していると計画通りにいかないこともあります。そのようなときも気を落とさず、計画はあまり欲張らずに余裕をもって設定することがおすすめです。何より大切なのは、「いま」の子どもたちに何が求められるのかを判断することです。子どもが楽しく過ごせるよう、また、保育士自身も計画に追い込まれてしまいことのないよう、無理のない計画を立てていきましょう。
まとめ
一斉保育を進めるときには、保育士の子ども一人ひとりへの理解が必要不可欠です。計画を立てるまえに、目の前の子どもたちを見つめ直しましょう。また、保育内容に意味をもち、目的が子どもたちに伝わりやすくすることも大切です。日々変化していく子どもへの保育をするうえで「計画的に」ということは難しいものですが、保育士は常に「ねらい」をもって保育を行っていく義務があります。
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