病棟保育士に必要な資格とは?仕事内容と気になる給料事情(2018/02/25)
病棟保育士とはどのようなものなのか、病棟保育士について詳しく調べてまとめていきます。病棟保育士の仕事内容や、必要な資格、気になる給料面についてもまとめていくので、参考にしてみてください。
1、病棟保育士とは
病棟保育士とはどのようなものなのでしょうか。自分に適した学校を探せるアクセス進学のホームページを参考に見て行きましょう。病棟保育士は、入院中の子どもの世話をする院内保育の専門家のことを指します。病院内に勤務して、医師や看護師と連携を取りながら病院での「保育看護」の保育の部分を担当していきます。どのようなことをしていくのかというと、入院している子どもたちの食事や排泄の世話を行ったり、着替えを手伝うなどといった通常の保育業務を行っていく他に、症状が重い子どもに対しては、睡眠などの静養を確保していくことも仕事となります。また、症状が軽い子どもには、教育や軽い運動をしたり、一緒に遊ぶなどといった生活面のサポートも行っていきます。
なぜこのような病棟保育士が必要なのか、実際の病棟保育士にインタビューした内容をまとめた論文を参考に見ていきましょう。病棟保育士が必要な理由は、先にも述べたような病気を抱えた子どもたちのお世話や遊び相手、病院に通う時間の限られた保護者やその兄弟のサポートといった役割も重要ですが、一番の理由は病気を抱えた子どもたちの安心材料であると挙げられています。家族から離れて過ごすことを余儀なくされてしまった子どもたちは、心理的不安や大きな精神的ストレスを抱えていると言われています。それにより、病気が回復に向かったとしても、心の元気が失われていってしまうことがあるのです。そんな子どもたちの入院による心理的不安や学習の不安に対して個別の対応が必要とされます。こうした状況を改善していく為に、近年では小児病棟に病棟保育士を配置する病院が増えてきているのです。
上記の病棟保育士の役割の論文の中の調査を通じて、子どもの好きな遊びを通して病棟保育士が子どもたちと関わることで、子どもたちの中に安心感が生まれていることが分かりました。それは、病棟保育士は医療スタッフではない為、入院生活を送る上で身近に感じられる存在となり得るからです。ただ、抱えている課題もあり、入院している子どもたちは生育環境や病気の状態はそれぞれ異なる為、子どもたちが集団で関わる時には配慮が必要となります。このような個々の対応をしていくには病気の知識も身につけていく必要も生じてくるので、病棟保育士のスキルの向上が今後の課題として挙げられます。
また、特定非営利活動法人 日本クリニクラウン協会の病棟スタッフの日記を見てみると現場の様子が見えてきます。子どもは遊びの中から生きる力を育んでいくと言われていますが、病院では「検査が終わったらプレイルームで遊んでもいいよ」といった遊びが中心の生活ではなく、治療や痛いこと、つらいことの代償としてご褒美に遊びが得られるといった状況も珍しくないといいます。
そんな中で病棟保育士は、子どもの様子や性格などから「今この子には、このような関わりが効果的」「今度は少しステップアップしてみよう」などと先回りして子どもに経験・体験させたい内容を盛り込んだ遊びを誘導することもあると言います。
子どもたちにとっては保育士は痛いこと・つらいことを行わない安心して遊べる相手となり、治療とは切り離した時間を得ることで次の治療へと向かっていくパワーを充電していきます。このように病棟保育士は子どもたちの心を元気にする、生きる力を引き出す役割を担っているのです。
2、病棟保育士に必要な資格とは
病棟保育士になるのに必要な資格はあるのか見ていきましょう。病棟保育士の専門の資格はなく、保育士の資格があれば働くことが可能です。ただ、医師や看護師と連携を取りながら働いていく為、医療に関する用語や知識と対処療法を身につけていく必要があります。
また、病棟保育士は知名度が高まりつつありますが、まだまだこれから発展していく分野の為、病院からの募集も少なく狭き門となっているのが現状です。その為、募集があっても保育士としての経験が問われる為、新卒でいきなり病棟保育士になるのは難しく、通常の保育士としての経験を数年積んだ後に、病棟保育士として転職をする道を選んだほうが現実的といえます。保育士をしながら医療の知識を身につけていくのは難しく思えますが、以下に紹介していくような専門書を参考にしていくと活用的でオススメです。
出典:医療保育実践マニュアル(国立成育医療研究センター編集|診断と治療社|2016年)
こちらは国立生育医療研究センターで働く病棟保育士の方たちが作成したマニュアルを書籍化したものとなります。実際の現場で使用しているものなので、活きた経験が詰まった一冊といえます。
本書の中では、実際の保育記録や保育における安全対策、他の職種との連携の仕方、代表的疾患別の保育実践内容がまとめられているので病棟保育士の仕事の様子がリアルに伝わってくる内容となっています。なかなか内部の様子を窺い知ることは出来ないので、本書を活用して病棟保育士の現場の姿を垣間見てみるのはいかがでしょうか。
出典:医療保育 改訂第4版―ぜひ知っておきたい小児科知識(梶谷喬、佐々木正美、小河晶子、寺田喜平|診断と治療社|2015年)
こちらは保育士資格を所有する保育士が、より医療に関する専門性を高めて活躍する為のテキストとなっています。小児疾患の基礎知識から発展的な知識へと段階を踏んで学ぶことが出来るよう配慮されているので学びやすくなっています。他にも発達障害全般についてやアナフィラキシー、予防接種の基本についてもまとめられているのでより深い知識を本書より得ることが期待出来ます。
3、病棟保育士の給料
では病棟保育士の給料はどのようになっているのでしょうか。実際の求人情報から見ていきましょう。保育士資格の所有があれば経験は不問となっています。こちらの求人の基本給は17万2700円となっていますが、基本給以外に時間給1200円換算で手当が支給されることもあるようです。
続いて、中津病院の求人情報です。こちらも経験は不問で保育士資格を所有していれば働くことが出来ます。こちらの求人の基本給は16万5230円から19万7970円となっています。ですがこちらの求人は、資格手当、研究手当、住宅手当、夜勤手当など手当が充実しているので、働き方に見合った給料が期待できるかもしれません。このように病棟保育士の給料は17万円前後であることが多いようです。保育士の平均月収は22万円弱であることが分かった為、給料面で優れているとは言えないことが分かります。ただ、保育園内の保育では経験出来ないことも多く、自身の目指す保育と重なるところがあれば病棟保育士を目指してみるのもいいでしょう。
まとめ
病棟保育士についてまとめてきました。病棟保育士とは何かから始まり、病棟保育士の仕事内容や病棟保育士の求められていること、これからの課題についても詳細に記したので、病棟保育士を目指す際に参考にして頂けたらと思います。また実際の求人情報より給料面についても調べたので、是非こちらの情報を参考に自分の条件に合う求人を見つけてみてください。
参考文献
病棟保育士の役割:病棟保育士へのインタビュー調査から(赤池美紀、遠藤清香|山梨学院短期大学研究紀要 第35号 27-36|2015年)