保育士資格の更新|免許の特性と保育士資格・免許の更新手続き(2017/04/10)
保育士は、厚生労働省が管轄する児童福祉法に基づく国家資格です。児童福祉法上では、保育士を「保育士登録簿への登録を受け、保育士の名称を用いて、専門的知識及び技術をもって、児童の保育及び児童の保護者に対する保育に関する指導を行うことを業とする者」というように定義しています。
近年は、認定子ども園の創設、専門職としての質の向上、活躍の場の範囲拡大などから、保育士資格と幼稚園教諭免許を併せて取得されている方も増えているようです。実際に、認定こども園の創設により、幼保連携型認定こども園の職員として、幼稚園教諭免許と保育士資格の両方を保有する保育教諭が求められています1)。
今回は、保育士が幼稚園教諭を取得するという視点に立って、保育士資格と幼稚園教諭免許との違い、資格・免許の取得特例制度、幼稚園教諭の免許更新制度を中心に説明していきます。
目次
1、保育士資格と幼稚園教諭免許の特性
保育士資格は、先程も触れましたが、児童福祉法に基づく国家資格で、厚生労働省が管轄しています。一方、幼稚園教諭免許は、学校教育法に基づくもので、文部科学省が管轄しています。
一般的には、双方とも「保育園(保育所)の先生」「幼稚園の先生」と呼んでいます。実際に保育士を「○○先生」と呼ぶ保護者や子どもが多いと思いますが、厳密には「保育園の保育士=児童福祉施設の1つである保育所の専門職」であり、幼稚園教諭の「先生」とは意味合いが異なります。保育士は福祉的要素が強く、幼稚園教諭は教育的要素が強い専門職であると捉えるとわかりやすいかと思います。
また、幼稚園教諭免許は更新制度が設けられているのに対し、保育士資格には更新制度が設けられていないという点も双方の相違点の1つとして挙げられます。幼稚園教諭免許は、所定の講習を受けることなどにより、一定期間ごとに更新する必要がありますが、保育士資格は、一度取得してしまえば、その後、よほどの事がない限り、ずっと保育士資格を保有することが可能となっています。そのほか、資格・免許の取得ルートや取得方法なども異なっています。
2、保育士資格取得特例制度と幼稚園教諭免許取得特例制度
保育士資格取得特例制度と幼稚園教諭免許取得特例制度は、2015(平成27)年度から開始された認定こども園への円滑な移行や促進を図るために設けられたものです。保育士資格取得特例制度は経験ある幼稚園教諭免許取得者が活用することができ、幼稚園教諭免許取得特例制度は経験のある保育士資格取得者が活用することができます。近年、保育士が幼稚園教諭免許を取得することや、幼稚園教諭が保育士資格を取得することが増えてきているように感じる背景には、認定こども園の創設によって、2019(平成31)年度まで幼稚園教諭免許取得特例制度や保育士資格取得特例制度というものが設けられ、資格・免許取得のハードルが一時的に下げられているということもあるといえます。
ご自身のスキルアップや活動の幅の拡大、そして子どもへのより良い保育の提供に向けて、要件を満たした保育士の方々は、この特例制度を活用してみてはいかがでしょうか。
2-1、保育士資格取得特例制度の特徴
通常、保育士資格を取得するには指定保育士養成施設を卒業するか、保育士試験に合格する必要があります。しかし、保育士資格取得特例制度では、経験ある幼稚園教諭免許取得者が保育士養成施設における「学び(特例教科目の単位修得)」を経て、保育士試験に合格することによって保育士資格が取得できます。なお、保育士試験申込み時には、保育士養成施設における「学び」と幼稚園等での実務経験が必要になりますので、あらかじめ双方の要件が満たされていることを確認しておきましょう。
保育士養成施設における「学び」では、「福祉と養護」「相談支援」「保健と食と栄養」「乳児保育」の4科目について単位を修得します2)。修得にあたっては、保育士養成施設や修得方法などによって異なりますが、通学制で概ね20日程度を要します。
「学び」の科目と単位数
科目 | 単位 |
福祉と養護 | 2単位 |
相談支援 | 2単位 |
保健と食と栄養 | 2単位 |
乳児保育 | 2単位 |
ただし、過去に保育士養成施設において保育士養成課程の教科を学んだことがある方は、この4科目すべてもしくは一部を受講する必要がない場合もあるので、あらかじめ調べて、ご自身の状況を確認しておきましょう。
2-2、幼稚園教諭免許取得特例制度の特徴
幼稚園教諭免許取得特例制度は、経験のある保育士(保育士資格を有し、保育所等にて保育士として3年かつ4320時間以上の勤務経験がある人)が簡単に幼稚園教諭免許を取得できるように配慮した制度です。この特例制度では、大学等で以下の5科目を受講して計8単位だけを修得し、都道府県教育委員会における教職員検定を通過することで、都道府県教育委員会から幼稚園教諭免許状が授与されます。
幼稚園教諭免許取得特例制度における受講科目と単位数
科目 | 単位 |
教職の意義及び教員の役割、教員の職務内容 | 2単位 |
教育に関する社会的、制度的又は経営的事項 | 2単位 |
教育課程の意義及び編成の方法 | 1単位 |
保育内容の指導法、教育の方法及び技術 | 2単位 |
幼児理解の理論及び方法 | 1単位 |
通常であれば一種免許の場合は59単位、二種免許の場合は39単位の修得が必要なりますので、8単位の修得というのは、労力や時間などの様々な面で軽減されているといえます。要件を満たしている保育士は、是非、幼稚園教諭免許取得特例制度の活用を検討して頂きたいと思います。
3、幼稚園教諭免許を所有する保育士の更新手続き
幼稚園教諭免許取得特例制度を利用して幼稚園教諭免許を取得した保育士は、通常どおりに幼稚園教諭免許を取得した場合と同様、10年間の有効期間が設けられます。そのため、取得後、保育士として業務に就かれている場合であっても、一定期間経過後に免許更新の手続きをする必要があります。
なお、幼稚園教諭免許を更新できる保育士は、従来、幼稚園設置者が設置する認可保育所や認可外保育施設の保育士に限られていましたが、2013(平成25)年8月からは認可保育所の保育士と幼稚園設置者が設置する認可外保育施設の保育士というように対象が拡大されました。
基本的には、免許状更新講習を受講・終了し、免許管理者である都道府県教育委員会に申請することによって、有効期間が更新された免許状が交付されます。詳しくは、『幼稚園教諭免許の更新制度|しっかりとした資格管理を!』で説明していますので、そちらをご覧ください。
4、幼稚園教諭免許取得特例制度による幼稚園教諭免許の有効期間
幼稚園教諭免許には、平成21年3月31日以前に授与された「旧免許状」と平成21年4月1日以降に初めて授与された「新免許状」の2種類があります。この「新免許状」には10年間の有効期間が付与されています。
これから幼稚園教諭免許取得特例制度を活用し、幼稚園教諭免許を取得される保育士の場合は「新免許状」が交付されます。もちろん幼稚園教諭免許取得特例制度を利用しても有効期間は10年間です。この有効期間の2年2か月前から2か月前までの2年間で、30時間以上の免許状更新講習を受講・修了して、免許状を更新します3)。
10年間という長い有効期間によって、更新することを忘れてしまう恐れがあります。実際にニュース等でも、教員免許を更新せず、失効した状態で何か月も教鞭をとっていたという内容を見聞きすることがあります。このようなことが起こらないよう、資格管理を徹底して下さい。
まとめ
保育士資格と幼稚園教諭免許の特徴を確認した上で、双方の取得特例制度を中心に説明しましたが、いかがでしたでしょうか。「専門職としての質の向上」や「活動の幅の拡大」を図るために、他の資格や免許を取得することはとても有効です。その際、保育士資格や幼稚園教諭免許のように取得の負担軽減が図られていることもあるので、ご自身の資格や実務経験などをしっかりと把握しておきましょう。
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