デカルコマニーの保育|導入するねらい、やり方と指導案について(2017/04/07)
デカルコマニーという技法の絵画を保育園での制作活動でも取り入れている所が増えてきています。デカルコマニーは子どもでも取り組みやすく、どのような絵画が完成するのか見通しが立てにくいというところが子どもたちにとって関心も出て楽しく絵画制作を行うことが出来るのではないでしょうか。デカルコマニーの技法についてや、デカルコマニーを保育園で行う方法・ねらいなどをまとめていくので、保育園での活動にデカルコマニーを取り入れる際に参考にしてみてください。
目次
1、デカルコマニーを保育の現場で行うには
デカルコマニーとは、フランス語で(転写法・転写方式・転写画)を意味する用語で、シュルレアリスムにおいて、オスカー・ドミンゲスが創始した技法のことを指します。
作製の工程は、ガラスや表面が滑らかな紙など、絵具が定着しにくい素材を選び、その上に絵具を塗り、塗った絵具が乾かないうちに、別のガラスや紙を上に重ねて落し付け、重ねたガラスや紙を外すと、そこに模様が出来ているといったものとなりますが、保育の現場では、画用紙などの半分に絵具を塗ったり、スタンプのようにポンポンと絵具をつけて、画用紙を折り合わせて転写させる方法のことを指します。子どもでも容易に取り組むことが出来、準備する道具も画用紙と絵具があればデカルコマニーを行えるので保育園でも活動に取り入れやすく、また、左右対称になる絵や、予想にしない絵が完成することが子どもたちにとって楽しい絵画遊びとなります。
2、デカルコマニーを保育で行うねらい
デカルコマニーの絵画を制作する際、そこには往々にして制作者の意図が働いていますが、デカルコマニーで制作された模様には制作者のコントロールが効いておらず、完成した模様に制作者の「無意識」が表出していると考えることが出来、それがデカルコマニーの最大の特徴となります。また、子どもが絵画制作において自由にイメージを広げていくには、小田原短期大学による「保育」入門テキストを参考にすると、絵画制作は子どもたちに自由に表現することの楽しさをまずは感じてもらう必要があります。絵の具を使っての遊びは、材料経験と同時に、“心の開放”もねらいとした活動です。のびのびと絵画制作してもらう為にも子どもたちの周りにいる大人は、細心の注意を払って、子どもを励まし、自信をもたせ、自由に表現できるような言葉かけや、環境を設定しなければなりません。「ちょっとへんになった」などと言う子どもにも肯定する言葉をたくさんかけて、次の絵画制作へと繋げていけるような楽しい気持ちを持たせましょう。
それらを踏まえて、デカルコマニーを保育で取り入れるねらいは、思いもよらない柄が出来上がることを楽しんで自由に思い思いに表現をして、想像力を膨らませるということになるのではないでしょうか。
3、デカルコマニーの導入の仕方
デカルコマニーを保育で導入する方法についてですが、デカルコマニーを実践している保育園で参考になりそうな様子を紹介していきます。
3-1、このは保育園
福岡市西区の無認可保育園このは保育園では、スポンジスタンプで画用紙に絵具をポンポンと押しつけ出来た絵画の真ん中に色のついた画用紙で体などを作って蝶々を作成していました。思い思いに描いた羽がとてもキレイで作成した子どもの個性もよく出ています。
出典:このは保育園
絵画が完成した後は、子どもの提案により、「はらぺこあおむし」の絵本をみんなで読むことになったそうです。更に、毛布をさなぎに見立てて中で眠る遊びをしたり、絵画作成だけで終わらずその先の遊びに繋げていくことが出来たのがとても素敵です。
出典:このは保育園
3-2、橘今保育園
次に紹介するのが、岡山市の橘今保育園の4歳児クラスの作品です。
出典:橘今保育園
デカルコマニーで作成した絵画にクレヨンで描き足して作品を完成させています。
意図せず出来た絵画を、自分のイメージの作品にクレヨンで仕上げているので、想像力が掻き立てられるのではないかと思います。
東京成徳短期大学による論文幼児の造形表現における素材・材料の研究で、造形活動において子どもの表現意欲を引き出せるか否かは、多くの場合その活動の導入部分にかかっているというアンケート結果が出たそうです。つまり、活動の導入部分が重要なポイントとなり、題材設定や環境構成も大きな役割を果たしてきます。これらのことからも、どのような作品に仕上がるか予測の立てにくいデカルコマニーは作品が仕上がる期待値が高まり表現意欲という面でも適しているのではないでしょうか。
4、デカルコマニーの指導案
デカルコマニーの指導案について考えていきます。
尾張旭市立東栄小学校の図画工作科学習指導案が対象が小学生ではありますが、保育園のデカルコマニーの指導案としても活用出来そうなので紹介します。
出典:愛知県美術館
この学校は、デカルコマニーを授業で行う前に愛知県美術館へ事前学習に行き、デカルコマニーの技法で描かれている絵が何に見えるかなどを話し合う場を設けています。この事前学習が前章で記した「子どもの学習意欲を引き出す活動の導入の部分」となるのです。保育園で行う際は保育士が絵画の本を見せたり、これからデカルコマニーで作成してみようとする大枠のテーマ(蝶々など)があれば、それらが描かれたものや写真などを見せ、感じたことをみんなで話し合ってみるといいかもしれません。
そして、デカルコマニーを実際に自分たちでも経験をしてみて、出来た形が何に見えるかを考え、その形に近づくようクレパスなどで書き加える工程も尾張旭市立東栄小学校では行っています。
出典:愛知県美術館
その結果、ある児童はデカルコマニーで出来上がった形をワンピースのような洋服に見立てて女の子の絵を完成させました。尾張旭市立東栄小学校では、デカルコマニーの何かに見立てる表現活動が、児童の豊かな想像力を養うことが出来ると考え、活動のねらいとしています。保育園でデカルコマニーを行う場合でも、それは同じであると言えるのではないでしょうか。
5、デカルコマニーの指導案の参考本
デカルコマニーの指導案を作成する際に参考になりそうな保育書も紹介します。
出典:2・3・4・5歳児の技法あそび実践ライブ(ひかりのくに 2015/9/15)
デカルコマニーをはじめとした21種類の技法が紹介された技法遊びの保育書となります。
技法の基本と題材を紹介すると共に、実践例も豊富に掲載されているので、技法遊びを行う際に予備知識が保育者になくてもスムーズに子どもたちと取り組むことが出来るのも魅力的です。
また、写真やイラストをたくさん使用し、行程順などが紹介されているので、子どもたちと一緒に本書を見ても楽しめると思います。
まとめ
デカルコマニーは絵具を塗った紙を合わせて出来上がった、狙いを定めていない偶然の産物を楽しむ技法の絵画となります。なので、絵を描くのが苦手な子どもでも構えることなく取り組むことが出来、仕上がる絵を楽しみに活動し、出来た絵が何に見えるかを考える想像力を広げる時間を持つことが出来ます。出来上がった絵を、更に見立てたものに近づけるべくクレパスで描き足したり、何に見えるかを保育者や友達と話し合ってみるのもいいかもしれません。
デカルコマニーを保育園の活動の中で行うことによって、子どもが絵に興味を持ち、表現の幅を広げるきっかけとなるのではないでしょうか。是非、デカルコマニーを保育園で実践してみてください。
参考文献
「保育」入門テキスト(小田原短期大学 保育学科|2012年3月)
幼児の造形表現における素材・材料の研究(東京成徳短期大学 堀内 秀雄・杉本 亜鈴|2005年)
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