小児看護のポイント|最適なケアのための看護技術・看護計画、小児専門看護師について(2015/06/11)
小児の看護ケアは非常に難しく、また奥が深いものです。熟練の看護師でも的確かつ効率的にケアを行うのは困難であるため、幾度となく壁にぶちあたる人もいるでしょう。特に看護学生の方は、どのようにケアしていけばいいのか分からないことばかりなのではないでしょうか。
そこで、今回は的確かつ効率的な小児看護ケアを紹介したいと思います。また、スキルアップやキャリアアップを図る上で必要となる情報もあわせて紹介するので、最後までしっかりとお読みください。
目次
1、小児看護とは
小児というのは0歳の乳児期~16歳前後の思春期のことを指し、幅広い年齢の子供を対象に、病気や怪我などの疾患治療や、健康状態を維持するための予防治療、子供の権利が侵害される虐待の早期発見や防止、親権者に対する育児や養育などのアドバイスなど、患児が健やかに成長していくために援助していくことが、小児看護の役割です。
■小児看護の特徴
小児看護は0歳~16才前後の子供を対象としているため、家族(保護者)の協力が必要不可欠です。この点において成人看護と大きく異なり、通常の看護スキルだけでなく、子供の心の問題の理解や、家族への指導など、さまざまな点に配慮していかなければいけません。
患児と家族への十分な関わりを持つことが、小児看護の役割であり、健全に成長するために不可欠であるため、負担・苦痛を最小限に抑えるための迅速・的確な観察はもちろん、患児への病気に対する理解の促進や家族の援助も同時に行っていきます。
1-1、小児看護の目標・計画
小児看護では、「迅速・的確な観察」、「患児への理解促進とQOLの向上」、「子供への家族の援助指導」を3つの事項を目標とし、それに準じた目標を立てていきます。これら3つの事項を十分に把握・実践することで、質の高い小児看護を行うことができます。
■迅速・的確な観察
小児は生理機能が未熟であり、外界の刺激を受けやすいため、呼吸や脈拍、心拍、血圧、体温といったバイタルサインは変動しやすく、さらに乳児であれば言語機能が未熟なため、訴えが不明確。それゆえ、看護師は患児の異常を素早く発見し処置しなければいけません。免疫機能が弱い小児は、異常発見が遅れると容易に病状を悪化させてしまうため、迅速かつ的確な観察が必要不可欠です。
■患児への理解促進とQOLの向上
小児看護で最初にすべきことは、病気に対する患児の理解を促すことです。小児で死亡要因の多くは事故によるものであり、病気に対する理解度が低ければ低いほど事故率が高くなります。それゆえ、まずは病気や入院生活における注意点などを分かりやすく説明し、理解を促すよう試みることが大切です。
また、子供は発達段階において、理解や判断、意思の表現方法が変化していきます。特に3歳~6歳の小児は短期間に急速に成長するため、気持ちの変化を敏感に察し、接し方などにも気をつけていかなければなりません。これらを包括的に実践していきながら、家族がいない間は一緒に遊んだり、コミュニケーションを図るなど、QOLの向上にも配慮し、健やかに成長できるようサポートしていくことが非常に大切です。
■子供への家族の援助指導
患児は病気や入院において不安・心配があるため、適切に治療していくためには家族の援助が必要です。法律上、未成年の子供は親権者に服する立場であるため、受ける治療の選択や意思決定、その他の責任は親権者にあります。
それゆえ、小児看護では、親が子供の病気や障害に対して確かな理解を持ち、治療における意思決定をしていくための情報の提供や、不安・心配・恐れなどに対する共感者としてのコミュニケーションなど、患児をサポートするために家族へ適切な指導をすることが大切。
また、在宅療養時のことなど、先を見据えたサポートを効率的に行えるよう、また、子供の健全な成長のために、細かなところまでしっかりと話し合っていく必要があります。
2、小児看護のポイント
小児看護で最も難しいのが患児の成長を援助することです。大人の看護では治療を主体としたケアを行っていきますが、小児の場合は、治療ケアはもちろん、心のケアや健全な成長のための援助も同時進行で行う必要があり、発達段階における心の変化には個人差があるため非常に難しいのです。
小児の看護ケアには各患児によって個人差があるため、熟練の看護師でも一筋縄にはいかないところもありますが、まずは患児が入院に際してどのような不安・恐れを抱えているのかを知ることから始め、入院生活に慣れてくれば、遊びなどを通したコミュニケーションで、健やかに成長できるように支援していきます。
2-1、患児の不安・ストレス
入院直後の患児は、親から離れ、不慣れな環境下にいることに対し、大きな不安を抱えています。また、入院に慣れた後も検査や処置、苦痛などにより、ストレスが大きくのしかかります。これらは患児にとって負の要素であるため、看護師はまず患児の不安やストレスを取り除いてあげなければいけません。
■親・家族との分離不安
入院直後には必ずと言っていいほど分離不安が起こります。親や家族と離れ、慣れない環境下にいるということで不安が募り、周りを拒絶することがあります。これは、「第一期」「第二期」「第三期」に分けられ、特に乳幼児の多くが経験するものです。
第一期(入院直後~約1週間)
看護師の声かけに一切反応することなく、ひたすら親や家族を追い求め取り戻そうと、面会時には泣き叫び、しがみついて離しません。 第二期(約1週間~1か月) 親や家族と離れて生活する環境に多少慣れたことで、落ち着きを取り戻し、看護師の声かけにも素直に応じます。しかしながら、未だ親や家族を追い求める気持ちは続いている状態で、患児によっては第一期と変わりなく、面会時には泣き叫び、離さないといった行動をとります。 第三期(約1か月~) 入院生活に慣れてきたことで、笑顔を取り戻し、自ら他者と話したり遊んだりと、精神が安定します。しかしながら、決別意識が強くなったことで、面会時には親や家族を拒否したり、関心を示さなくなるなど、態度が急変することがあります。 |
■不安・ストレスによる行動反応
小児は精神的な不安やストレスを自ら打破する力を持っていないため、さまざまな行動反応を示します。
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■不安・ストレスの対処法
不安やストレスを取り除くために必要となるのは“コミュニケーション”です。親や家族と離れ、一人だけでの生活を強いられる患児にとって支えとなるのが看護師。入院後すぐは看護師や医者など大人の言うことを一切聞かない患児もいますが、コミュニケーションを図っていくにつれ、閉ざしていた心が開いていきます。
会話や遊びを通してコミュニケーションを図り、仲良くなれば、自然と入院生活に慣れ、積極的・社交的になるため、入院直後は邪険にされても、どんどんコミュニケーションを図ることが何より大切です。
2-2、遊びを通したコミュニケーション
患児とコミュニケーションをとる最も良い方法が“遊び”です。一緒に楽しく遊ぶことで、信頼関係が築けるだけでなく、効率的な治療や患児の健全な成長にも貢献します。一緒に遊ぶ場合には、大人の立場から世話をするのではなく、子供の立場に立って自ら楽しむことが、遊びを通すコミュニケーションの上で最も重要なポイントとなります。
■遊ぶことによる成長効果
子供は遊ぶことで様々なことを覚え、これは健全な成長にとって不可欠な要素となります。具体的には下記のような成長効果が期待できます。
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■遊びに際する看護ポイント
看護師は通常業務があるため、多くの時間を患児との遊びに費やすことができません。それゆえ、補佐的な役割で健全な遊びの支援をしていくことが、看護師にとっての小児看護のポイントとなります。以下に挙げる点を考慮しながら、補佐的に支援を行ってください。
①他の患児との交流
1人遊びももちろん有効ですが、同室の子供たちが一緒に遊べる環境は非常に大切です。一緒に遊ぶことで、言語能力だけでなく社交性や積極性の向上を図ることができ、何より大きな満足感を得ることができます。用いるおもちゃの選択や、他の患児との遊びへの誘導など、同室の子供たちが互いに楽しく遊べる環境を作ることで、患児は家族や看護師の直接的な援助がなくても充実した入院生活を送ることができます。 ②遊び道具の提案 小児は同じもので遊び続けると次第に飽きが来て、満足感を得ることができません。また、一人でいる時間を退屈せずに過ごせるよう、各患児が好むおもちゃを家族に提案する他、新たな趣味を見つけられるよう、また既存の趣味を伸ばしていけるよう援助してあげることが大切です。 ③危険因子の排除 病状によっては危ない行為、控えるべき行為が必ず存在します。看護師にとってその行為が分かっていても小児には分かりません。プレイルーム内であればまだ安心ですが、特に病室にいる間には、行動やおもちゃなど、病状を悪化させる危険因子を取り除かなければいけません。小児の事故は非常に多いため、危険となりうる可能性のある物(事)は、最大限に規制してください。 |
3、小児看護の専門看護師
小児看護専門看護師は、日本看護協会が認定している専門看護師11分野の中の1つで、指定の教育機関において単位を取得後、認定試験に合格した後に晴れて認定を受けることができます。つまり、高い看護実践能力を有する看護師のみが与えられる資格なのです。
■小児看護専門看護師の役割
日本看護協会では、専門看護師に6つの役割を求めています。小児看護の分野においては、次のようになります。
実践 | 小児やその家族、または集団に対して卓越した看護を提供する |
相談 | 看護職や母親など、ケアを行う人にコンサルテーションを行う |
調節 | 円滑にケアができるよう、小児・家族・医療機関・学校間のコーディネーションを行う |
倫理調節 | 小児や母親、家族など、その権利を守るために倫理的問題の解決に努める |
教育 | 小児看護に携わる看護職に対し、スキル向上のための教育・指導を行う |
研究 | 小児看護領域で専門的スキルを向上させるための研究活動を行う |
■求められる専門的能力
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■資格取得に際する条件
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■日看協が指定する教育機関
都道府県 | 教育機関名(大学院) | 単位数 |
北海道 | 札幌医科大学 | 26 |
札幌市立大学 | 26 | |
青森県 | 青森県立保健大学 | 26 |
岩手県 | 岩手県立大学 | 26 |
宮城県 | 東北大学 | 38 |
山形県 | 山形大学 | 26 |
福島県 | 福島県立医科大学 | 26 |
茨城県 | 茨城県立医療大学 | 26 |
栃木県 | 自治医科大学 | 38 |
埼玉県 | 埼玉県立大学 | 26 |
千葉県 | 千葉大学 | 26 |
順天堂大学 | 26 | |
東京都 | 聖路加国際大学 | 38 |
東京医科歯科大学 | 26 | |
東京女子医科大学 | 38 | |
日本赤十字看護大学 | 38 | |
首都大学東京 | 26 | |
神奈川県 | 北里大学 | 38 |
長野県 | 長野県看護大学 | 26 |
石川県 | 石川県立看護大学 | 38 |
岐阜県 | 岐阜県立看護大学 | 26 |
静岡県 | 聖隷クリストファー大学 | 26 |
愛知県 | 名古屋大学 | 26 |
藤田保健衛生大学 | 26 | |
日本赤十字豊田看護大学 | 26 | |
大阪府 | 大阪府立大学 | 38 |
大阪医科大学 | 38 | |
兵庫県 | 兵庫県立大学 | 38 |
神戸市看護大学 | 38 | |
広島県 | 日本赤十字広島看護大学 | 26 |
高知県 | 高知県立大学 | 38 |
福岡県 | 久留米大学 | 38 |
沖縄県 | 沖縄県立看護大学 | 38 |
■認定審査・試験
小児看護専門看護師の認定を受けるためには、上記の各教育機関にて単位を取得後に、第一次審査である書類審査、第二次審査である筆記試験に合格しなければいけません。
第一次審査(書類審査)
7月中旬の10日間に、WEB上で申請を行います。そして、大学院の履修単位や勤務証明書、推薦書など必要書類を7月下旬~9月頃までに日看協に提出し、規定の教育を受けているか、経験を有しているか審査が行われます。 第二次審査(筆記試験) 書類審査が通ると、10月の後半もしくは11月初めに筆記試験が行われます。筆記試験は、事例問題100点、総合問題100点から成る計200点満点のうち7割以上の正解率であれば合格になり、認定を受けることができます。 |
なお、第一次・第二次ともに審査日は各年によって異なるため、詳しくは日看協で確認してください。
4、日本小児看護学会
日本小児看護学会は、小児看護に関する「実践」「教育」「研究」の発展と向上に努め、それらを通して子供の健康増進に寄与することを目的として活動している団体です。
「実践者」「教育者」「研究者」から構成される会員が、小児看護の問題の改善に取り組み、その知識を社会に発信し、小児看護分野全体における貢献を果たしているため、小児看護分野において高みを目指したい、自らが発信者となって貢献したいという方は、ぜひ入会しましょう。
■事業活動
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■学術集会
日本小児看護学会では、毎年7月に、大規模な学術集会が行われます。講演、エキスパートパネル、テーマセッション、セミナーなど、小児看護に関して様々な知識を得ることができます。演者は会員の中から選出され、参加は誰でも可能であるため、日本小児看護学会に興味がある方は、一度参加されてみてはいかがでしょうか。
■入会方法
日本小児看護学会の会員になるためには、ある一定の条件をクリアしなければいけません。小児看護分野において、突飛した知識・経験を有していなければ会員になることができないため、少なからずハードルは高いと言えます。
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5、小児看護に関する書籍
ここまで小児看護に関して様々な事項を紹介してきましたが、より詳しい知識を得るためには、書籍を用いるのが効果的です。特に看護技術においては書籍を用いることで早く修得できるため、小児看護に不安があるという方は、ぜひ活用してください。以下に、お勧めの書籍をご紹介します。
■小児看護:総合
■小児看護:技術
■小児看護:学生用
まとめ
子供の心の変化を敏感に察知すると共に、健全に成長できる環境を整え、家族間の意義のある交流を支援することができれば、適切かつ効率的な小児看護ケアを行うことができます。小児看護は非常に難しく奥が深い領域ですが、人の役に立ちたいという想いがあれば、誰でも質の高いケアができます。
小児看護に関して不安があっても、常にどのように対処・支援していけば良いのか考えることで、必然とスキルアップしていくため、患児の健全な成長のために日々精進していきましょう。
1983年生まれ。宮城県石巻市出身。正看護師歴10年。看護短大を経て、仙台市立病院の小児科で勤務。その後、小児科での経験を生かし、保育園看護師として同市内の保育園に就職。現在は1児のママとして、育児の傍らWEBライター・ブロガーとして活動している。
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