ナースのヒント
いまさら聞けない!看護計画

白内障の看護計画|目薬や手術などの治療と症状別の観察項目(2017/07/17)

公開日: : 最終更新日:2022/03/10 看護計画 神奈川県 眼科 

早期であれば無症状ですが、進行すれば日常生活に支障をきたす白内障。加齢に伴い発症するケースが多いですが、全身疾患や薬剤性、外傷性など様々な原因で発症することも。眼の治療は患者にとって非常に不安の強いものであり、「手術をすると失明することもあるのだろうか。」「何時間も拘束されたりするのだろうか。」など間違った見解をしている患者もいるため、手術前の入念な説明は欠かせません。最近の治療では日帰り手術など体に負担の少ない治療も行われているため、眼科は入退院が激しく忙しい病棟です。短い入院期間でも安心して治療が受けられるよう、ここで白内障についてじっくり学びましょう!

1、白内障とは

白内障とは、生来透明である水晶体ににごりが生じ、視力・視機能の低下をきたす疾患です。ほとんどは加齢によるものですが、糖尿病アトピー性など全身疾患に関連するものや、外傷性・薬剤性、高度近視に伴うものもあります。先天性の白内障も存在します。たいていは白内障のみで失明することはないですが、先天性の白内障の場合、極度の弱視の原因となることがあります。

白内障の成因の詳しい分類は以下の表を参考にしてください。

 

①    先天白内障 特発性(原因不明)

遺伝性

胎内感染(風疹症候群など)

代謝疾患

他の眼先天異常に伴うもの

②    後天白内障 加齢性(老人性)、壮年・若年白内障

併発白内障(ぶどう膜炎、強度近視、網膜色素変性症など)

外傷性(打撲・穿孔、電撃白内障、放射線白内障)

薬物性(ステロイド、向精神薬など)

全身疾患に伴うもの(糖尿病、アトピー性皮膚炎、筋緊張性ジストロフィなど)

出典:眼科疾患ビジュアルブック|株式会社学研メディカル秀潤社(落合慈之、平形明人|150|2013年3月26日)

 

2、白内障の症状

軽度の白内障であれば無症状ですが、進行すると視力低下、単眼複視(片側で見た時にものがだぶる)、羞明(まぶしがり)、近視化が現れます。

 

3、白内障の検査

白内障の検査は、散瞳下で細隙灯検査を実施し、水晶体の混濁の部位、範囲、程度を観察し、さらに核硬度・皮質白内障・嚢下白内障に分類し評価します。各分類表は以下の通りです。

 

■混濁部位による分類

①    核硬化(NS:nuclear sclerosis)
②    皮質白内障(CC: cortical cataract)
③    嚢下白内障(SC: subcapsular cataract)

前嚢下白内障(ASC:anterior subcapsular cataract)

後嚢下白内障(PSC: posterior subcapsular cataract)

出典:眼科疾患ビジュアルブック|株式会社学研メディカル秀潤社(落合慈之、平形明人|151|2013年3月26日)

 

■核硬化の分類

グレード 硬さ 色調
0 核なし 核なし
1 soft 透明~やや白
2 semisoft 白~淡黄
3 medium 黄色(茶色は混ざっていない)
4 hard 琥珀色(茶色がかかった黄色)
5 rock hard 茶~黒

出典:水晶体画像解析装置(astamuse)

 

■皮質混濁の状態による分類

膨潤白内障(intumescent cataract) 皮質が水を含んで膨れた状態
成熟白内障(mature cataract) 全体に皮質混濁が進んだ状態
過熟白内障(hypermature cataract) さらに成熟度が進み皮質が液化した状態

出典:眼科疾患ビジュアルブック|株式会社学研メディカル秀潤社(落合慈之、平形明人|152|2013年3月26日)

 

4、白内障の治療

薬物療法には混濁を焼失させる効果はありません。無症状の場合は経過観察しますが、日常生活に不自由を感じるようであれば手術治療を検討します。手術の適応には、視力障害(患者の生活上の必要性から判断する)、眼の障害を引き起こすおそれのある過熟白内障(緑内障・ぶどう膜炎)、およびレンズ後部組織を治療あるいは検査する必要のある場合です。一般的には水晶体超音波乳化吸引術および眼内レンズ挿入を行います。この術式では、レンズを粉砕して吸引しやすくするため、超音波を使い粉砕(水晶体の乳化)を行います。必要な切開はわずか3mm程度なので、患者は通常翌日には退院できます。

出典:超音波水晶体乳化吸引術(もざわ眼科 日帰り白内障手術専門サイト)

 

進行した白内障や水晶体を支えるチン小帯が弱い場合では症例に応じて摘出術を行います。摘出には2つの方法があり、嚢内摘出法と嚢外摘出法があります。

 

■嚢内摘出法

レンズを取り巻く被嚢を含めてレンズ全体を摘出する方法です。上方角膜輪部において18~20mmの切開を行い、切開創からレンズ全体を摘出します。(同時に周辺虹彩切除術を行うことも。)レンズを鉗子または冷凍グローブを使って摘出していきます。

 

■嚢外摘出法

前嚢の一部とレンズ内容を摘出しって後嚢はそのままにしておく術式です。角膜輪部切開により、前嚢への接近がしやすくなります。前嚢を機械的に破り、レンズの核を摘出し、残ったレンズ皮質は洗浄し吸引して後嚢は定位に残します。レンズ後嚢は20歳ごろまで硝子体と癒着しているため、この方法は若者や児童に対して行われます。

出典:アイケア名古屋

5、白内障の看護計画

5-1、白内障形成に関連した感覚・知覚の変調

看護目標:白内障患者が視力の変化に適応する

 

■観察項目

・視力

・視力喪失に対処するのを助ける力が家族にあるか

・視力低下、単眼複視、羞明、近視化の有無

 

■ケア項目

・患者の視力測定

・患者の生活上の必要性を検討し、視力のかすみや周辺視野の減弱を補う方法を示す

・手術を行うか否かの決定を明確にするため、家庭や地域社会の安全性、必要な生活様式の変更、結果として起こる感情について患者家族と一緒に話し合う

 

5-2、手術を受けることに対しての不安

看護目標:不安が軽減される

 

■観察項目

・表情、言動

・睡眠時間

・手術に対してどのような不安があるか

 

■ケア項目

・患者と白内障手術について話し合う。もし間違った見解をしていれば訂正する

・元気づけ楽な気持ちにさせる

・視力やその他の全体的問題、手術に不都合な事柄、状況についての知識、利用できるサポートシステムを一緒に調べる

 

■指導項目

・必要に応じて、患者や家族に手術の方法や手順について、使われる器具、手術にかかる時間、処置の内容、術後に起こり得ることを注意深く説明する

 

5-3、身体外傷の潜在的状態

関連因子:術前措置の欠如

看護目標:安全や危険を認識し回避することができる

 

■ケア項目

・指示に従い術前与薬を行う(抗生物質の点眼または軟膏、散瞳薬または毛様筋麻痺薬の点眼、眼圧降下薬、麻酔前与薬)

 

■指導項目

・転倒を防ぐため、まためまいの予防のため、重い荷物を持ち上げたり、極度に緊張したり、かがみこんだりしないよう説明する

・術後に目をこすったり瞼を無理に閉じないよう説明する

・目を触らないよう、特に高齢者には眼鏡着用を促す

 

5-4、白内障手術に関連した術後合併症のリスク

看護目標:術後合併症を起こさない

 

■観察項目

・過剰の液体排出、出血の有無

・バイタルサイン

・痛みの程度

・日中の歩行の状態

・眼帯は正しい位置に装着できているか

 

■ケア項目

・ベッドの頭の位置を30度にギャッジアップする

・眼圧の増大が見られた時は直ちに医師に報告する

・突発的な体温上昇、眼痛の出現に気を付ける

・非手術眼の側を下にむけるようにする

・患者と話す際は非手術眼の方向から近づき話す

・手術当日ふらつきがある場合は歩行付き添い

・眼帯の装着介助実施(術後1日目、2日目)

・必要に応じ夜間は防御用眼帯を装着する

・指示に応じ術後与薬を行う(散瞳薬点眼、縮瞳薬点眼、抗生物質または副腎皮質ステロイド薬の点眼、術後吐き気があれば制吐薬)

 

■指導項目

・ものを見る時は十分に頭を回して見るよう説明する

・日中眩しさが気になるようであれば色の濃い眼鏡をかけても良いと説明する

・眼帯、目薬の使い方を説明する

 

まとめ

いかがでしたか。白内障の治療は局所的ですが、視力障害を抱えた患者は転倒リスクも高く、また無意識に目をこすってしまい術後合併症を引き起こしてしまったりと管理や指導が大変重要です。退院した後も目薬や眼帯の装着を正しく行えるよう、患者家族にわかりやすい説明を心掛け、事故や術後合併症の予防に努めましょう!

 

参考文献

眼科疾患ビジュアルブック|株式会社学研メディカル秀潤社(落合慈之、平形明人|149-152|2013年3月26日)

クリニカルナーシング15眼疾患患者の看護診断とケア(石川稔生、樋口康子、小峰光博、中木高夫|株式会社医学書院|87-98|1991年4月)

飯島由紀

1988年生まれ、神奈川県横浜市出身。総合病院での臨床経験8年。母が看護師ということもあり、幼少期から看護師に憧れを持つ。看護専門学校を卒業後、横浜市内の総合病院(耳鼻咽喉科)に就職。現在は同病院で働きながら、看護師としての経験を生かし、ライターとしても活動している。

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