エアウェイを用いた気道確保術|禁忌・注意点と正しい使い方(2016/05/23)
気道確保のために用いられるエアウェイ。速やかに気道確保を行うことができる優れた医療器具ですが、使い方を間違えればかえって気道の閉塞を促してしまうことがあるため、適切な方法で慎重に行わなければいけません。また、禁忌となる場合も多々あります。
臨床経験がない看護学生はもちろん、エアウェイを使用したことがある看護師の方も、この機会にしっかりとエアウェイについて学び、適切な方法で気道確保が行えるようにしておいてください。
1、エアウェイとは
エアウェイとは、舌根沈下や気道確保の時に用いられる筒状の医療器具で、ほとんどの医療施設では救急カートに常備されています。
エアウェイには口腔から挿入するもの(経口エアウェイ)と、鼻腔から挿入するもの(経鼻エアウェイ)の2種類があり、経口エアウェイは舌根沈下に対して、経鼻エアウェイは咽頭下部に気道を確保するために使用します。また、心肺蘇生に際する補助器具としても使用されています。
■経口エアウェイ
出典:経口/経鼻エアウェイ Smiths Medical
■経鼻エアウェイ
出典:経口/経鼻エアウェイ Smiths Medical
エアウェイを用いた手技は医師が行うのが通常ですが、看護師が行うことができる手技でもあり、緊急時の場合は看護師が行うことが多いため、エアウェイを用いた気道確保術はしっかり熟知しておきましょう。
2、エアウェイの禁忌と注意点
エアウェイは舌根沈下や気道確保において非常に有用な器具ですが、患者の状態によっては禁忌となる場合があります。また、エアウェイ挿入に伴う悪影響についても考えなければいけません。
■禁忌
経口エアウェイ | 経鼻エアウェイ |
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経口エアウェイにおいては、挿入に際して嘔吐や咽頭痙攣が誘発されることがありますので、咽頭反射が消失していない状態では経口エアウェイを行うことができません。挿入時に咽頭反射が消失している深昏睡患者でも意識回復時に咽頭反射が再出現するため、意識回復時には速やかに抜去してください。
また、開口できない場合や口周辺に外傷がある場合も挿入困難となるため禁忌となります。このような状態化にある患者には経鼻エアウェイを実施してください。
経鼻エアウェイにおいては、挿入に際して苦痛により血圧の上昇がみられますので、項部硬直や脳出血が疑われる所見では実施できません。また、頭蓋内の損傷を引き起こす可能性もあるため、髄液漏れがみられる頭蓋底骨折や顔面骨骨折の患者にも実施できません。さらに、鼻出血を伴う患者に対してもさらなる出血を助長させてしまう可能性があるため禁忌となります。
経口・経鼻エアウェイともに禁忌となり実施できない場合や、十分に気道が確保されない場合には気管挿管を行ってください。気管挿管(気管切開)の詳細は、「気管切開の手術・交換手順、安楽のための観察・看護ケア」をご覧ください。
■注意点
経口エアウェイ | 経鼻エアウェイ |
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経口エアウェイは、咽頭反射が消失している深昏睡患者が適応となりますが、意識回復時に咽頭反射が再出現するため速やかに抜去してください。また、不適切なサイズのものを使用したり不適切な場所に挿入すると、気道閉塞の恐れがあります。適切なサイズのものを使用し適切な手技で挿入するようにしてください。
経鼻エアウェイは、咽頭反射がある場合でも実施可能ですが、咽頭反射が強い場合には中止し、気管挿管を行ってください。また、挿入に際して鼻出血を伴うことがあります。これは鼻腔内の粘膜や皮膚の損傷に伴って起こり、不適切なサイズのものを用いると気道閉塞の危険もあるため、適切なサイズのものを使用し適切な操作で挿入するようにしてください。
3、エアウェイの手技
エアウェイ挿入の手技は、経口・経鼻ともに難しいものでありません。ただし、咽頭反射が再出現することや不適切な挿入により出血を伴うということを考慮し、慎重に行う必要があります。
また、不適切なサイズのエアウェイを用いると閉塞を起こす可能性があります。必ず適切なサイズを確認した後に実施するようにしてください。
■経口エアウェイ
出典:気道に対する処置 メディカ出版
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■経鼻エアウェイ
出典:気道に対する処置 メディカ出版
(左の鼻孔から挿入する場合は、180°回転させた状態で挿入し、咽頭後壁で回転させて舌根を超える位置まで挿入する) |
経鼻エアウェイにおいて、利き手が右の人が多いことから通常は操作のしやすい右の鼻孔に挿入しますが、左の鼻孔に挿入することも可能です。ただし、操作がやや異なるため注意してください。
まとめ
エアウェイは舌根沈下や気道確保に非常に有用な医療器具で、手技自体もそれほど難しいものではなく、看護師でも速やかに行うことができます。
しかしながら、禁忌となる患者に対して実施したり、操作を間違うとかえって気道閉塞など症状の悪化を招いてしまいます。
使用頻度が多いだけに、当ページで記述した禁忌や操作方法は必ずしっかり覚えておき、臨床で安全かつ迅速に行えるようにしておいてください。
京都府出身、大阪府在住。大阪府内の一般病院で呼吸器科に8年間就業の後、現在はフリーの看護師として、さまざまな医療現場で働きながら、看護分野に関する取材や執筆活動を精力的に行っている。座右の銘は「健康第一」。過酷な看護業務に耐えうるため、また患者に対する献身的な看護を実施するため、自身の健康も必要と考え、2012年からマラソンを始める。現在では各地のイベントや大会に参加するなど、活躍の場は看護のみにとどまらない。
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