音楽と保育|音楽の役割と保育園での音楽遊びの活動とその指導案(2017/05/26)
保育をしていく中で、重要な役割をしているのが「音楽」です。保育を楽しくするだけでなく、子どもの創造力や表現力を育むことにもつながっていきます。実際の保育の現場では、一体どのように音楽がとり入れられているのか、また音楽の役割とはどのようなものなのかをこちらでご紹介します。
目次
1、保育園での「音楽」
保育所保育指針の保育の原理には、様々な体験を通して、豊かな感性を育て、創造性の芽生えを培うこと。とあり、保育園の活動であらゆることを感じ、体験していくことが子どもの成長に欠かせないものだということがわかります。保育園で感じる「音楽」もその中の一つです。さまざまな場面でさまざまな音楽を感じることで、子どもの感性は豊かになります。
1-1、保育園での音楽における指導案での配慮
では、実際に保育活動の中では、どのように音楽をとり入れているのでしょうか。ここでは、3歳児クラスを例にして指導案をチェックしてみましょう。
保育所保育指針の3歳児の「表現」には、
音楽に親しみ、聞いたり、歌ったり、体を動かしたり、簡単なリズム楽器を鳴らしたりして楽しむ。絵本や童話などに親しみ、興味を持ったことを保育士と一緒に言ったり、歌ったりなど様々に表現して遊ぶ。
という内容が記されています。これまでは、保育士が提供するうたやダンスを楽しむ活動が多かったのに対し、3歳児になると音楽を感じ自発的な表現をするようになっていくのです。表現力が豊かになる3歳児以降の保育の指導案を考えるとき、配慮したいのは子どもが自身で表現する猶予を与えること。持田京子、金子智栄子氏による「子どもの創造的音楽表現に及ぼす保育者の影響」では、
保育者は様々な場面において子どもの音楽的な発達を願い,環境を提供する努力をしているが,場面によっては子どもが保育者の言動に注目するため,その表現が中断されていた.子どもが遊びの中で表す創造的音楽表現が,保育者の存在によって損なわれるという仮説が支持されたといえる。
とあり、保育者の働きかけが子どもの表現を中断してしまうことがあると伝えています。その後、
今後,保育現場における子どもの音楽表現に対するかかわり方が,教授や能力の視点だけではなく,「保育者が子どもの音楽表現を制約し,妨げる可能性」といった視点をもつことが重要であることがわかった。
ともあり、保育士が介入しすぎることへの警告をしています。そもそも、音楽あそびの活動は子どもの表現力を育む手段です。うたやダンスなどの音楽あそびを指導案として考える際には、このようなことも配慮する必要がありそうです。
1-2、保育園での音楽の役割とは
前にも述べているように、音楽を感じることによって子どもの創造力や表現力が豊かに育っていきます。また、音楽の役割は「音」だけのものではなく、あらゆる表現にもつながっていきます。登啓子氏の「保育における音楽表現活動の検討」には、
基礎的な音楽とは決して音楽単独であるものでなく、「音楽」「動き」「ことば」の統合されたものと捉えられ誰もが参加できる音楽である。
とあり、子どもにとって音楽はさまざまな成長につながっていくといいます。音楽の役割とは単純なものではなく、成長過程に複雑に絡んでいるのかもしれません。保育士は、その役割を踏まえたうえでの保育計画を心がけていく必要があります。
2、保育園での音楽遊び・活動
保育園での音楽あそびは無限に広がり、保育士や子どもによってもその広がりは異なっていきます。保育士が子どもの表現に介入しすぎないよう配慮しながら、どういった音楽遊びを保育にとり入れていけばよいのでしょうか。ここで、少し考えてみましょう。
2-1、音の表現遊び
保育士が弾くピアノの音色に合わせて、子どもたちはその雰囲気を身体で表現していく遊びです。たとえば、弾むような楽しい曲が流れているときはスキップしたり跳ねたりし、反対に暗い悲しい曲が流れたら寝転がったりするといった内容です。このとき、保育士は子どもに動きの指示をしません。あくまで、子どもが感じとったものを大切にして、子どもの表現を見守ってみましょう。竹村壽美子氏の「保育における表現の問題」に
子どもの心を動かし、子どもたちに様々なことを感じさせ、考えさせる。このように表現の発端にかかわって作用するような環境がまず考慮されねばならない。
とあります。子どもがさまざまな音を感じられるよう、保育士の音の表現も豊かにしましょう。
2-2、リトミック
音遊びの延長型として「リトミック」があります。中山寛子氏の「リトミックに関する研究 Ⅰ」には、
リトミック(rythmique)はフランス語であり、その語源はラテン語の快いリズム、律動的な運動という意味合いをもつと言われている。
とあり、音の表現とともに身体の運動につながる遊びであることがわかります。音楽やリズムに合わせて手拍子をしたり足を鳴らしたりと、身体での表現を楽しんでみましょう。動きに慣れてきたら、その内容をどんどん発展していくと、子どもたちをさらに引きつけていくことにつながるでしょう。
2-3、楽器遊び
保育環境において、音楽活動が保育士主導になりすぎていることも心配されています。久富さよ子氏の「幼稚園・保育所における楽器あそびとその問題点」では、
保育者は保育効果をあげるためにかなりの部分をピアノに頼っており、保育はピアノを中心とした、一斉指導の形態をとっているようで、幼児の個性や自主性を尊重した指導が忘れられているように思われる。
とあり、保育での音楽=保育士が弾くピアノになりすぎていることを示しています。たしかに、子どもが自ら自由に楽器を演奏するような機会が少ないかもしれません。合奏の時間のみでなく自由遊びの時間にも、鍵盤ハーモニカや太鼓、木琴や鉄琴などで音を楽しめる環境をつくることも重要になります。ただし、そうするためにも、まずは子どもに正しい使い方を伝えておくことも大切です。子どもが楽器に触れる楽しさを味わえるように工夫してみましょう。
3、保育園での音楽に活用できる教材
「保育に音楽をとり入れるために、まず何をしたらいいのかわからない。」という保育士も多いはずです。そのようなときは、さまざまな教材に目を通してみるのも一つの手です。教材をそのまま使うのではなく、自分なりにアレンジすれば、クラスの子どもたちに合った楽しみ方ができるでしょう。ここでは、音楽教材を多数提供している「乳幼児教育研究所」からいくつかご紹介しましょう。
3-1、0~2歳には「ふれあい遊び」を中心に
出典:0・1・2歳児のうたあそび でこやまでこちゃん|乳幼児教育研究所
幼い子どもは、大人のまねっこを楽しむ時期です。音楽に合わせて保育士や保護者と一緒に手をつないだり手を叩いたりしてふれあい遊びを楽しみます。こちらには言葉を促す曲も収録されているので、言葉がではじめる時期にも使えそうです。
3-2、運動会でも楽しめる「ダンス音楽」
出典:にこにこうたあそび|乳幼児教育研究所
身体の動きが豊かになると、音楽に合わせてダンスを楽しむようになってきます。そのような子どもには、リズムのよい音楽を使ってダンス遊びをしてあげましょう。おすすめの振り付けや体操が解説されていますが、子どもたちに自由に踊らせてみるのもよいでしょう。曲を上手に保育にとり入れて、身体をいっぱい動かしましょう。
3-3、「オペレッタ」で歌と演技を体験する
出典:劇とオペレッタ|乳幼児教育研究所
年中や年長クラスになると、歌での表現や気持ちの表現が上手になり、「演じる」ことにもチャレンジできます。オペレッタは、ミュージカルのような演劇方法。音楽や歌に合わせてストーリーを展開していきます。子どもたちと表現方法を考えながら、日常の劇あそびにはもちろん、発表会などにもとり入れてみましょう。
まとめ
子どもの成長過程で重要な役割をしている「音楽」。ただ音を楽しむ存在なのではなく、子どものあらゆる発達につながっていきます。保育士は、子どもが豊かに表現を楽しめるような環境づくりを心がけ、毎日の保育に音楽をどんどんとり入れていきましょう。
参考文献
子どもの創造的音楽表現に及ぼす保育者の影響 (持田京子・金子智栄子|2008)
「保育における音楽表現活動の検討」(登啓子)
「保育における表現の問題」(竹村壽美子|2007)
「リトミックに関する研究 Ⅰ」(中山寛子|)
「幼稚園・保育所における楽器あそびとその問題点」(久富さよ子|1980)
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