保育園の食育のねらい|指導案と遊び、教材としてのペープサート(2017/04/03)
食育とは食を営む力を育む事です。食べる事は生きる事につながっているという考えの元、ただ出されたものを義務的に食べるのではなく、その食べ物がどう作られているのか、どう調理されているのかを知る事で、食べる事の楽しさを教えようという目的の元、全国各地の保育園で積極的に取り入れられています。
目次
1、保育園で食育を取り入れるねらいとは?
保育園の食育の取り入れ方は多種多様です。野菜を育てて収穫してそれをみんなで食べる活動を行う、保育園の調理室とホールが対面式のガラス張りになっていて調理の様子を子ども達が観察出来るような工夫をしているところもあります。子どもの中には当然好き嫌いがあり、特に野菜を嫌いな子どもは多いのですが、自分達で育てて収穫した野菜をみんなで食べる時、嫌いな野菜でも友達がおいしそうに食べていたら、「自分も食べてみようかな。」という気持ちになるでしょう。
また、生産までの過程や調理する過程を見せる活動を積極的に取り入れる事で、食材の生産に関わっている人や配送してくれる人、調理をしている人たちに感謝の気持ちを持つことが出来ると言われています。
1-1、保育園での食育指導案
こちらの資料をご覧になってみてください(幼児教育・保育にとっての野菜栽培活動)
「食育=指導」ではない事がおわかりになるのではないでしょうか。この指導案が示しているように食育は保育士が一方的に教え込んで子どもはただ覚えるだけではありません。あくまでも自然に保育の中に取り入れられています。最初は食材をよく見る、においを嗅ぐ、かじってみるところから始まり、料理の仕方や三大栄養素を知るところまで発展しています。よく見るとデコボコしている、細い根が生えている、かじってみると甘いなど、写真やイラストではなく、実際にそれらを手にしなくてはわからない事は多いです。保育の中に食材を触る活動を取り入れる事で子ども達も抵抗を感じる事なく食べ物に興味を持つようになるでしょう。
2、保育園でも取り入れやすい食育「クッキング」
クッキングは多くの保育園で取り入れている食育です。家庭菜園で野菜などを栽培している保育園では特におすすめしたい活動と言えるのではないでしょうか。自分たちの育てた野菜や果物でおいしい料理に変身するとなると、子どももいつも以上に食欲が増すようです。調理員がおいしく料理するのも良いですが子どもが出来る部分は子どもに作業させてみるのも良いでしょう。
ピーラーを使って皮をむく、包丁で野菜を切る、野菜を洗う、などの工程は子どもでも出来ます。もちろん保育士のサポートは必要となるのですが、少しの手伝いでも「自分が作った」という誇らしい気持ちになるはずです。食事の時間も「これは私が切った野菜かも。」「これは僕がむいたじゃがいもだ。」等会話も弾み楽しく食べる事が出来ます。
もちろん年齢によっては難しいケースがあるのですが、学年が下のクラスでも取り入れやすい、また実際に取り入れられているクッキングメニューをご紹介したいと思います。
2-1、簡単だけど楽しい「サンドイッチ」
包丁を使うのが難しいクラスや、初めてクッキングに挑戦する時におすすめしたいメニューがサンドイッチです。サンドイッチの中身は基本的に本格的な調理を必要としません。しかし具材を多く用意すれば楽しいパーティ気分を味わえます。野菜の栽培を行っている保育園ではキュウリやトマトを収穫できた時におすすめです。子どもが担当するのはゆでたまごの殻をむいたり、たまごをつぶしたり、調味料を入れて混ぜたりと、比較的安全に行う事が出来ます。パンを切ったり、きゅうりを切ったりは年長クラスにお願いしても良いですし、保育士が手を添えて子どもと一緒に切っても出来ます。
出来上がった具材はテーブルに並べ、子どもは自分の好きな具材を挟んで食べます。具材の並べ方も子どもの個性が反映されますし、楽しい昼食タイムとなる事でしょう。
2-2、みんな大好き「カレーライス」
じゃがいも、にんじんが収穫できた時はカレーライスをおすすめします。こちらは本格的な調理を必要としますので、クッキングに慣れてからの方が良いかも知れませんね。野菜を切る時の触感はもちろん、お肉を切る時の触感、玉ねぎを切る時に目が痛くなる事や玉ねぎを炒める時の匂いなど、一つのメニューからたくさんの刺激を受ける事となるでしょう。また、クッキングに移る前に絵本やパネルシアター等で作り方を確認しておくと良いですね。またこちらは包丁で野菜を切ったりもしますので、包丁の持ち方や野菜の押さえ方など事前に確認しておく事も大切です。
3、遊びの一環として保育の中に食育を取り入れる
実際に野菜や果物を使って遊ぶのはマナー違反です。「食べ物で遊ばない」というルールの元、食育を取り入れた遊びにはどんなものがあるのかご紹介したいと思います。
3-1、食育遊びの新定番「食育カルタ」
食育を使った遊びとして定番になりつつある「食育カルタ」をご存じですか?まずは食育カルタについてご説明します。
食育カルタは、子どもたちが遊びを通じて食への関心を高め、興味を持って楽しく食と接するために、また、食育や食文化を学ぶことができるものとして、各都道府県などの自治体や、農政局、食育を推進する団体などで作成されています。カルタには、栄養や健康に関することだけでなく、食事のマナーやその地域の食文化を反映する食べ方や料理、特産物など、「食」に関するさまざまな要素が盛り込まれています。遊びながら楽しく「食」について学べるツールとして、保育所や学校、幼稚園などで幅広く活用されています。
引用:実践食育ナビ
あくまでも「カルタ」ですので、子ども達は抵抗なく栄養や健康、自分達が住んでいる場所の特産物等、食に対する様々な事を学べます。自治体によっては方言も加わってより身近に感じる事が出来るよう工夫がされているものもあるようです。
3-2、おままごと・お店屋さんごっこを通じた食育
おままごと用のおもちゃの野菜や果物を使ってお店屋さんごっこをします。ただ、通常のお店屋さんごっこと違うのは「にんじんをください。」「どうぞ。」と言ったやりとりではなく、子どもにお客さんが求めているものを考えさせる内容です。具体的には「疲れているので元気になれる野菜を下さい。」や、「カレーライスを作るので必要なものをください。」といったやりとりです。子どもはお客さんの要求を受け、何が必要なのかを考える事が出来ます。
おままごとがなくても、イラストを描いたカードを用意しても良いですね。そのカードの裏に「どんな栄養があるか」を書いておくと、遊びを通じて食べ物の事を学ぶ事が出来ます。
4、食育に使える保育教材
食育を学ぶきっかけにつなげる事が出来る教材をご紹介します。どれも子ども達が親しみやすく楽しく学べる工夫がされているものですので、ぜひ取り入れてみてはいかがでしょうか。
出典:たべるってたのしい!げんきいっぱいあさごはんのじゅつ(少年写真新聞社|2016/11/16)
まずは絵本で食育です。かわいらしいイラストですが、中身はどの食べ物にどんな栄養があるか、バランスのとれた食事について子どもにもわかりやすく伝えられる内容となっています。
出典:食育エプロンげんきいっぱい健康エプロン(株式会社メイト)
こちらはかわいらしいキャラクターのあっちゃんが主役のエプロンシアターです。いつもおかずばかり食べてご飯を残してしまうあっちゃんを演じながら、バランスよく食べる事の大切さに加え、食事のルールを教えるのにも一役買ってくれるアイテムです。このエプロンシアターは食育だけではなく、マスクの使い方や手洗い指導など3つのお話が出来るようになっています。子ども達が夢中になるエプロンシアターを使うと、食事について楽しく学ぶ事が出来るはずです。
5、ペープサートで食育保育を取り入れる
ペープサートとは割りばしなどの細い棒にイラストを貼りつけたものです。予算も手間もそれほどかからず、比較的取り入れやすいのではないでしょうか。野菜のイラストを描いて、料理が出来るまでの過程を教えたり、どの野菜にどんな栄養があるかを教えたりするにはうってつけのアイテムです。本格的な食育の前に、保育の中に取り入れやすいペープサートを用いて気軽に「食について考える時間」を与えてあげましょう。
まとめ
食育と聞くと難しい印象を持ってしまいますが、食育の基本は身近な野菜や果物に触れ、生産の過程や調理の過程を知る事、携わった人たちに感謝の気持ちを持って楽しく食べる事が大切です。言葉だけではなく実際に見たり触ったりさせる事を意識しながら保育の中に取り入れましょう。ご紹介したように導入として遊びの中に少しずつ食育を取り入れていくと子どもの興味や関心が向きやすくなりますので、子どもが食に対し積極的に学べる工夫をした保育が求められているようです。
参考文献
幼児教育・保育にとっての野菜栽培活動(北海道文教大学人間科学部子ども発達学科 講師 古郡曜子|2013/5)
実践食育ナビ(農林水産省)
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