DPC制度とは?わかりやすく簡単に解説!3つの視点からメリットも(2021/01/27)
「DPC制度」という言葉をよく耳にしますよね。でも、「DPC制度とはどんな制度なのかよくわからない。病院に関係する用語ということはわかるけれど、詳しくは知らない」と思っている人も多いと思います。また、「DPC制度って難しそう」と思っている人もいますよね。
そんなあなたのために、DPC制度とはどんな制度かをわかりやすく簡単に解説していきます。また、DPC制度のメリットを患者側・国側・病院側の3つの視点から説明していきます。
これを読めば、あなたもDPC制度を理解できるようになるはずです。
1、DPC制度とは
DPC制度とは、急性期入院医療を対象とする診断群分類に基づく1日当たりの包括払い制度のことです。診療の標準化・透明化、さらに診療の質を向上させるためにDPC制度は導入されました。
DPC制度はDPC/PDPS(Diagnosis Procedure Combination / Per-Diem Payment System)と表記されることもあります。
そもそも、「DPC(Diagnosis Procedure Combination)」とは診断分類群を意味します。
診断分類群をわかりやすく言うと、「診断と処置(手術や検査など)を組み合わせたもの」です。DPCは日本独自の分類で、まずは傷病名から分類し、次に手術や検査、処置などの診療行為などの有無に応じて分類するというシステムになっています。
引用:迫井正深「DPCはいかに誕生したか―DRGとDPCの違い―」厚生労働省老健局老人保健課 保健医療科学2014年63巻6号
令和2年4月の時点で、厚生労働省が定めた傷病名数は18、診断群分類数は45571)となっています。
DPC制度は疾患や症状、治療などから診断群分類(DPC)に基づいて、在院日数に応じた1日当たりの定額医療費を算定する制度で、急性期入院医療を対象にしています。
包括評価の対象になるのは、入院基本料・検査(画像診断)・投薬・注射などです。手術やリハビリなどは出来高払いになります。
また、診断分類ごとに特定入院期間が定められていて、その入院期間を超えると、その日から出来高払いでの計算となります。
1ー1、DPC対象病院
DPC制度を導入している病院は、DPC対象病院と呼ばれます。DPC制度はすべての病院で導入されているわけではありません。DPC制度は急性期の入院医療が対象です。そして、DPC対象病院になるためには、次の基準をすべて満たす必要があります。
・急性期一般入院基本料、特定機能病院等の7対1・10対1入院基本料の届出
・A207診療録管理体制加算の届出
・以下の調査に適切に参加
⋆当該病院を退院した患者の病態や実施した医療行為の内容等について毎年実施される調査「退院患者調査」
*中央社会保険医療協議会の要請に基づき、退院患者調査を補完することを目的として随時実施される調査「特別調査」
・調査期間1月あたりのデータ病床比が0.875以上
・適切なコーディングに関する委員会を年4回以上開催
引用:平成30年度診療報酬改定の概要 DPC/PDPS 厚生労働省保険局医療課 平成30年3月5日版
令和2年4月時点で、DPC対象病院は1757病院、DPC算定病床数は483,180床2)となっています。
DPC対象病院になるためには、このDPC対象病院の基準を満たすだけでなく、過去2年間にDPC準備病院の基準をすべて満たしていなければいけません。DPC準備病院を2年間経て、ようやくDPC対象病院になれるというわけです。
2、DPC制度をわかりやすく解説
DPC制度の説明をしてきましたが、「いまいちよくわからない」という人もいると思います。確かに、厚生労働省の説明文はちょっと難しいですね。では、DPC制度をもっとわかりやすく、簡単にかみ砕いて説明していきましょう。
DPC制度が導入される前は、医療費の算定は出来高方式でした。出来高方式とは、診療行為1つ1つを積み上げて計算する制度です。
出来高方式では、簡単に言うと、薬を使えば使うほど医療費は高くなる。検査をすればするほど医療費は高くなるというものでした。
それに対し、DPC制度は手術・リハビリ・内視鏡検査などの出来高方式のままのものを除き、診断群分類ごとに1日当たりの医療費が既に決められています。どんなに薬を使おうと、どんなに検査をやろうと、1日当たりの医療費は既に決められているというわけですね。
また、入院期間に関しても診断群分類ごとに決められていて、その日数を超えると、入院費はどんどん下がっていってしまいます。
DPC制度が少しわかってきたでしょうか?
ここで、もう一度わかりやすくDPC制度についてまとめましょう。
・DPC制度は定額式の医療費算定システム
・病名に応じて1日当たりの医療費は決められている
・どんなに投薬や検査をしても医療費は変わらない
・入院期間が長引くと医療費は下がる
・全部が定額ではなく、手術やリハビリ等は出来高方式
これがDPC制度ですね。
だから、DPC制度を導入しているDPC対象病院では、無駄な投薬や検査はしないし、入院期間もできるだけ短くしようとします。
近年はどんどん在院日数が短くなっていますが、これは低侵襲の治療のおかげということもありますが、DPC制度が導入され、在院日数が長くなると病院の報酬が少なくなるという事情もあるのです。
3、DPC制度のメリット
DPC制度のメリットを見ていきましょう。DPC制度のメリットが分かると、DPC制度への理解がさらに深まります。
DPC制度を3つの視点から確認していきます。
DPC制度は患者にも病院にも国にもメリットがある制度なのです。
■患者のメリット
患者にとってのDPC制度のメリットは、医療費が安くなることです。出来高方式の時は薬や検査が多くなると、医療費もそれに伴って高くなっていました。しかし、DPC制度は1日当たりの医療費が定額制ですから、たとえ治療過程で薬が多くなったとしても、患者が支払う医療費は変わらないのです。
また、そのような病院は実際にはないと思いますが、少しでも利益を増やすために、無駄な薬を使われ、不必要な検査を受けさせられたり、入院を長引かせてなかなか退院させないような悪徳病院に引っかかる心配もありません。
また、DPC制度によって、DPC対象病院ではどこでも一定の質の医療・標準的な医療を受けられるというメリットもあります。
■病院側のメリット
DPC制度の病院側のメリットは、医療の質を一定に保つことができることです。DPC制度によって、医療の標準化・効率化を進めることができます。
また、現在はDPC制度を導入することによって、病院側の診療報酬が多くなるというメリットもあります。
DPC対象病院にならなければ、DPC制度を導入する必要はなく、出来高方式のままで医療費を算出することができます。
現在の厚生労働省の診療報酬の制度だと、急性期病院は出来高方式ではなく、DPC制度を導入した方が利益が多くなるようになっています。
だから、急性期病院は厳しい要件をクリアして、DPC対象病院になっているのです。
■国(厚生労働省)側のメリット
DPC制度は国にとってもメリットがあります。
日本では国民皆保険制度があり、医療費の7割は健康保険によって支払われていて、自己負担は3割で済んでいます。
現在は国民の高齢化に伴い、医療費の増大が社会問題になっています。
DPC制度は1日の医療費が決められていて、病院が無駄な検査・投薬を控え、最小限で効果的な治療方法を選ぶため、医療費の抑制につながります。
医療費が抑制されれば、国民皆保険制度を維持しやすくなるし、健康保険料を値上げしなくて済むということです。
まとめ
DPC制度とはどんな制度なのかをわかりやすく簡単に説明しました。DPC制度について、理解することができたでしょうか?DPC制度は日本の医療制度をの重要なポイントになる制度です。看護師はあまりDPC制度に関わることはありませんが、基本的なことはきちんと理解しておくようにしたいですね。
参考文献
DPC対象病院・準備病院の規模(令和2年4月1日)見込み|厚生労働省
迫井正深「DPCはいかに誕生したか―DRGとDPCの違い―」厚生労働省老健局老人保健課 保健医療科学2014年63巻6号
DPCとは 津島市民病院
東京都在住、正看護師。自身が幼少期にアトピー体質だったこともあり、看護学生の頃から皮膚科への就職を熱願。看護学校を経て、看護師国家資格取得後に都内の皮膚科クリニックへ就職。ネット上に間違った情報が散見することに疑問を感じ、現在は同クリニックで働きながら、正しい情報を広めるべく、ライターとしても活動している。
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