グリーフケアの看護計画|看護師の役割とカウンセリング(2017/03/27)
グリーフケアを行うことで患者が正しい道に進めるよう案内することが大切です。病的悲嘆になってしまうことで社会的な損失を被り、人間関係にも悪影響を及ぼす可能性があります。グリーフケアを行うことは、患者さんや家族、友人にとって悲嘆から立ち直るための手助けをする上で必要な知識と技術になるのです。グリーフワークを歩めるように手助けするのがグリーフケアです。
1、グリーフケアとは
グリーフとは、「悲嘆」のことです。大きな喪失や絶望感を受け、悲嘆に陥る状態を正常な感情表現ができるように促すケアをグリーフケアといいます。
1-1、悲嘆のプロセスは
思慕と空虚:亡くなった人を思い起こし・愛しい・恋しい思いに占有される状態です。
日本人特有でこの期間が長くなる傾向があります。
・疎外感:人とは、違うと思い込み、気後れした感覚の状態
・うつ的不調:何もやる気がしない。他に興味が持てないなどうつにそっくりな状態 ・適応・対処の努力:自分を奮い立たせようとする状態 |
と定義されています。この経過をたどるように看護師は導いていかないといけません。
2、グリーフケア~看護師の役割~
グリーフケアは、看護師の役割が重要になってきます。病気や人の生死に携わる仕事だからこそ、グリーフケアを行うことは、患者さんや周りの人の心を癒やす立場として必要な技術です。
病院やクリニックでは、がんが見つかる事もあります。本人や家族に告知する場面も多く経験する立場となります。その時に、しっかりと受け止めてグリーフワークができるかを気に掛ける必要があります。場面に沿ったケアしていくことが大切なことです。これから始まる治療や緩和に対してコンプライアンを上げるためにも病的悲嘆を通らせないことが必要となります。
3、グリーフケア~プロセスに沿った看護計画~
■思慕と空虚
なくなった故人や大きなショックに向かいあう為の促しが必要だが、無理強いしてまでこのプロセスに取り込む必要はないです。社会的逸脱が起きないように注意が必要です。
この期間は、冷静に見えることがありますが受け止めることができず感情表現ができない時期でもあるので感情表現ができるようにする場が大切です。看護師は、周りの家族や友人から病院やクリニックでは分からない生活背景を情報収集していく必要があります。
■疎外感
大きな出来事が起きているのを自分だけと思い込んでしまいます。これが強くなりすぎると社会から遮断された生活を送ることがあります。感情表現が定まらない時期でもあり、このショックを他人の責任にしたり、泣き崩れたり、落ち込んだりと感情が変化していきます。この時、泣くということが重要な感情表現となります。
ここまでのプロセスの期間は、だいたい1~2週間くらいになります
■うつ的不調
疎外感の後に訪れるのがうつ的不調です。これは、個人差が大きなところになります。症状も多種多様です。頭痛や倦怠感、吐き気、不眠など様々な症状がでます。
ショックが起きる前に何かできる事がないか、自分がこの原因を作ったのではないかなどの、自責感に襲われるのです。この考えを否定するのではなく、このような考えを持ってしまうのは、自然な事だと伝える事が大切なことです。ここでの感情は、時間とともに薄れていきます。しっかりと、傾聴し感情や行動を認めることです。側にいて、肩に手を置いたり手を握ったりとボディタッチだけでも、不安やショックを分かち合う姿勢を見せることで感情を和らげることができます。また、対症療法を行いつつ時間をかけていきます。
■適応・対処の努力
大きな出来事に対して受け入れはじめ、この状況のままではいけないと感じて新たな一歩を踏み出そうとしています。この時に、しっかりとした傾聴や同じ出来事があった方とのグループミーティング、同経験を伝えていき、一人ではないということを認識させてどういう風に乗り越えていけばいいのかを考えさせることが必要です。この最終段階までのプロセスは、配偶者の死別の場合で1~2年、子供の死別の場合は2~5年ほどと言われています。
4、グリーフケアカウンセリング
グリーフケアカウンセリングとは、グリーフケアを行う人の中でも知識を多く持ち、グリーフケアを熟知した上でカウンセリングの専門性を持つレベルの方が、グリーフケアの対象者にカウンセリングをしていきます。
しかしながら、グリーフケアカウンセラーの資格は現在ありません。少数の学校にてカウンセラーになるための講義を開いています。現在のところ、医療関係者や葬儀屋、カウンセラーの講義を受けた方、心理学カウンセラーや産業カウンセラーの資格などを持つ人が行っているのが現状です。
カウンセリングでは、確実にプロセス通りにいくわけではありません。カウンセラーはグループ療法を用いて感情表現と開放のほか死生観を分かち合い、言い残したこと、やり残した事を認識させる場をつくります。また、個人との生活を振り返り、ライフレビューをしていくことで、故人と関わりあい、思い出や思慕の整理などを意図的に行えるようにプログラムが必要です。
4-1、実際の現場
急性期病院では、運ばれて亡くなるまでに数時間や数日というのはよくあることです。死に目に家族が間に合わない場合もあります。そして、退院までは亡くなってからまた数時間から数日といったようにとても早いです。このような時間でもグリーフケアは行う事はできます。まず、思慕と空虚を看護師が分かち合うことです。どのような死に際に会ったのか、事故で汚れた体をキレイに見せるため、化粧や清拭、シャワーなどを行った後の故人を見せることです。そうすることで現実を受け入れる時間が非常に短縮され、グリーフワークが進みやすくなります。
他にも、NICUなど生まれて間もない状態の場合は、普段から写真をとっていることはほとんどありません。緊迫状態が常にあるためです。このような時にどのような状態をNICUで過ごしていたのかを写真に残すことで、小さい子どもへの思慕と空虚の状況を分かち合うことができます。
これはほんの数例にしかありません。病院や地域によって故人を大切にするやり方があります。故人を尊重することで家族にも伝わることでしょう。
■緩和病棟
終末期を迎える方が訪れる所として作られています。このような場所に来るときには、うつ的不調や適応・対処の努力の状態で来ることが多いです。このような最終段階の場合には、精神的サポートが非常に必要となります。徐々に死期が迫る中で体の不調が出てきて、その事に関しての対処療法がなされて生活していきます。そのような病棟や病院では、外出やレクリエーションが多い、景観がいい、スタッフとの距離が近いなど、多くの関わりが持てるように工夫がこなされ精神的なサポートがなされています。また、体の不調にも対処できるように医師との連携もしっかりとされています。
まとめ
グリーフケアは、大きな衝撃とともにくる悲しみを乗り越えるように励まし、寄り添うことで、グリーフワークをこなせるように見守り、手助けするのを目的としています。それぞれの段階によって、声のかけ方や相手との距離の取り方などは変化していきます。それが寄り添う時の距離にもなります。グリーフワークは短くても1年です。長期にわたって寄り添う事が必要です。今、グリーフケアが注目され、残された家族向けに手紙やグループカウンセリングを開いている所もあります。これから、思慕と空虚の段階から適応・対処の努力まで一貫して寄り添える場所を作っていく工夫が必要です。
参考文献
グリーフケアの実践と展望
東京都在住、正看護師。自身が幼少期にアトピー体質だったこともあり、看護学生の頃から皮膚科への就職を熱願。看護学校を経て、看護師国家資格取得後に都内の皮膚科クリニックへ就職。ネット上に間違った情報が散見することに疑問を感じ、現在は同クリニックで働きながら、正しい情報を広めるべく、ライターとしても活動している。
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