昔の話ではない子どものビタミンD欠乏(2015/12/22)
前回は子どもの成長に大事なカルシウムと牛乳についてのお話をしましたが、もう一つ骨の成長に大事な栄養素にビタミンDがあります。ビタミンDは食べものにも含まれておりますが、日光にあたることで体内でもつくることができるという特徴があります。実はこのビタミンDが不足している子どもが増えているという話があります。今回はビタミンDについて気になる話題をQ&A方式で解説したいと思います。
目次
Q:ビタミンDってどんな働きをするの?
A:ビタミンDは脂溶性ビタミンの一つで、体内のカルシウム濃度を調整する作用があります。ビタミンDが不足しているとせっかく食べものから摂ったカルシウムをの吸収が悪くなったり、カルシウムが排出されやすくなり骨がもろくなるなど、カルシウム欠乏の原因になります。
日光を浴びると体内でつくることができる、という話はご存じかと思いますが、皮膚にはコレステロールからつくられるビタミンDの素になる物質があり、それが日光(紫外線)を浴びるとビタミンDに合成されるんですね。ビタミンDは食べものにも含まれており、体でつくる分と食事から補う分を合わせて不足しないようにすることが必要です。
Q:子どものビタミンDが不足するとどうなるの?
A:生まれて間もない時期は成長も盛んであり、骨にカルシウムをたくわえる大事な時期ですが、このときにビタミンDを十分に摂れないと骨が曲がってしまったり変形してしまうくる病になる危険性があります。身長の伸びが悪い時や寝ているときに足がへんに曲がっていると感じたときには小児科医に相談してみると良いでしょう。
大人のビタミンD欠乏は骨軟化症になり、骨粗鬆症になる危険性が高くなります。
Q:どうしてビタミンD不足がおこるの?
A:くる病というと過去の病気という印象がありますが、このごろ赤ちゃんのビタミンD欠乏や小児科でのくる病の報告が増えているようです。これは、紫外線カットの化粧品や日焼けを嫌い肌の露出を少なくしたり日傘をさすなど紫外線対策の習慣が定着してきたためといわれております。日光にあたらないと紫外線からつくられるビタミンDが減ってしまい、お腹の中の赤ちゃんに十分なビタミンDが供給されないということです。更に、生まれた後でも母乳中のビタミンDが少ないとくる病になる危険性が高くなります。妊娠中や授乳中には日焼けしない程度の日光浴をして母乳のビタミンD濃度が低くならないよう配慮しましょう。また、北日本のような高緯度地域では冬場の日差しが弱いため体内で十分なビタミンD合成が困難です。なので、食べものからのビタミンDの補給が必要です。
Q:親や保育士が気をつけることは?
A:妊娠中や授乳中にはほどよく日に当たることを心がけるとともに、ビタミンDの多く摂れるような食事を意識して食べると良いでしょう。母乳だけで育てられている子どもにビタミンD欠乏が多い事も分かっていますので、子どもが母乳なのか粉ミルクなのかも確認しておくと良いでしょう。母乳育児の子どもがビタミンD不足にならないよう、外遊びをすすめるだけでなく、離乳食にはビタミンDを多くとれるような食事を採り入れてあげたいものです。母乳には良い点がたくさんあるのですが、このような欠点があることも知っておくと母乳育児を安心してすすめることができるでしょう。
Q:ビタミンDが豊富なおすすめ食材ってあります?
A:ビタミンDは含まれる食品がとても偏っていて、動物性食品とキノコ類からとることができます。特に魚とキノコに多いのですが、小さな子どもの離乳食を考えると魚を入れた献立が補給に適していると思います。妊娠中も冬場のビタミンD補給のために魚やキノコを積極的に食べると良いでしょう。
なかでも鮭やサンマなどはビタミンDも豊富ですし比較的安価で、日照量の少ない秋から冬にかけて美味しいのでオススメです。
Q:ビタミンDをたくさん摂れる離乳食や幼児食はありますか?
A:離乳初期にはヒラメなどの白身魚をゆでてすりつぶして与えたり、シラスを塩抜きしてとろとろのお粥にしてみると良いでしょう。色々なものが食べられるようになってきたら、鮭などの魚を入れたシチューがオススメです。乳製品と合わせてビタミンDとカルシウム補給が期待できます。
今回のまとめ
・子どものくる病予防には妊娠期や授乳期のにはある程度の光浴が大事です
・妊娠期や授乳期は魚やキノコなどを食べてビタミンD補給を心がけましょう
・母乳だけで育てる場合にはビタミンD不足に配慮しましょう
・離乳食にも上手に魚をとりいれましょう
東京都在住、根拠のない健康法や食事法で体を壊したり、子どもの成長が阻害されないことを願い、ネット上ではどらねこ名義で情報提供などの活動を行っている。著書:管理栄養士パパの親子の食育BOOK(メタモル出版)共著:謎解き超科学(彩図社)
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