創薬

創薬とは

創薬とは新しい薬を作ろうという計画の段階から、実際に開発を始め製品を発売するまでの一連の流れを指しています。創薬には20年ほどの年月と200億円以上にも上る費用が必要となるため、とてもリスクの大きなものです。リスクが大きいが故に患者数の少ない疾病の新薬の開発が進んで行われていないという問題点があり、薬の開発を待ち望む患者さんがいることも事実です。創薬は大きく開発、非臨床試験、臨床試験の3段階に分けて行われます。開発では新薬として求められている化学物質を探し、候補となる物質をスクリーニングによってふるい分けをすることで目的の物質の選択をしていきます。非臨床試験では動物実験などにより安全性や有効性について確認をします。現在ではこのスクリーニングにかかる時間を短縮するためにコンピューターやバイオテクノロジー技術なども駆使されています。非臨床試験や臨床試験によって有効性や安全性が確認され、薬事・食品衛生審議会の審査をクリアすると市販できるようになります。

非臨床試験とは

医薬品の開発をするにあたり、動物などを用いて薬効薬理、体内動態、有効性、副作用などを調べる試験のことです。この非臨床試験の結果次第で臨床試験に進めるかどうかが決まります。人間の健康のために動物を犠牲にすることを問題視する声もあり、この実験方法が果たして正解なのかはまだ答えが出ていないところでもあります。倫理的な問題はあるものの、被験者への安全性を考えると代替案が見つからないのも現実です。こういった影響もあり、現在は動物だけでなく、細胞培養やコンピューターでのシミュレーションを用いた化学物質の評価も行われています。

臨床試験とは

実際のヒトに投与し薬物の体内動態や有効性、副作用などについて検査していきます。臨床試験は大きく3つの段階に分けられます。第I相試験は健康な成人が対象です。少しの量から被験薬の投与を開始し、段階的に投与する量を増やしていきます。これにより薬物の体内動態、副作用などをモニタリングすることが目的です。初めてヒトに投与するプロセスであるので安全性を確認する重要な段階となります。第II相試験は少数の患者が対象です。薬物の用法用量を調べるのが主な目的です。第III相試験は多くの患者に協力してもらい、実際の治療に近い形で投与することでより詳細な情報を収集します。

創薬と育薬の関係

創薬は薬が開発され完成するまでのプロセスを指しますが、育薬は市販後に薬をより良いものしていくプロセスを指しています。創薬と育薬の過程を合わせてやっと一つの医薬品が誕生します。育薬では実際に薬を服用した患者さんからのもっとこうして欲しい、こんな症状が出た、錠剤が包装から出しにくいなどの声を収集して製薬会社にフィードバックをし、薬を育てていきます。実際に育薬により薬の剤形が変わったり、当初はなかった効能効果が追加されたりすることがあります。創薬に関わることは難しいかもしれませんが、育薬は誰でも参加できる可能性があります。私たち薬の使用者の声を届けることで、開発当初には思いもしなかったような効能を取得し、発売されるようなこともあるのです。創薬にも育薬にもかなりの年月がかかりますが、製薬会社や治験に協力してくれる方たちの努力によって私たちの健康は保たれています。