薬剤師倫理規定

薬剤師倫理規定(やくざいしりんりきてい)とは

薬剤師倫理規定とは、「薬剤師がどうあるべきか」を明文化した規定です。前文と10条の条文から成り、日本薬剤師会が薬剤師綱領を基に昭和48年に制定し、平成9年に全面改訂しました。薬剤師倫理規定はすべての薬剤師が当然守るべき規定ですが、国によって定められた法律ではないので、薬剤師法や医療法などのように法的拘束力はありません。また、各条文は基本的倫理を示したものであり、具体的な行動などを制限するものでもありません。しかし、法律ではなく具体的ではないからこそ、各条文を正しく理解し、自らの行動を律しなければなりません。薬剤師倫理規定のうち、まず前文では薬剤師が正しく社会に貢献し、職能を全うできるようにすることが制定目的であるとされています。加えて、薬剤師が「人権の中で最も基本的な生命・健康の保持増進に寄与する責務」を担っているとし、薬に関わる全ての業務において「確固たる薬(やく)の倫理が求められる」とされています。

薬剤師倫理規定にみる薬剤師の任務

第1条の中で薬剤師は、調剤医薬品供給など薬事衛生をつかさどることで、人々の健康な生活の確保に努めることを任務として与えられています。これらの文言は、薬剤師法にも明記され、薬剤師の存在意義と言えるでしょう。近年では、在宅医療に薬剤師が加わり、処方提案や投薬の工夫などで医師や介護スタッフとも連携する例が増えました。また、相次ぐ災害では多くの薬剤師が、医師や看護師とは異なる専門知識を活かして活躍しています。このような積極的な活動は、「調剤室にこもりきり」と揶揄されていた頃の業務とは大きく性格を異にするものです。しかし、こうした活動こそまさしく「薬事衛生をつかさどり人々の健康な生活を確保する」薬剤師の任務にあたるでしょう。

薬剤師倫理規定から考える薬剤師の将来

規定の各所には「職能」という単語が用いられています。薬剤師の職能については、時代を追うごとに変化していますが、規定ではあえて職能の範囲を定義していません。薬剤師倫理規定を制定した当時の日本薬剤師会が、薬剤師の将来は今後ますます開けるものと考えていたことが伺えます。事実、病棟薬剤業務実施加算などの職能拡大が公に認められ、上述のような活動も広まり、薬学部も6年制へと変化しました。さらに2017年にはセルフメディケーション税制が導入されたことから、ドラッグストアなどに勤務する薬剤師の活躍が見込まれています。第4条にあるように、薬剤師は生涯にわたり積極的に研鑽し、後進の育成に努めなければなりません。研鑽を積み、後進を育成することで、より質を高め、医療を介した社会貢献が求められています。倫理は人間社会を形成する上で最も重要視されるべき問題ですが、人間は当然と思っていることでも時間が経つと忘れてしまうもの。日頃から薬剤師としての倫理を意識するためにも、調剤室に薬剤師倫理規定を掲示するなどの工夫をしてみてはいかがですか。