頓服

必要な時や症状に合わせて

「頓服」とは薬の用法の1つです。薬袋などに記載される、薬を服用するタイミングの事ですが、頓服は「1日3回」や「毎食後」といった定期的な服用ではなく、「症状の酷い時」や「症状の起きた時」などの体調の変化に合わせて服用する必要がある場合の用法です。頓服で服用する指示のある薬剤は「頓服薬」とよばれます。頓服という語に内服を意味する「服」の字が用いられているため、「頓服薬」は正確には内服薬を表します。もちろん、実際には点鼻薬など外用薬や吸入タイプの薬剤が頓服の用法で処方される場合も多くあります。このような内服薬以外の薬剤は「頓服薬」と区別して「頓用薬」と呼ばれる場合もあります。ですがこの区別は厳密なものではなく、内服以外の頓服が用法となる薬剤であってもひとくくりに頓服薬と表現する場合もあります。

頓服のさまざまな用法や薬剤の種類

医師が薬剤を処方する際には、薬効や薬剤設計として適さない、といった医学的な理由を除けば、用法を頓服として処方する事に制限や規定はありません。そのため投薬に用いられる様々な薬剤が頓服薬として処方されます。よく頓服薬として処方されているのを見かけるのは、NSAIDsなどの鎮痛薬や頭痛薬、感冒時の解熱剤などでしょう。その他にも狭心症の発作時のニトロ剤や喘息発作時のβ2刺激剤、アナフィラキシーショック時のエピネフリン注射剤なども頓服薬として処方されます。このように様々な薬剤が処方されるため、その用法の記載もさまざまです。処方箋に記載の用法の文言は、わかりやすいものである事が求められますが、特に規定はありません。そのため「痛み時」や「疼痛時」、「頭痛時」、「喘息発作時」、「胸痛時」、「めまい時」、「かゆみ時」、「動悸酷い時」、「不安時」などその用法の表現にもさまざまな物があります。

薬剤師が見落としがちな言葉の落とし穴

実はこの「頓服」という言葉は薬剤師にとっては馴染み深い用語ですが、一般の方にとってはそれほど認知されていない言葉でもあります。用語の認識の度合いの調査を行ったところ、「頓服」という言葉について、見た事がありその言葉は知っているが正確な意味は分からない、と解答した人が半数近くいたという調査結果もあるほどです。そのため、患者の中には頓服薬とは痛み止めの薬だ、という勘違いや、解熱剤の事を頓服薬というのだ、と思いこむ勘違いなどが実際に起こっています。このように言葉の意味について、患者と薬剤師が異なる認識を持ったまま服薬指導を行ってしまえば、処方薬や服用のタイミングについて間違った理解をしたまま服用してしまいかねません。服薬指導を行う際には、分かっているはず、という思いこみは禁物です。また、服薬指導時に「症状のある場合に服用する薬」という説明をされ、1日の上限量や服用の間隔の指示について見落としたまま、症状がおこるたびに1日に何度でも服用できる、という勘違いがおこる場合もあります。「頓服」は、服薬指導の際には、念には念をいれた丁寧な確認が必要となる用法でもあります。