投薬

なぜ「投薬」というの?

投薬とは処方箋に記載された薬剤を患者さんに手渡す事です。調剤薬局などの実際の現場では、処方箋を基に患者さんに薬が渡されるまでに、処方の監査や薬剤の準備、薬剤の監査、薬袋の作成、会計の計算や服薬指導といった過程があり、これらの一連の作業は調剤と呼ばれます。薬剤師が投薬という言葉を用いる場合には、例えば「薬剤師は現在投薬中です」や「投薬カウンターで服薬指導を行う」など、実際に患者さんと対面しての服薬指導を表す場合がほとんどです。そのため、投薬は調剤の工程の1つに含まれると解釈されています。ところで、なぜ「投薬」の言葉には「投」の漢字を用いるのでしょうか?「投」の漢字には、良く知られている「投げる」の意味の他にも、「相応しいものを相応しい場所へ納める」という意味があり、「投薬」という言葉ではこちらの意味が使われています。

職種によって異なる言葉

「投薬」と同じ様に、患者さんに薬を渡す、処方する、といった意味で用いられる言葉には「投与」があります。こちらは医師が患者さんに対して用いることの多い言葉です。対して「投薬」や「投薬する」という言葉は、医師、薬剤師のどちらも用いる言葉です。この「投与」の言葉については一般的な文章でもよく用いられるため、比較的患者さんにも認識されやすい言葉であるといえますが、一方の「投薬」の言葉については、患者さんの認識が「投与」ほど高く無いため、注意が必要です。さらに看護師の場合は、同じ様に患者さんに薬を手渡す行為や患者さんの服薬を手助けする行為に「与薬」という言葉を用います。「与薬」という言葉は看護師の他、介護士などの介護職も用いる事が多い言葉です。このように同じように患者さんに薬を手渡す行為であっても、その職によって用いる言葉が異なるのは、その職域によって薬を手渡す際に行う患者さんへのケアの内容が異なることにもよります。

診療報酬請求に見る投薬の言葉

「投薬」という言葉に厳密な法律上の定義はありませんが、「投薬」は医療制度のさまざまな分野で用いられている言葉です。例えば、診療報酬請求では病院や歯科医院などの医療機関が薬を処方した場合に算定される点数は「投薬の費用」と呼ばれ、実際のレセプト上では「投薬料」と表現される事が多い点数です。医院や歯科医院が院内処方で薬剤を投薬した場合、この「投薬料」は投薬に関わる幾つかの算定料の合計で計算されています。医科診療報酬点数表の第二章、特定診療科の第五部によると「投薬料」は、調剤料、処方料、薬剤料の点数の合計で算定されます。一方で、医療機関が院外処方箋を発行した場合には、「投薬料」には処方箋料のみを算定する事となっています。調剤薬局の場合では、同様の費用は「調剤料」として算定し、「投薬料」の言葉が用いられることはありません。投薬料が薬の処方に関わる算定料の合計であるように、「調剤料」も調剤技術料、薬学管理料、薬剤料の合計として算定される点数となっています。