漢方

漢方とは

漢方と聞くと、中国医学のことだと勘違いする方が多いのではないでしょうか?実際は違います。漢方とは、中国医学を基礎として作られた日本独自の医学を指し、江戸時代にオランダから日本に伝えられた医学を「蘭方」と呼んだのと同様に名付けられました。

中国医学の特徴

漢方の基盤となった中国医学は、3000年も前から中国を中心として発展してきた経験的な医学です。中国医学は独自の生理観や病理観を持ち、独自の診察法・治療法をもって医療を展開していくという、独特な学問です。これは、東洋医学と西洋医学を比較するとよりその特徴が明確化しやすいです。西洋医学では、人体を臓器や器官に細分化し、異常部位や病気の原因を特定することで、それに対する治療を行います。これに対し東洋医学では、人体を有機的に統一された整体と捉え、全身のバランスの崩れを見つけ出します。そして、新陳代謝を促進して自然治癒力を高めることで症状を改善していく手法をとります。ですから、自覚症状があるにも関わらず原因が特定できない場合や、症状が多岐に渡る場合など、西洋医学では治療が難しい場合でも、東洋医学では新陳代謝を促進することで症状改善へと導くことができるというメリットがあります。

漢方薬

現在使用されている漢方薬は、そのほとんどが2種類以上の生薬を組み合わせて作られているため、「漢方生薬」とも呼ばれています。生薬とは薬効成分を持った自然素材のことです。漢方薬の剤形は、第十七改正日本薬局方の生薬関連製剤各条には、エキス剤、丸剤、酒精剤、浸剤、煎剤、茶剤、チンキ剤、芳香水剤、流エキス剤が記載してありますが、医療用として用いられる漢方はエキス剤が多いです。エキス剤は、生薬の浸出液を濃縮して製したものですが、中でも水あめ様の稠度に製したものは軟エキス剤、固塊・粒状・粉末状に製したものは乾燥エキス剤と呼んでいます。

漢方薬は副作用がない?

漢方薬には副作用がないと思われている方が多いようです。確かに漢方薬は、一般的に薬効が穏やかなものが多いことから、西洋薬と比較すると副作用は少ないと言えます。しかし、ないとは言い切れません。代表的な副作用には小柴胡湯による間質性肺炎があります。詳細なメカニズムは未だに不明ですが、小柴胡湯はIL-6やIL-8といった炎症性サイトカインの産生を増加させることが報告されています。よって、現段階ではこれが原因ではないかと考えられています。このように漢方薬でも副作用が生じることはあるため、勘違いしている患者さんには特に注意して服薬指導を行いましょう。