Pharm.D.

Pharm.D.とは

Pharm.D.とは「Doctor of Pharmacy」を正式名称とし、国際的に通用する「薬学博士」を意味します。医師、歯科医師、獣医師の養成課程を卒業した者に与えられる「M.D.」、「D.D.S」、「D.V.M」と同様です。米国では、大学や大学院で授与される学位とは別に多彩な職能学位が存在しており、その1つがPharm.Dです。米国における薬剤師養成教育は、1960年代まではほとんどの薬学部が5年制の薬学学士課程でした。しかし1960年代以降、薬剤師はもっと多くの臨床経験を積まなければならないという意見が飛び交い、6年制のPharm.D.課程が新設されました。現在の米国では、全ての薬学部にPharm.D.課程が設置され、これが唯一薬剤師免許を取得できる手段となっています。一方で、現在の日本の薬剤師養成課程は6 年制薬学正規課程のみで、Pharm.D.課程に相当するような職能学位は存在しません。

日本でもPharm.D.制度の設立を

そんな状況の中、研修認定薬剤師制度を手掛けるなど日本の薬剤師の生涯学習支援を行っている日本薬剤師研修センターが立ち上がりました。日本の薬剤師も国際的に評価されることを展望し、日本でもPharm D.制度(JPEC制度)を設立しようと動き始めたのです。本制度は、6年制薬学正規課程を卒業した者あるいはそれと同等以上の知識・技能を持つ者であり、薬剤師免許を持ち、薬剤師として生涯研修を行っている者が対象です。具体的な取得条件としては、JPECが実施する新カリキュラム対応研修成果判定Webテストに合格すること、病院実務かつ薬局実務の経験があること、JPECの生涯研修を毎年5単位以上、4年以内に40単位以上を取得することなどを挙げています。

努力も無念、打ち切りに。

平成23年1月、日本薬剤師研修センターは「Pharm.D.に関する見解について」と題した文章を公表しました。この中で当センターは、「日本で6 年制薬学正規課程を終えた薬剤師はPharm. D.と同等で、国際基準の薬剤師と捉えるべきだ」と主張し、それによって日本の薬剤師が適切な国際的評価を受けられ、国内における処遇改善にも繋がると期待しています。しかし、こうした取り組みは様々な波乱を及ぼすこととなりました。日本薬剤師会の会長は、「Pharm D.は文部科学省や大学が認定する制度であるべきで、研修センターのような財団法人が認定するような制度ではない」と、反対の立場を取ることを明らかにしました。これに対し研修センターは、『Pharm. D.は「学位の称号」ではなく、6年制カリキュラムの教育内容と同レベルの知識・技能・態度を取得していると示す「呼称」と考えてほしい』と反論しました。しかし、これを単なる呼称とするのであれば、日本のPharm.D.と米国のPharm.D.は違う意味になってしまい混乱を招きかねません。このような議論が繰り返された結果、結局日本でのPharm.D.制度の設立計画はなくなってしまいました。しかし、文化や教育のグローバル化が急激に進行している近年ですので、いずれは日本の薬剤師のグローバル化を目指した取り組みが行われることは間違いありません。