向精神薬

向精神薬とは

精神に作用するような薬をまとめて向精神薬と呼んでいます。似たような響きの薬に「抗精神病薬」というものがありますが、こちらは「統合失調症」の治療薬のことを指していますので、まったくの別物です。麻薬や覚醒剤なども精神に作用するため、同じ向精神薬として分類されています。日本では抗不安薬や睡眠薬、麻酔薬、抗てんかん薬などが向精神薬として分類されています。抗不安薬はパニック障害や強迫性障害、恐怖症性不安障害などの治療に用いられています。このような病気を神経症と呼んでいますが、神経症は一般に女性の方がなりやすいという特徴があります。

向精神薬の種類

神経症の治療にはベンゾジアゼピン系が良く用いられます。GABAの作用を増強させることによって大脳皮質や脳幹の過剰な活動を抑制して不安を減少させます。心身症や不安神経症、てんかんなどの様々の疾患の治療に用いられます。代表的な向精神薬は以下の通りです。①抗不安薬:ベンゾジアゼピン類似物質であるエチゾラムは中枢性筋弛緩作用も持つため肩こりの酷い患者さんにも処方されています。前向性健忘や持ち越し効果、依存などの副作用もありますのでむやみな服用はしてはいけません。また、急性隅角緑内障や重症筋無力症の患者には禁忌となっています。セロトニン5-HT1A受容体刺激薬であるタンソスピロンも心身症や神経症の治療に用いられますがこちらはセロトニンの神経活動を抑制することにより効果を現します。前向性健忘や持ち越し効果、依存などの副作用がほとんどなく依存性の少ない薬です。②抗躁薬:作用機序ははっきりとは分かっていませんが、躁病の治療に炭酸リチウムが用いられています。ホスファチジルイノシトールの代謝に関与することで効果を現していると考えられています。効果が現われるまでに2週間ほど日数がかかるため、効果発現まではハロペリドールなどの統合失調症の治療薬を用いることがあります。リチウムが含まれているため腎機能障害のある患者には禁忌です。③抗うつ薬:うつ病はノルアドレナリンやセロトニンの不足が原因と言われており、抗うつ薬はこれらの物質の濃度を高めることにより効果を現します。抗コリン作用や交感神経遮断作用があるため眠気や低血圧などの副作用を起こす可能性があります。

向精神薬の分類

向精神薬は医療上の有用性及び乱用の危険性の程度により第一種向精神薬から第三種向精神薬まで分類されています。第一種向精神薬にはメチルフェニデートやモダフィニルなどが分類されています。どちらも投与制限は30日です。向精神薬の内服薬は14日、30日、90日と投与制限が分かれています。外用薬はすべて14日となっています。特殊な事情がある場合は投与制限を超えて処方されるケースもあるため、その場合は投薬を終えたあとに必ずその旨をレセプトに記載しなければなりません。近年では新しくデパス(一般名:エチゾラム)が第三種向精神薬に分類されています。薬物依存の入り口になりやすいのと、重複投与が目立っていたという理由から新たに指定されたのです。このように状況に応じて向精神薬として分類されることもあります。