降圧薬

降圧薬とは

血圧を上昇させる原因に働き、血圧を下げる薬を降圧薬と言います。血圧は心拍出量と抹消血管抵抗の積で表すことができ、収縮期血圧が140mmHg以上、又は拡張期血圧が90mmHg以上のものを高血圧としています。血圧が高いことによる身体への負担もありますが、虚血性心疾患や脳血管障害、腎障害などのリスクが高まることが何よりの問題となります。高血圧はその原因によって主に二種類に分類されます。①本態性高血圧:基礎疾患がなく起こる原因不明の高血圧で、高血圧患者の90%以上を占めています。遺伝や生活習慣などの環境が原因であると考えられています。塩分の取りすぎは血圧が上がると言われるのはこの本態性高血圧を引きおこす原因と成り得るからです。②二次性高血圧:原因となる基礎疾患があり、それに付随して発症します。腎性高血圧や内分泌性高血圧があります。

主な降圧薬

①カルシウムチャネル遮断薬:カルシウムが細胞内に流入することを抑制し細動脈を拡張して血圧を下げます。②ACE阻害薬:ACEを阻害することにより昇圧作用を持つアンギオテンシンⅡの生成を抑制することで降圧作用を示します。③アンギオテンシン受容体阻害薬:アンギオテンシン1受容体を阻害することで血管を拡張させ降圧作用を示します。④レニン阻害薬:レニンを直接阻害することによりレニン-アンギオテンシン系を抑制します。⑤利尿薬:利尿作用により循環血液量を減らすことで心臓の負担を減らし降圧作用を示します。⑥交感神経遮断薬:交感神経の働きを抑えることによりノルアドレナリンの遊離抑制などを介して降圧作用を示します。⑦血管拡張薬:細動脈に直接働き血管平滑筋を弛緩させることで降圧作用を示します。

副作用や相互作用

降圧薬は副作用として眩暈やふらつき、吐き気などが現われる場合があります。初回から高用量の投与をせずに様子を見ながら投与量の調節をする必要があります。カルシウムチャネル遮断薬はCYP3A4で代謝される薬物です。グレープフルーツジュースがCYP3A4阻害作用を持つため、同時に服用してしまうとカルシウムチャネル遮断薬の代謝が阻害され血中濃度が上昇し副作用が起きる恐れがあります。カルシウムチャネル遮断薬のうち、ジヒドロピリジン系は特に急激に血圧を下げることにより反射性頻脈が起きることがあります。ACE阻害薬の代表的な副作用に空咳があります。これはブラジキニンが増加することにより引き起こされます。また、利尿薬の種類によっては低カリウム血症を引き起こす可能性もあります。降圧薬はかなりの頻度で処方されている薬剤であり、継続的に服用している患者さんが数多くいます。そのため服薬指導がルーチン化されあまり患者さんの様子を細かく見ない状況が見受けられます。しかし、降圧作用により身体に不調を来たす場合もあるのできちんとモニタリングをする必要があります。また、降圧薬を飲む患者さんと飲まない患者さんとで心血管リスクなどの減少効果に大きな差がないなどの報告もあるため、降圧薬の扱い方には更なる研究が必要な分野となっています。