発泡錠

水中で発泡しながら溶解する錠剤

発泡錠は有効成分に加え、炭酸水素ナトリウムやクエン酸、リンゴ酸などの発泡成分を添加した錠剤です。わずかな水分を加えただけで炭酸ガスを発生して発泡し、速やかに崩壊した後に分散または溶解します。この「発泡」という性質のおかげで、発泡錠中の有効成分はその周辺に拡散し、泡とともにある程度の時間とどめておくことができます。このような性質は湿潤した部分に使用するにはもってこいの性質ですので、局所適用である膣錠などは発泡錠として用いられることが多いようです。そのほか、制酸薬や鎮痛薬、害虫駆除剤などにも用いられています。

有効成分を素早く放出できる

発泡錠の最大のメリットは、即効性が期待できるところにあります。これは薬を飲んでから吸収されるまでの過程を考えると、一般的な錠剤は、口から摂取した後、胃の中で崩壊して有効成分が分散、溶解します。その後、小腸に送られてこちらで吸収されます。これに対し発泡錠は、すでに溶解された状態で飲むわけですから、胃の中で崩壊する過程を経ることなく、直接小腸から吸収されるのです。ここが一般的な錠剤との違いです。この性質から、発泡錠は服用してから30分以内には効果が現れ始めます。そして1時間前後で最も効果が高まると言われています。このように、発泡錠には薬物動態学的な点で大きなメリットがあると言えます。

品質が保持できる。携帯にも便利。

発泡錠は通常、コップ1杯程度の水に溶かして服用します。多くはオレンジなどのフレーバーがついており、服用が苦手な方でも飲みやすく工夫されているものが多くあります。そのため液剤として作ったほうが良いのではないかと考えられますが、液剤には品質保持や携帯の上で難点があります。有効成分の性質によっては光や温度に弱いものもあり、液体中に溶け込んで放置しておくと変質してしまうものも少なくありません。また、液剤はかさばりやすいため持ち運びにも向いていません。これに対し、発泡錠は錠剤ですのでカバンの小さいポケットにもすんなり入ります。旅行先や外出先でも安心です。こういった点から、発泡錠を用いた方がメリットは多いと言えます。ただし、発泡錠はわずかな水分に触れただけで崩壊してしまうため、保存の際には湿気に十分な注意が必要です。携帯しないのであれば、密封容器などに入れてなるべく乾燥剤と一緒に保管しておくのが良いでしょう。