抗インフルエンザ薬

インフルエンザウイルス

インフルエンザウイルスは、オルトミクソウイルス科に属するRNAウイルスの一種で、A型、B型、C型の3つの型が存在します。1957年のアジアかぜ、1968年の香港かぜ、1977年のソ連かぜのように世界的に大流行したかぜは、A型インフルエンザウイルスによって引き起こされました。また、毎年冬頃に温帯地方で流行するインフルエンザは、A型・B型インフルエンザウイルスによるものです。一方、C型インフルエンザウイルスはかぜ症候群(いわゆる普通感冒)の原因ウイルスであり、季節を問わず小さな流行を起こします。よって、一般的に呼ばれる「インフルエンザ」はA型・B型のもの、「かぜ」はC型のものと捉えておくとよいでしょう。

インフルエンザウイルスの種類

インフルエンザウイルスには、A型、B型、C型があると説明しましたが、これはウイルス粒子の主要な内部タンパク質である、核タンパク質とマトリックスタンパク質の抗原性の違いによって分類されています。ウイルス粒子は、脂質二重層からなるエンベロープに包まれ、その表面にはスパイク構造物を持っています。A型、B型インフルエンザウイルスは、HA(ヘマグルチニン、赤血球凝集素)とNA(ノイラミニダーゼ)という2種類の糖タンパク質がスパイク構造を形成しています。HAはレセプター結合能、膜融合能を有しており、NAはレセプター破壊能をもっています。インフルエンザウイルスはHAが細胞表面のレセプターに吸着することで細胞内に侵入でき、脱殻、複製・転写を経て細胞膜に移動し、NAが細胞表面のレセプターを除去することで細胞外へと放出されるのです。

抗インフルエンザ薬の種類

厚生労働省によると、現在使用されている抗インフルエンザ薬は、オセルタミビルリン酸塩(商品名:タミフル)、ザナミビル水和物(商品名:リレンザ)、ラニナミビルオクタン酸エステル水和物(商品名:イナビル)、ペラミビル水和物(商品名:ラピアクタ)、アマンタジン塩酸塩(商品名:シンメトレル等)の5つになります。このうち、タミフル・リレンザ・イナビル・ラピアクタはNA阻害薬でありA型・B型インフルエンザウイルスに有効です。一方、シンメトレルは脱殻阻害薬でありA型インフルエンザのみに有効です。また、タミフルとアマンタジンは経口剤、リレンザとイナビルは吸入剤、ラピアクタは点滴静注剤として用いられます。

用法・用量に注意

抗インフルエンザ薬の中でよく用いられるものは、タミフル、リレンザ、イナビルです。注意しておきたい点は、3剤ともに使用目的によって用法・用量が異なってくるということです。タミフルであれば、インフルエンザの治療に用いる場合は、1回75mgを1日2回、5日間服用します。しかし、予防として用いる場合は1回75mgを1日1回、10日間服用するのです。さらにイナビルに至っては、年齢によっても用法用量が異なってくるので注意が必要です。治療に用いる場合、10歳以上であれば1回40mgを単回吸入し、10歳未満であれば20mgを単回吸入します。一方、予防に用いる場合は、10歳以上であれば1回20mgを1日1回、2日間吸入し、10歳未満であれば1回20mgを単回吸入します。このように、使用目的と年齢によって用法用量が変わってくるため、事前に患者さんに確認ししっかり服薬指導を行うことが大事です。