無菌室

感染のリスクを最小限に抑えた部屋

無菌室はクリーンルームとも呼ばれており、高度なフィルターや特別な空調施設を使い部屋の中の空気を常に循環させています。これにより空気中の小さな粒子や微生物などの異物を排除して部屋の中の空気を清潔に保ちます。白血病やがんなどの治療のために強い抗癌剤を使う場合、白血球が著しく低下するため患者さんはとても感染しやすい状態です。この感染が命に関わることもあるためできるだけ感染リスクを抑えながら治療を行っていきます。しかし、無菌室で過ごすにはいくつかのルールがあります。菌の持ち込みを最小限に抑えるため、部屋にいる持ち込める物には限りがあり、消毒をしなければ部屋には入れられません。食事も制限があり生ものや、殺菌のされていない飲み物、加熱不可能な調理品などは食べられません。もちろん、食べきれなかった食事を取っておいて後で食べることはできません。小分けになっていない調味料も使用不可です。感染リスクを抑えるため無菌室での治療が必要な患者さんは基本的に1日中、部屋の中で過ごすことになり、部屋の外に出る場合はマスクの着用が不可欠です。食べられるもの、日々の行動にかなり制約がかかるため、無菌室での生活は患者さんへ大きな負担を与えます。無菌室はただ居ればよいという訳ではなく、さまざまなルールを守りながら生活を送らなければならない場所なのです。

薬剤師が使用する無菌室

無菌調剤を行う際にクリーンベンチなどを使用して調剤を行うことがあります。無菌調剤が必要なものには注射剤や輸液などがあり、これまでは無菌調剤室で調剤されていました。しかし、無菌調剤室の設置や維持にはかなりコストがかかります。そのため、一般的な調剤薬局に導入することはとても難しいことです。そこで調剤報酬の改定が行われ、クリーンベンチでの無菌調剤も可能となりました。クリーンベンチは、外部からの雑菌や埃などのコンタミネーションを防ぎ、無菌状態を保ちます。クリーンベンチの中は陽圧に保たれており内部の空気を常に外部に押し流しているので、雑菌などの侵入を防ぐことができるのです。クリーンベンチは無菌調剤室よりも安価とは言え、設置場所や周囲の環境にも気を配らなければなりません。また、薬剤師に無菌調剤を行える手技が備わっていることも条件となります。薬局内にクリーンベンチンを置いている所はまだ極わずかです。

在宅医療との関係

病院での治療が困難、または本人の意思により在宅で治療を受ける患者さんは増えつつあります。自宅で療養中の患者さんの中には高カロリー輸液やオピオイド注射薬が使用されることもあります。これらも調剤できる環境が整えられることで、より良い在宅医療を提供することができるようになります。病院では無菌調剤をする機会があると思いますが、調剤薬局では中々その機会はありません。無菌調剤の研修を行っている薬局もありますので、ぜひとも、調剤ができるようにしておきたいものです。