制吐薬

制吐薬とは

吐くのを制する薬、簡単に言えば吐き気止めのことです。逆に胃の内容物を出すために吐き気を誘発する薬は催吐薬と呼ばれます。吐き気を催している場合、胃の内容物を早急に出してしまった方が良い場合もありますが、嘔吐はとても体力を消耗します。また水分も一緒に吐き出してしまうので脱水症状を起こす恐れもあります。そのため、制吐薬の使用は吐き気、嘔吐の症状がある患者さんにとって、とても有益なものとなります。一言で制吐薬と言ってもその種類は多く存在しており、D2受容体遮断薬、5-HT3受容体拮抗薬、抗ヒスタミン薬、ムスカリン受容体遮断薬、ベンゾジアゼピン系抗不安薬などがあります。吐き気、嘔吐の原因は様々ありますので、その原因に合わせて適した薬剤が投与されます。

日常で起こりうる吐き気、嘔吐の原因

吐き気や嘔吐の症状を引き起こす原因は様々あります。食べ過ぎ飲み過ぎの場合胃に負担のかかる食事やアルコールの摂りすぎによっておこります。アルコールの代謝が追いつかずにアルデヒドがたまると吐き気を催します。またストレスがたまると自律神経が乱れ、胃腸の働きがうまく調節できなくなり起こります。乗り物酔いでは乗り物の揺れが内耳の三半規管を刺激することにより起こります。食中毒で代表的なのはカキを食べた時におこるノロウイルスによるものです。生肉に含まれるO157によるものも良く見られます。妊娠中では妊娠初期に見られることが多く、妊娠によるホルモンバランスの乱れによりおこります。他にも抗がん剤、ジギタリス製剤、鉄剤などの薬の副作用によりおこることがあります。

代表的な治療薬

一般的に広く使用されている制吐薬はD2受容体遮断薬です。オピオイド鎮痛薬や放射線治療による吐き気にも用いられます。5-HT3受容体拮抗薬は抗悪性腫瘍薬や放射線治療による吐き気に用いられます。抗ヒスタミン薬は動揺病、いわゆる乗り物酔いに用いられます。平衡感覚に関わっている神経の働きを鎮めることで効果を示します。ムスカリン受容体遮断薬は腸の動きが活発に活動し過ぎることによる吐き気、腸閉塞による吐き気に用いられます。ベンゾジアゼピン系抗不安薬は精神的な要因によって引き起こされる吐き気に用いられます。

抗がん剤使用時に用いられる制吐薬

抗がん剤による吐き気は、起こる時期や原因によって三種類に分類されます。また、分類によって用いられる薬剤は異なります。急性悪心・嘔吐:抗がん剤の投与から24時間以内に起こります。セロトニンが腹部の神経の刺激及び化学受容器引き金帯(CTZ)を刺激することにより嘔吐中枢が刺激されます。そのためグラニセトロンなどの5-HT3受容体拮抗薬が治療に用いられます。遅発性悪心・嘔吐は抗がん剤の投与後24時間~120時間ほどで起こります。セロトニンやニューロキニンが関与しています。この時期の悪心・嘔吐の対策にはニューロキニン受容体拮抗薬であるアプレピタントが良く用いられます。また、作用機序は詳しくは分かっていませんがステロイドの投与も有効です。予測性悪心・嘔吐の場合、嘔吐が起こるかもしれない、という患者側の不安によって起こります。治療にはベンゾジアゼピン系薬であるロラゼパムが良く用いられます。