去痰薬

去痰薬とは

去痰薬は「きょたんやく」と読み、その名の通り「痰を去る(除去する)」薬をいいます。そのメカニズムは様々で、気道から分泌される粘液を増量させたり、痰自体を溶解したりすることで喀痰しやすくします。主に湿性の咳に用いられます。

痰の出るメカニズム

気道の粘膜には線毛と呼ばれる細かい毛がついており、その表面は粘液で覆われています。病原体や埃などの異物が気道に侵入すると、粘液がこれらを包みこむことで痰になります。また、風邪をひくとよく粘性の高い痰が出ますね。これは風邪の病原体が咽頭で炎症を起こすことで白血球などの異物除去因子が集まり、免疫反応を起こすためです。その結果、白血球の残骸や死んだ病原体などが痰に混じるために粘性が増加するのです。

去痰薬の分類

去痰薬は、①気道粘液溶解薬、②気道潤滑薬、③気道粘液調整薬、④反射性去痰薬の4つに分類されます。①気道粘液溶解薬は、痰の粘り気を低下させることで痰を出しやすくします。例としてはブロムヘキシンとシステイン系(アセチルシステイン、メチルシステイン、エチルシステイン)が挙げられます。それぞれ、メカニズムが違うために注意が必要です。痰はほとんどが水分ですが、ムコ多糖とムコタンパク質の複合体からなるムチンという成分によって粘性を有します。また、リソソーム様顆粒はムチンを分解する酵素であり、ブロムヘキシンはこの酵素の分泌を上昇させることで痰の粘性を低下させます。一方、システイン系はムコタンパク質中のジスルフィド結合を開裂することで、痰の粘性を下げます。②気道潤滑薬は、肺胞Ⅱ型上皮細胞から生成・分泌される肺表面活性物質の分泌を促進させます。これにより、気道壁が潤滑になり痰の滑りがよくなります。例としてはブロムヘキシンとアンブロキソールが挙げられます。ブロムヘキシンが肝代謝によって脱メチル化かつ水酸化を受けるとアンブロキソールに変換されます。また、この2つには気道の漿液性粘液の分泌を促進したり、線毛運動を亢進させたりする作用も併せ持っています。③気道粘液調整薬は、痰成分の構成割合を調整することで痰を除去します。例としては、カルボシステインやフドステインがあげられます。④反射性去痰薬には、セネガや遠志、桔梗などの生薬が挙げられ、これらの含有成分であるサポニンによって、気道粘膜を直接刺激し、反射的に気道分泌を促します。

去痰薬の使い分け

以上より去痰薬には様々な種類がありますが、その使い分けは痰の量や性状から判断します。痰が少量で粘性が高い場合には、①気道粘液溶解薬や②気道潤滑薬が用いられます。逆に、痰が多量で粘性が低い場合には、③気道粘液調整薬が用いられます。また、痰が詰まってなかなか出てこない時には、②気道潤滑薬と併用するのがよいです。