利尿薬

利尿薬(りにょうやく)とは

利尿薬とは尿の排出を促し、体内の水分量を下げる薬です。通常、人の体内では腎臓によって水分量や塩分、電解質などの濃度が調節され、薬物など異物の排出も行われています。ところが、疾患などにより腎臓が正常に機能しなくなると体内に余分な水分が増え、血圧も上昇してしまいます。水分量が多く、高血圧な状態は心臓にも大きな負担がかかるため、利尿薬によって体内の水分量を減らす治療が行われるのです。しかし、利尿薬の中にはカリウムなどを排出する力を利用して尿量を増やすなどの作用機序を持つものがあり、電解質などのバランスを崩してしまう恐れがあります。したがって、不要な服用は続けるべきでないのはもちろん、糖尿病など他の疾患を患っている患者には注意深く投薬する必要があります。

利尿薬の分類

利尿薬には様々な作用機序をもつ薬物がありますが、代表的なものとしてループ利尿薬、チアジド系利尿薬、カリウム保持性利尿薬などがあげられます。まずループ利尿薬は、腎臓の尿細管で塩分やカリウムなどの再吸収を阻害することで、水分の再吸収も阻害します。成分としては、フロセミド、ブメタニドなどがあり、チアジド系利尿薬などと比べて、速く、強力な作用を持ちますが、作用時間は短い傾向にあります。次のチアジド系利尿薬も作用機序としてはループ利尿薬に似ていますが、作用する部位が少し異なるなどの違いがあります。成分としてはヒドロクロロチアジドやトリクロルメチアジドなどがよく使われます。最後のカリウム保持性利尿薬は、その名の通り体内のカリウム量を保持しながら利尿作用を示す薬です。ループ利尿薬やチアジド系利尿薬では、低カリウム血症が問題になることも多いため、そうした場合にこのカリウム保持性利尿薬が用いられます。成分としては、スピロノラクトンやエプレレノンなどがあります。

スポーツ選手への投薬は要注意

近年ではオリンピックや世界選手権ほど大きな大会でなくとも、ドーピングが厳しくチェックされるようになってきました。利尿薬も禁止薬物として指定されているものがあります。指定される理由としては、利尿薬の作用を直接的に禁止するものと間接的に禁止するものの2つが挙げられます。まず、直接的な理由は体重に関連したもの。例えばレスリングや重量挙げなど体重でランクが異なる競技では、利尿薬を使って水分を排出し、軽量化を図る不正が考えられます。これを防ぐことで、多くの選手が細心の注意を払う減量を公正にすることができます。間接的な理由は、禁止薬物使用の隠蔽です。つまり、腎排泄によって体外に排出される薬物は、利尿薬を使用することで尿量が増え、より速く薬物使用の痕跡を消すことができるのです。様々な薬物が禁止薬物に指定され、その種類も競技によって異なりますので全てを把握するのはとても困難。しかし、風邪薬に含まれる成分が禁止されていることも多く、安易にすすめた薬がそのスポーツ選手の選手生命を絶ってしまいかねません。無意識のドーピングから選手を守るためにも、処方せん調剤での服薬指導時はもちろんですが、ドラックストアなどでOTCをすすめる際にも注意が必要です。