インスリン抵抗性改善薬

インスリン抵抗性改善薬とは

1990年代に認可、発売された比較的新しい医薬品です。インスリンは膵ランゲルハンス島B細胞から分泌されます。インスリンの分泌は血糖上昇時には促進され、低下時には抑制されます。しかし、脂肪細胞などの表面にインスリン受容体に対する自己抗体が形成されてしまう場合があります。すると、ここから抗体を産生することによってインスリンがインスリン受容体へ結合することを阻害したり、受容体の数が減ったりなどの現象が起き、作用が無効となってしまいます。これをインスリン抵抗性と言います。また、肥大化脂肪細胞がマクロファージからのTNFαの分泌を促進します。このTNFαも原因の一つです。代表的なものにピオグリタゾン(商品名:アクトス)があります。ピオグリタゾンはPPARγを刺激し、前駆脂肪細胞から小型脂肪細胞への分化と大型脂肪細胞のアポトーシスを促進します。これにより原因となるTNFαの産生抑制、糖新生の抑制と糖利用の促進効果を持つアディポネクチンの産生を促進させ、結果としてインスリン抵抗性を改善します。ピオグリタゾンはインスリン抵抗性が推定される2型糖尿病の患者のみに適応を持ちます。

インスリン抵抗性改善薬が用いられる対象患者

運動療法や食事療法は問題なくきちんとできているのにも関わらず、血糖コントロールが上手くいかず、インスリン抵抗性が見られる場合に用いられます。肥満と2型糖尿病の両方に該当する患者に用いられますが、肥満の対象ではない人にも血糖値の改善効果が見られる場合があります。単独で用いることは基本的にはなく、運動療法、食事療法に加えスルホニル尿素薬(SU薬)やビグアナイト系薬(BG薬)などの他の治療薬を既に服用している場合には追加薬として用いられます。

インスリン抵抗性改善薬の注意

副作用として心不全、浮腫、肝障害、体重増加をきたすおそれがあります。そのため、心不全の患者及び心不全の既往歴のある患者、重篤な肝機能障害のある患者、重篤な腎機能障害のある患者、他に妊娠及び妊娠している可能性のある患者には投与禁忌となっています。循環血漿量を増加させるため浮腫をおこしやすくなってしまうのです。また、体重が増加するのは小さい肥満細胞を増やして糖を取り込みやすくするためです。投与中は患者の観察を十分に行う必要があります。万が一、浮腫や急激な体重増加、心不全症状等がみられた場合には投与を中止し、ループ利尿剤などの投与により適切な処置を行う必要があります。急激な血糖下降に伴い、糖尿病性網膜症が悪化する例があることが知られています。ピオグリタゾンでも過去に報告例があるので注意が必要です。インスリン抵抗性改善薬にはインスリン分泌を直接刺激する作用はありません。そのため低血糖はおこしにくいですがまれに低血糖症状を起こす場合があるため高所での作業や自動車の運転などをする場合はふらつきや、めまいなどに注意しなければなりません。