拮抗薬

拮抗薬とは

標的の受容体の働きを妨げる働きのある薬剤を拮抗薬と呼びます。他に、遮断薬、アンタゴニスト、ブロッカーなどの呼び方もあります。それ自体に生体内反応を引き起こす作用はありません。生体内には様々な受容体が存在しており、その受容体に特定の物質が結合することによって、生体内反応を引き起こします。受容体に結合する物質のことをメッセンジャーと呼びますが、受容体には特定の限られたメッセンジャーしか結合できないため、受容体とメッセンジャーの関係は時に「鍵と鍵穴の関係」とも例えられます。一般用医薬品にも拮抗薬は多くあり、H2受容体拮抗薬やH1受容体拮抗薬などが扱われています。薬力学的相互作用には拮抗薬のように拮抗作用を示すもの以外に、相加作用や相乗作用を示すものもあります。

拮抗薬の種類

拮抗薬はその働き方によって、いくつかの種類に分かれています。競合的拮抗薬︰受容体に結合しようとするメッセンジャーと、受容体の取り合いを行います。この取り合いは可逆的で、薬物濃度に比例して行われ、濃度が濃いほど拮抗作用は強くなります。椅子取りゲームのようなイメージを持って頂ければOKです。メッセンジャーよりも先に競合的拮抗薬に受容体を奪われてしまえば、メッセンジャーは生体内反応を引き起こすことができなくなります。このように受容体の取り合いをすることによって、生体内反応を抑制します。非競合的拮抗薬︰受容体のメッセンジャー結合部位とは異なる部位に結合することによって、受容体自体の形を変化させます。受容体は一度変化を起こすと元には戻らないため、作用は非可逆的です。これにより鍵と鍵穴の関係が崩れるため、メッセンジャーが結合できなくなり、生体内反応を引き起こすことができなくなります。非競合的拮抗薬にはもう一つ機序があります。相反する作用を持つ薬剤がそれぞれの受容体に結合し、真逆の作用を各々示すことで拮抗作用を示すのです。これらのように、メッセンジャーと受容体の取り合いをせずに拮抗作用を示すものをまとめて非競合的拮抗薬と呼びます。化学的拮抗薬:薬物が他の薬物と化学反応を起こすことで不活性化されます。シアン化合物の中毒に対して亜硝酸アミルやチオ硫酸ナトリウムなどを使うのがその例となります。

受容体について

生態内にはホルモンやオータコイド、神経伝達物質などの様々な情報伝達物質が存在しています。これらの物質はある特定の部位に高い親和性を持っており、そこに結合することで作用を示します。この結合部位のことを受容体と呼んでいます。実は受容体は種類により存在する場所が異なります。アドレナリンやホルモンなどが結合する受容体は細胞膜に存在しています。また、コルチゾールや活性型ビタミンD3などが結合する受容体は細胞質に存在しています。エストラジオールやテストステロンなどはコルチゾールと同様にステロイドホルモンですが、こちらは核に受容体が存在しています。また、受容体にはいくつかの型があり、イオンチャネル内蔵型、Gタンパク質共役型などがあります。