抗血小板薬

抗血小板薬とは

一次止血である血小板が凝集するのを抑えて血液が凝固するのを防ぐ薬のことを抗血小板薬といい、主に狭心症や心筋梗塞などの治療に用いられています。血小板は血液の流れの速い所で活性化しやすいという特徴を持っています。そのため、血小板による血栓は主に動脈で作られます。動脈硬化などにより狭くなった血管にプラークができ、このプラークが破裂し始めると、それに伴い血小板の働きが活性化されます。活性化された血小板は更に血小板同士を結合させトロンボキサンA2などの血小板凝集物質を放出することによって、どんどんと凝集が進んでいきます。

抗血小板薬の種類

血小板の働きは薬によってあらゆる方向から阻害することができます。そのため、抗血小板薬にはいくつかの種類が存在します。トロンボキサンA2阻害薬:血小板凝集作用のあるトロンボキサンA2の量を減らすことによって血小板凝集を阻害します。COX阻害によりトロンボキサンA2の生成を抑制するアスピリン、トロンボキサンA2合成酵素を阻害するオザグレル、アラキドン酸と競合することでトロンボキサンA2の生成を抑制するイコサペント酸エチルなどがあります。5-HT2受容体遮断薬:血小板の5-HT2受容体を阻害することでセロトニンによって亢進した血小板凝集を抑制します。ADP受容体遮断薬:ADP受容体と拮抗することによって作用を示します。PGI2誘導体:PGI2受容体を刺激することによりアデニル酸シクラーゼを活性化し、作用を示します。ホスホジエステラーゼ阻害薬:ホスホジエステラーゼを阻害することで血小板のcAMPの濃度を上昇させ作用を示します。

抗血小板薬の副作用

抗血小板薬は消化性潰瘍のある患者、また既往歴のある患者に投与する場合には症状を悪化させる可能性があるため注意が必要です。単独では投与せずにPPIなどの胃酸の産生を抑える薬と併用するようにします。また、時に抗血小板薬で喘息発作を起こす方がいます。特にアスピリンはアスピリン喘息というものもあるので気をつけなければなりません。

抗血小板薬の休薬期間

手術時など、多量の出血の恐れがある場合は、抗血小板薬をあらかじめ手術前に休薬しなければなりません。血が止まりにくくなってしまい、手術に影響を与えてしまうためです。休薬期間はそれぞれ異なっており、可逆的に血小板凝集を阻害するものは短め、非可逆的に阻害するものは長めに休薬期間を設けます。例えば、トロンボキサンA2阻害薬であるオザグレルは可逆的阻害薬であるため休薬期間は1日程度となっています。一方、非可逆的阻害薬であるアスピリンは7〜14日もの休薬期間が必要となります。血小板の寿命がおよそ7~10日のため、非可逆的阻害薬の休薬期間は7~14日で設定されているものがほとんどです。患者さんを守るためにも服用している薬をきちんと把握しておかなければなりません。ただし、これらの休薬期間はあくまでも目安です。手術をするリスク、休薬するリスクを考慮して方針を決めなければなりません。